コスメ・デ・トーレス

コスメ・デ・トーレス：日本に根差した宣教師

コスメ・デ・トーレス（1510年 - 1570年）は、フランシスコ・ザビエルと共に戦国時代の日本を訪れたイエズス会宣教師であり、カトリック教会の司祭でした。ザビエルの意志を受け継ぎ、18年にわたり日本で宣教活動に励みました。

生涯

スペインのバレンシアで生まれたトーレスは、司祭となりメキシコを経て、モルッカ諸島でザビエルと出会います。ザビエルに感銘を受けたトーレスは、彼と共にインドのゴアへ渡り、イエズス会に入会しました。1549年、ザビエル、日本人ヤジロウと共に鹿児島に上陸。日本での宣教を開始します。

ザビエルがインドへ向かった後、トーレスは日本における布教の責任者となりました。彼は、日本人協力者であるロレンソ了斎らの協力を得ながら、地道な宣教活動を続けました。彼の成功の要因は、ザビエルの意志でもあった「適応主義（インカルチュレーション）」にありました。これは、宣教師が派遣先の文化に根ざして生きるという考え方であり、トーレス自身も日本の文化を尊重し、日本式の生活を取り入れました。肉食を避け、日本の着物を着て後半生を過ごしたとされています。

日本での功績

トーレスの努力は実を結び、山口や九州各地でキリスト教が広まり始めました。彼は戦乱の中、各地を転々としながらも、後続の宣教師の教育、日本人協力者の養成、信徒の世話、仏僧との議論など、多岐にわたる活動を行いました。1556年には、商人ルイス・デ・アルメイダをイエズス会に入会させ、宣教師として活躍させました。また、1563年には大村純忠に洗礼を授け、初のキリシタン大名としました。さらに、キリスト教布教と密接な関係にあった南蛮貿易の拠点として、横瀬浦（1562年）、長崎（1570年）の開港に尽力しました。

1559年には、ザビエルの宿願であった京都での布教を実現させるため、ガスパル・ヴィレラ神父らを派遣しました。しかし、戦国時代の戦乱は布教活動に大きな影響を与え、畿内での宣教が安定するのは織田信長による政治的安定の後でした。九州では、依然として戦乱と政治的不安定が続き、安定した活動は困難を極めました。

長年の宣教活動で疲弊したトーレスは、1560年代の終わりに、インドの上長に新しい布教長の派遣を依頼。1570年6月にフランシスコ・カブラル神父が派遣され、同年10月2日、天草志岐で死去しました。

トーレスが日本に到着した当初は、信者も教会も存在しませんでしたが、彼の死後には、京都、堺、山口、豊後、肥前などに多くの教会とキリスト教徒が誕生しました。ザビエルの夢を実現させたのは、まさに盟友コスメ・デ・トーレスだったと言えるでしょう。

没後

1971年には長崎開港400周年を記念して長崎市に「長崎開港記念碑」が建立され、トーレスの功績が刻まれました。また、熊本県苓北町には「トルレス神父記念広場」が設置されています。

関連作品

赤神諒『大友の聖将』（角川春樹事務所、2018年）

関連項目

日本のキリシタン一覧
フランシスコ・ザビエル
ルイス・デ・アルメイダ
キリシタン大名
大友義鎮
* 大村純忠

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