ケプラー1647

ケプラー1647系は、地球からはくちょう座の方向、約3700光年離れた位置に存在する連星系です。この天体は、太陽によく似た2つの恒星、ケプラー1647Aとケプラー1647Bを中心に構成されています。

恒星系

主星であるケプラー1647Aは、太陽質量の約1.22倍、半径は約1.79倍と、太陽よりやや大きい恒星です。表面温度は6210ケルビンで、太陽の5778ケルビンよりも約400ケルビン高い温度を示します。一方、伴星のケプラー1647Bは、太陽質量の約0.97倍、半径は約0.97倍であり、サイズは太陽とほぼ同等です。表面温度は5770ケルビンと、こちらも太陽の温度に極めて近い値です。この2つの恒星は、約0.128天文単位（約1900万キロメートル）という比較的近い距離を保ちながら、11.26日という短い周期で互いの周りを公転しています。系全体の年齢は推定で約44億年とされており、約46億年の太陽系と比べても遜色ないほど古いです。

名称

この連星系が現在の「ケプラー1647」という正式名称を得る以前は、KOI-2939やKIC 5473556といった観測名で識別されていました。また、2MASSカタログにおける識別名称は2MASS J19523602+4039222となります。

惑星系の発見

ケプラー1647系の最も注目すべき点は、周連星惑星ケプラー1647bの存在です。この惑星は、NASAのケプラー宇宙望遠鏡によるトランジット法（恒星の手前を通過する際に明るさがわずかに減少する現象を観測する手法）のデータ解析によって、2015年に惑星候補として特定されました。その存在は詳細な観測を経て確認され、2016年6月13日に正式に公表されました。これにより、KOI-2939bという候補名から、ケプラー1647bという確定名称が付与されたのです。

周連星惑星 ケプラー1647b

ケプラー1647bは、単独の恒星ではなく、連星系全体（ケプラー1647AB）の共通重心の周りを公転しています。このような惑星は「周連星惑星」と呼ばれ、まるで二つの太陽を持つ世界を旅するかのようです。ケプラー宇宙望遠鏡が発見した周連星惑星としては、これが11例目にあたります。

ケプラー1647bは、いくつかの点で極めて異例な性質を持っています。まず、発見された時点において、トランジット法で確認された太陽系外惑星の中で最も長い公転周期と軌道長半径を持つ惑星でした。これまでの記録保持者であったケプラー421bの公転周期約704日、軌道長半径約1.22天文単位を大きく上回ります。次に、大きさが判明している周連星惑星の中では、これまで最大だったケプラー16b（半径は木星の約0.75倍）を凌駕し、最大のサイズを誇ることが明らかになりました。ケプラー1647bは、これら三つの記録を同時に更新した画期的な発見だったのです。

惑星の詳細

その詳細な軌道と物理的性質を見てみましょう。ケプラー1647bの公転周期は約1107.6日、およそ3年以上の歳月をかけて連星系を一周します。連星系からの平均距離は約2.72天文単位（約4億700万キロメートル）で、これは太陽系における小惑星帯のおおよそ中央部に相当する位置です。半径は地球の約11.87倍、木星の約1.06倍に達する巨大ガス惑星です。質量については、木星の約1.52倍という推定値が得られていますが、誤差が比較的大きい(±0.65倍)ため、より精密な観測が待たれます。

興味深いことに、ケプラー1647bの公転軌道は、ケプラー1647連星系のハビタブルゾーン（生命が存在するために必要な液体の水が存在しうる領域）内に位置しています。しかし、この惑星自体は巨大なガス惑星であると考えられているため、その表面に生命が誕生・維持される可能性は極めて低いでしょう。ただし、もしこのガス巨星の周囲に十分な大気と液体の水を持った、地球型のような大型の衛星が存在するならば、理論的にはそこに生命が宿る可能性も完全に否定はできません。

タトゥイーンとの比喩

その「二つの太陽」を持つ世界という特徴から、NASAはこの惑星を、有名なSF映画シリーズ『スター・ウォーズ』に登場する、やはり二つの太陽を持つ架空の惑星「タトゥイーン」に例えて紹介しています。この比喩は、ケプラー1647bという遠い宇宙の天体に対する人々の想像力を掻き立てるものです。

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