コカ城

コカ城：スペインのゴシック＝ムデハル様式の傑作

スペイン、カスティーリャ・イ・レオン州セゴビア県コカに位置するコカ城（Castillo de Coca）は、15世紀に建造された壮麗な城塞です。スペインを代表するゴシック＝ムデハル様式の建築物として知られ、その保存状態の良さは特筆に値します。

圧倒的な存在感と戦略的な立地

ボルトージャ川が蛇行する集落のはずれ、急斜面に建つコカ城は、その威容を誇示するかのように周囲を深い堀で囲まれています。この戦略的な立地は、かつての防衛拠点としての役割を物語っています。城壁は複数層構造となっており、堅牢な防御システムを形成しています。堀に架かる橋を渡り、鉄格子の扉をくぐると、広々とした中庭へと至ります。

洗練された建築様式と精緻な装飾

コカ城の建造には、主に煉瓦が使用されています。石灰岩は、狭間や中庭の列柱、その他の装飾部分に使用され、煉瓦の赤と石灰岩の白のコントラストが美しい景観を生み出しています。1階部分は四角形で、角には大きな塔がそびえ立ち、内部には狭い螺旋階段が各階、礼拝堂、中庭へと続いています。

武器庫は特に見事で、幾何学模様が施されたゴシック様式のヴォールト天井は、多彩な色のモザイクで装飾されています。塔の上からは、クエジャルやイスカルの城など、遠くの景色を一望できます。中庭への入り口を守るペドロ・マタの塔は、城の主塔と同じ規模を誇ります。

激動の歴史を刻む

コカ城の歴史は、1439年に初代サンティジャーナ侯爵イニゴ・ロペス・デ・メンドーサがカスティーリャ王室領のコカ村を領有したことに始まります。その後、アロンソ・デ・フォンセカ司教（後にセビリア大司教）の手に渡り、1453年には国王の許可を得て城の建設が開始されました。

1473年には、アロンソ・デ・フォンセカ・イ・アセベードによって建設が命じられましたが、同時に盛大な宴会場としても使用されました。イサベル王女（後のイサベル1世）やフランス人枢機卿ジャン・ジュフロワなど、多くの著名人が訪れ、華やかなパーティーが頻繁に行われたと伝えられています。

1504年にアントーニオ・デ・フォンセカの所有となった後、セネーテ侯爵による攻撃に対する防御強化のための改修が行われました。1521年にはコムニダーデス反乱軍による攻撃の脅威にさらされましたが、城は落とされることなく、反乱軍は近郊の要塞を破壊して撤退しました。

17世紀には、アンダルシア王を名乗ったメディナ＝シドニア公ガスパール・ペレス・デ・グスマンが囚われたという歴史もあります。19世紀にフォンセカ一族からアルバ公爵家に売却され、1931年には歴史的文化財に指定されました。1954年からはスペイン農業漁業食糧省に貸与され、現在に至ります。

現代への継承

コカ城は、スペインの歴史と文化を象徴する貴重な遺産です。その美しい姿は、多くの観光客を魅了し続けています。1994年には、テレビ番組「ラ・ノーチェ・デ・ロス・カスティージョス」でも取り上げられ、その知名度を高めました。現在も、その歴史的価値と建築美は高く評価されており、スペインの誇るべき建造物として大切に保存されています。 コカ城を訪れることは、中世スペインの歴史と文化に触れる貴重な体験となるでしょう。

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