ケプラー36b

ケプラー36b

ケプラー36bは、地球から見てはくちょう座の方向におよそ1500光年隔てた距離にある恒星、ケプラー36の周囲を巡る太陽系外惑星の一つです。この惑星には、KOI-277bという別の呼び名もあります。

物理的特徴

この惑星は、質量が地球のおよそ4.45倍、半径が地球の約1.486倍にあたります。表面で感じる重力は、地球のほぼ2倍です。これらの数値から、ケプラー36bは地球のような岩石でできた惑星だと推測されていますが、平均密度が1cm3あたり7.46グラムとかなり高いため、地球型惑星と鉄を主成分とする惑星の境界に近い性質を持っていると考えられます。その物理的数値は、系外惑星のケプラー10bと非常に似ています。

ケプラー36bの組成については、質量の比率で見ると、約68%がマグネシウム珪酸塩からなる岩石、そして約32%が鉄で構成されていると推測されています。表面温度が非常に高いにも関わらず、岩石部分の最大23%（最も可能性が高いのは13%）が水で構成されている可能性も指摘されています。また、惑星を覆う大気は、質量比で1%以上の水素やヘリウムが含まれていると考えられています。

軌道

ケプラー36bの軌道は、主星であるケプラー36からわずか1725万キロメートル（太陽と水星の間の距離の約3割）という非常に近いものです。このため、表面温度は約705℃にも達する極めて高温の環境にあります。このような高温のため、生命の存在は考えにくい状況です。ケプラー36bは、この主星に非常に近い軌道を約13日と20時間という短い期間で一周します。軌道の形状は離心率が0.04以下と、ほぼ完璧な円に近いです。軌道面は視線方向に対してほぼ垂直で、後述するケプラー36cとの軌道面の傾きの差も2.5度以下と小さいです。

主星の手前を通過する（トランジット）際にかかる時間は約6.78時間です。この通過によってケプラー36の明るさは0.00838%減少します。これは、同じ恒星系にあるケプラー36cが引き起こす明るさの減少（0.02076%）と比べると、かなり小さな値です。

ケプラー36cとの関係

ケプラー36系には、ケプラー36bと同時に見つかったもう一つの惑星、ケプラー36cが存在します。ケプラー36cは、質量が地球の約8.08倍、半径が地球の約3.679倍であり、ガスを主成分とする惑星、おそらく天王星のようなタイプだと考えられています。ケプラー36bと同様に主星からの距離が近く、軌道長半径は約1919万キロメートルです。この近さから、表面温度は約665℃にもなる「ホット・ネプチューン」に分類されます。

ケプラー36bの公転周期は約13.9日、ケプラー36cは約16.2日であり、両者は6対7という軌道周期の比を持っています。この関係により、約97日に一度の割合で、ケプラー36bから見てケプラー36cが太陽の反対側に来る「衝」の状態（地球から見れば「合」に近い位置）になります。二つの惑星の軌道長半径の差はわずか194万キロメートルであり、最も接近する際には地球と月の間の距離の5倍程度しか離れていません。ケプラー36cは月のおよそ13.5倍の大きさがあるため、ケプラー36bから見たケプラー36cは、満月の約2.7倍もの見かけの大きさとなり、深く青みがかった惑星として観測されると予想されます。このように惑星間の位置関係が常に変化することで、ケプラー36bには強い潮汐力が作用します。ケプラー36bが岩石惑星であることから、この強い潮汐力によって激しい火山活動が起きている可能性も指摘されています。このような潮汐力による火山活動が活発な惑星は、木星の衛星イオにちなんで「スーパー・イオ」と呼ばれることもあります。

ケプラー36bとケプラー36cの密度差は8倍以上と非常に大きく、これほど組成が異なる天体がこれほど接近した軌道を持つ惑星系は、ケプラー36系が知られている中で最小の軌道間隔を示しています。これは、太陽系における岩石惑星とガス惑星の関係とは大きく異なり、太陽系のどの岩石惑星とガス惑星のペアと比較しても、その軌道は20倍以上も密接しています。このような軌道接近の詳しいメカニズムは、現時点ではまだ解明されていません。

これほど接近した軌道であれば、惑星同士の軌道が不安定になり、最終的に衝突する可能性も考えられます。しかし、軌道計算によるシミュレーションでは、計算サンプルの91%以上において、直近700万年間に衝突は起こらないという結果が出ています。さらに、ランダムな初期条件で100回シミュレーションを行った場合でも、1億4000万年にわたって破壊的な接近や衝突を経験しないという計算結果が得られています。

内部構造

2016年には、ケプラー10bやCoRoT-7bなど、ケプラー36bを含む7つの岩石系外惑星の内部構造に関する研究成果が発表されました。これらの惑星は、地球の2倍から5倍程度の質量と、1.1倍から1.6倍程度の半径を持っています。ハーバード・スミソニアン天体物理学センターの研究チームは、地球や火星のような岩石惑星が持つ核、マントル、地殻という三重構造モデルがこれらの系外惑星にも当てはまるかを調査しました。その結果、調査対象となった7つの惑星すべてが中心部に鉄などでできた核を持ち、その外側をマントルと地殻の層が覆う構造になっていることが明らかになりました。

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