ケプラー69c

ケプラー69cは、地球からおよそ2,700光年の距離にある、はくちょう座の方向の恒星ケプラー69を周回する太陽系外惑星の一つです。主星であるケプラー69は、太陽に似た特性を持つG型主系列星で、この惑星を含め、二つの惑星を持つことが確認されています。ケプラー69cは、NASAのケプラー宇宙望遠鏡による観測データを分析し、惑星が恒星の手前を通過する際の減光（トランジット）を検出する方法で発見されました。当初は、地球より数倍大きなスーパーアースである可能性が高く、生命を育む液体の水が存在しうる範囲であるハビタブルゾーン内を公転している候補として、天文学者の間で大きな関心を集めました。しかし、その後の詳細な研究により、厚い大気に覆われ、暴走温室効果によって表面が高温になった、いわゆるスーパービーナスである可能性が高いと見られています。

物理的特徴

ケプラー69cは、質量および半径が地球を上回る一方で、天王星や海王星といった巨大ガス惑星よりは小さい「スーパーアース」に分類される天体です。推定される質量は地球の約6倍、半径は約1.71倍と測定されています。表面温度については、当初のハビタブルゾーン候補という見方からは約299ケルビン（摂氏26度）という比較的穏やかな温度が予測されました。しかし、観測された半径に対して推定質量が大きいことから、金星のように大量の大気を保持し、過剰な温室効果が発生している可能性が指摘されています。その場合、表面温度は548ケルビン（摂氏275度）にも達すると計算されており、これは典型的なスーパービーナスの特徴と一致します。

主星：ケプラー69

惑星ケプラー69cが公転する恒星ケプラー69は、太陽に類似したG型主系列星です。質量は太陽の約0.81倍、半径は約0.93倍と、太陽よりやや小型です。表面温度は5638ケルビンで、太陽の5778ケルビンよりわずかに低温です。年齢は約4億年と推定されており、約46億年の太陽に比べて considerably young な恒星です。地球からの見かけの明るさは13.7等級と非常に暗く、肉眼で観測することは不可能です。

軌道要素

ケプラー69cは、主星ケプラー69から平均しておよそ0.64天文単位（au）の距離を周回しており、その公転周期は約242日です。この軌道は、太陽系における金星の軌道（平均約0.72au、周期約225日）と比較的似ています。

居住可能性の評価

ケプラー69cは、発見当初、他の系外惑星候補と共にハビタブルゾーン内に位置する可能性のある天体として発表され、表面に液体の水が存在する期待から、地球外生命探査における「最有力候補」の一つとして注目を集めました。しかし、主星のパラメータの不確実性から、ケプラー69cが受ける放射束は地球の1.91倍（誤差を考慮すると最低でも1.35倍）と非常に大きいことがその後の研究で明らかになりました。これは、たとえハビタブルゾーン内にあっても、恒星に近すぎ、惑星表面の海が蒸発してしまうのに十分なエネルギー量です。さらに最近の分析では、ケプラー69cは、太陽系で最も環境が過酷な惑星の一つである金星に類似した環境になっている可能性が高いことが示されています。惑星の質量が大きいことで厚い大気を維持しやすく、暴走温室効果が発生しやすいと考えられます。もし表面に海があったとしても、すぐに蒸発し、水蒸気がさらに温室効果を強めることで、最終的に数百℃にも達する高温環境になると予測されています。

発見の経緯

ケプラー69cは、2009年に観測を開始したケプラー宇宙望遠鏡によって発見されました。ケプラー望遠鏡は、恒星の前を惑星が横切る際に発生する減光現象を継続的に観測し、惑星の存在を示唆するデータを探しました。ケプラー69cの発見に繋がったデータは、主星ケプラー69で約242日ごとに観測された周期的な減光でした。このデータがNASAのミッションチームによって分析され、惑星によるものであると確認された後、他の発見と共に2013年4月18日に正式に発表されました。この発見は科学界だけでなく一般社会でも大きな話題となり、2013年5月9日にはアメリカ合衆国下院の公聴会でも取り上げられるなど、活発な議論が展開されました。

現在では、ケプラー69cはハビタブルゾーン候補としての初期の期待とは異なり、高温で液体の水が存在し得ないスーパービーナスである可能性が高いという理解が一般的となっています。これは、系外惑星の環境を評価する上で、単に軌道がハビタブルゾーン内にあるかだけでなく、惑星自身の物理的特性や大気の性質が極めて重要であることを示唆する事例と言えます。

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