マームード

マームード (Mahmoud) は、フランスで生まれ、イギリスで競走馬としてのキャリアを積んだサラブレッドです。ナスルーラやミゴリといった名馬を近親に持ち、体高150センチメートル代中ごろの小柄な芦毛馬でした。その容姿は、アラブ馬を思わせるような優雅さを持ち合わせていたと伝えられています。

フランスでのセリ市に出品されたものの落札されず、アーガー・ハーン3世によって買い取られ、イギリスで競走馬としての道を歩むことになります。1936年、マームードはエプソムダービーにおいてレコードタイムで優勝という偉業を達成しました。芦毛の馬がエプソムダービーを制したのは、この時で3頭目という快挙でした。

エプソムダービーの優勝にとどまらず、リッチモンドステークスやシャンペンステークスでも勝利を収め、2000ギニーでは2着、セントレジャーステークスでは3着と、常に上位入賞を果たす活躍ぶりを見せました。

現役引退後、第二次世界大戦の影響もあった中、84000ドルでコーネリアス・ヴァンダービルト・ホイットニーに購入され、アメリカケンタッキー州レキシントンにあるレキシントンファームで種牡馬としての新たなキャリアをスタートさせます。

種牡馬としてもその才能は遺憾なく発揮され、1946年にはアメリカ種牡馬チャンピオンに輝きました。その成功ぶりは、実に63頭ものステークス優勝馬を輩出したという事実からも明らかです。さらに、1957年にはチャンピオンブルードメアサイアーの称号も獲得しています。

代表的な産駒として、アイリッシュオークスとアイリッシュ1000ギニーを制したマジデー (Majideh)、アメリカ2歳チャンピオンに輝いたオイルキャピトル (Oil Capitol)、そして、後に優れた繁殖牝馬として名を馳せるアルマームード (Almahmoud) やブードワール (Boudoir) などが挙げられます。また、マンノウォーステークス優勝馬ジアクス (The Axe)、シャンペンステークス、ウィザーズステークス、サバーバンハンデキャップ、サンタアニタハンデキャップなどを制覇したヴァルカンズフォージ (Vulcans Forge) など、多くの活躍馬を送り出しました。

マームードの偉大さは、その産駒の活躍だけでなく、その血統が現代競馬に与えた影響の深さにもあります。マジデーはギャラントマンの母であり、アルマームードはノーザンダンサーの母ナタルマとヘイローの母コスマーを輩出しました。アルマームードやマジデー自身は芦毛ではありませんでしたが、他の産駒を通じてザテトラークから受け継いだ芦毛遺伝子を競馬界に広める役割も果たしました。

このように、競走馬として、そして種牡馬として、そして血統の礎として、マームードは競馬史に大きな足跡を残した名馬と言えるでしょう。その小柄な体躯からは想像もできないほどの偉大な功績は、後世の競馬界に多大な影響を与え続け、現在でもその血統は世界中の競走馬に受け継がれています。

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