ゲインズバラ (競走馬)

ゲインズバラ：戦乱期の競走馬から伝説の種牡馬へ

ゲインズバラは、1915年1月24日、イギリスのニューベリー競馬場近郊で誕生したサラブレッド競走馬です。その名は、リンカンシャー州の鉄道駅に由来しています。第一次世界大戦下の混乱期、ゲインズバラはセリ市に出品されますが、最低落札価格に届かず、生産者であるダグラス夫人が買い戻しました。その後、幾多の困難を乗り越え、名調教師アレック・テイラーの指導の下、競走馬としてのキャリアを歩み始めます。

輝かしい競走馬時代

1917年、ゲインズバラは競走馬としてデビュー。当初は目立った成績を残せませんでしたが、同年9月にはオータムステークスで初勝利を飾りました。そして迎えた1918年、ゲインズバラは才能を爆発させます。

まずは2000ギニーで優勝。その後、ダービーステークスでも1番人気に応え、見事勝利し、イギリスクラシック二冠を達成しました。この勝利により、ダグラス夫人はダービーステークスを制した初の女性馬主となりました。さらに、ニューマーケットゴールドカップ（ゴールドカップの代替レース）も制覇。勢いに乗るゲインズバラは、9月に行われたセプテンバーステークス（セントレジャーステークスの代替レース）でも圧勝し、イギリスクラシック三冠を達成しました。ただし、ダービーステークスとセントレジャーステークスが代替競馬場で行われたため、三冠馬としての評価には異論もあります。

10月にはジョッキークラブステークスに出走しましたが、惜しくも2着となりました。このレースを最後に、ゲインズバラは競走馬を引退します。

種牡馬としての成功

1920年、ゲインズバラは種牡馬となりました。種付料は400ギニーと高額でしたが、その実力は多くの競走馬を生み出し、リーディングサイアー10位以内に入る安定した成績を収めました。特に1932年と1933年には、ハイペリオンなどの活躍により、2年連続でリーディングサイアーの座に輝きました。

ゲインズバラの産駒は、牡馬を中心に数々の活躍馬を輩出しました。代表的な産駒には、ダービーステークスとセントレジャーを制したハイペリオン、セントレジャー優勝馬のソラリオとシンガポール、2000ギニー優勝馬のオーウエルなどが挙げられます。一方、牝馬の活躍は目立たなかったものの、ブルードメアサイアー（母方の父）としては優れた成績を残し、1931年にはイギリスのリーディングブルードメアサイアーにもなりました。

主なブルードメアサイアーとしての産駒には、アイルランドクラシック三冠馬のミュージアム、2000ギニーとダービーステークスを制したカメロニアン、ダービーステークス優勝馬のマームード、1000ギニーとオークスを制したムシドラなどがいます。

血統と生涯の終焉

ゲインズバラの母は、ヨークシャーオークスなど5勝を挙げたローズドロップです。ゲインズバラは、1945年6月5日、ハーウッド牧場で老衰のため死亡しました。

ゲインズバラの遺産

ゲインズバラは、戦乱の時代を生き抜き、競走馬として、そして種牡馬として、イギリス競馬史にその名を刻みました。数々の名馬を輩出し、現代のサラブレッド界にも大きな影響を与え続けている、まさに伝説的な存在と言えるでしょう。その活躍は、現代においても語り継がれる、競馬史における重要な一章です。 彼の物語は、競走馬の勝利のみならず、人々の努力、時代背景、そしてサラブレッドの血脈の力強さを物語っています。

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