ゲオルク・フォン・デア・ガーベレンツ

ハンス・ゲオルク・コーノン・フォン・デア・ガーベレンツ

ハンス・ゲオルク・コーノン・フォン・デア・ガーベレンツ（Hans Georg Conon von der Gabelentz, 1840年3月16日 - 1893年12月11日）は、ドイツの著名な言語学者です。彼は一般言語学と中国語の研究で特に知られており、ドイツにおける中国学の先駆者として重要な役割を果たしました。

生涯と業績

ガーベレンツはアルテンブルクで生まれ、父ハンス・コーノン・フォン・デア・ガーベレンツもまた東洋学者・言語研究者であり、満州語研究の権威でした。幼い頃から父の影響を受け、東アジアの言語に興味を持つようになりました。1860年には、早くもダヤク語の動詞活用に関する論文を発表しています。

彼はイェーナ大学とライプツィヒ大学で法学と言語学を学び、1864年に法曹の職に就きましたが、同時にライプツィヒ大学で中国語、日本語、満州語の研究を続けました。1876年には『太極図説』の翻訳によって博士号を取得しています。

1878年、ライプツィヒ大学に東アジア諸言語の講座が新設されると、員外教授に任命され、中国語、日本語に加えて、マレー語、チベット語、モンゴル語、そして一般言語学や比較[[言語学]]を教えました。

ライプツィヒ時代には、彼の代表作である『中国語文法』(1881)を著しました。この書籍は、当時の中国語の文語（漢文）の文法を詳細に解説したもので、単にラテン語文法を当てはめるのではなく、中国語の特性に合わせた文法体系を提示した点が評価されています。発音は官話に基づきつつも、入声の区別を残すなど、復古的な要素も含まれていました。この文法書は高く評価され、1960年に復刻版が出版されています。

1884年からは『国際一般言語学報』の共同編集者も務め、1889年にはフリードリヒ・ヴィルヘルム大学の正教授に就任、同年にはプロイセン科学アカデミーの会員にも選ばれました。この時期には、もう一つの主著である一般言語学の『言語学』(1891)を出版しています。

1893年にベルリンで亡くなりましたが、没後もバスク語の系統に関する著作や言語類型論に関する論文が発表され、彼の研究は後世に大きな影響を与え続けました。

研究内容と影響

ガーベレンツの『言語学』は、言語学を経験科学として捉え、演繹的な一般文法を否定する立場を明確にしました。彼は、言語法則の有機的なシステムを「言語精神」と呼び、個別言語研究の最も重要な対象であると主張しました。

ヴィルヘルム・フォン・フンボルトを高く評価し、その影響を受けつつも、孤立語を原始段階とするフンボルトの主張を批判的に検討しました。また、言語の線条性に注目し、言語を「言述」、「個別言語」、「言語能力」の3つに区分するなど、後のソシュール言語学に通じる概念を提示しました。彼がソシュールに与えた影響については議論がありますが、少なからず影響を与えたと考えられています。

日本との関係

上田萬年や井上哲次郎など、多くの日本の学者がガーベレンツに師事し、彼の学問的影響を受けました。井上哲次郎の『懐旧録』には、1886年にライプツィヒ大学でガーベレンツと会見した際の様子が記録されています。

ハンス・ゲオルク・コーノン・フォン・デア・ガーベレンツは、東西の言語研究に多大な貢献をした偉大な言語学者であり、彼の業績は今日でも高く評価され、研究され続けています。

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