ケフェウス座デルタ星

ケフェウス座δ星について

ケフェウス座δ星（δ Cephei、δ Cep）は、ケフェウス座に位置する連星系で、地球から約797光年離れています。この星系は、視線上のガスや塵により視等級が約0.23等暗くなることが知られています。

発見の歴史

1784年、天文学者ジョン・グッドリックがこの星の変光を初めて発見しました。彼は10月19日に観測を開始し、12月28日まで毎日観察を続けました。翌年の前半にも観測を続け、1785年6月28日付の書簡で変光の様子を記録しました。この報告は1786年に正式に発表され、ケフェウス座にちなんで名付けられましたが、実はδ星はそれよりも数週間前に発見された他の脈動星に続く重要な発見となりました。

1835年には、天文学者シュトルーベがケフェウス座δ星の二重星性を発見し、地球から41秒離れた位置にある6.3等星のNH213307を伴星として確認しました。その後、これらの星が同じ固有運動を持つことから、連星系であることが判明しました。1878年には、さらに遠方に距離20.9秒の13等星が発見されましたが、これは連星とは考えられませんでした。

ケフェウス座δ星の特徴

ケフェウス座δ星は、セファイド変光星の典型例として広く認識されています。視等級は3.48等から4.37等まで変化し、明るさの変化は恒星外層の脈動によって引き起こされます。特徴的な脈動周期は約5.366341日で、光度が最も明るくなる際の変化が極大を過ぎて暗くなる際よりも速いことが分かっています。これにより、明るさの変遷には約1.5日程度、暗さには約4日程度かかります。

ケフェウス座δ星は、主系列星から進化し、質量は太陽の約4.5倍から5.25倍と推定されています。この星は色指数を元に質量を推定した結果、外層が平均して太陽質量の約44.5倍に膨張したことが示されています。

連星系の形成とその影響

視線速度の測定により、ケフェウス座δ星は分光連星であることも明らかになりました。これにより、伴星が約6年の周期で公転していると考えられています。伴星の質量は主星の約10分の1とされており、その距離は2AU以下と推定されています。ケフェウス座δ星はHD 213307と実視連星を成しており、より詳細な観測によってこの系が4重の構造を持つ可能性も示唆されています。

質量放出と星周構造

ケフェウス座δ星Aの光度は太陽の約2000倍にも上ります。このため、強力な恒星風が発生し、星が脈動する際に生じる衝撃波とともに非常に高速度で物質を放出します。この物質は、星から約1pcの範囲にわたるガス雲を形成し、非常に高圧の環境を作り出します。放出されたガスは秒速約35kmの速度で星から離れていきます。

ケフェウス座δ星系は、周囲の星に対して13.5km/sの特有運動を持つと考えられています。伴星HD 213307は、高温のスペクトル型を持っており、ケフェウス座δ星から放出される物質によって加熱され、赤外線の放射を行っています。これにより、星周の環境がさらに変化していく様子が観測されています。

このように、ケフェウス座δ星は天文学において重要な役割を果たしており、その特性や挙動に関する研究は、恒星の進化や宇宙の距離測定における有用な基準となっています。

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