コテジ

コテジ：歴史と多様な意味を持つ建造物

コテジ（cottage）とは、一般的には、比較的小規模ながらも趣のある、田舎に建つ家屋を指します。建築学の専門用語としては「コテジ」を用いますが、日常会話では「コテージ」と呼ばれることも多いです。その歴史と現代における意味、そして多様な側面について詳しく見ていきましょう。

中世からの歴史：農民の住まいから

中世におけるコテジは、農民や労働者階級の住居でした。語源は、中世の農奴を意味する「コッター（cotter）」に由来します。当時のコテジは、単なる住居だけでなく、納屋や庭といった農業に必要な施設も包含していました。規模の大きな農家には「メスウィッジ（messuages）」という用語が用いられていました。

ジョージ王朝期：庭園装飾としてのコテジ

ジョージ王朝期のイングランドでは、風景式庭園が盛んに造られました。このピクチャレスクな庭園において、カントリーハウスの周囲には、素朴な田舎を思わせるコテジが配置されることがありました。これは、単なる景観の一部としてだけでなく、小作農の住居としても機能したと考えられます。ニューナム・コートやブレイズ・ハムレットなどは、この時代の代表的な例として挙げられます。このような、邸宅の装飾として用いられたコテジは「コテジ・オルネー（cottage orné）」と呼ばれます。

産業革命後：別荘としての普及

産業革命による生活水準の向上に伴い、中流階級も都市郊外に別荘としてのコテジを構えるようになりました。このコテジ人気を反映して、コテジの写真や設計図を集めた「パタン・ブック」と呼ばれる書籍が多数出版されました。ジョン・ブロウの『田園建築』、ジョン・ソーンの『建築デザイン集』、ジョン・ラウドンの『コテジ・ファーム・ヴィッラの建築、家具辞典』などは、その代表的な例であり、開拓時代の北アメリカ建築にも大きな影響を与えました。これらの書籍には、様々なデザインのコテジが掲載されており、人々の建築への関心を高め、コテジ建築の普及に貢献しました。

現代のコテジ：多様な解釈

現代の北アメリカでは、コテジは都市生活者にとっての週末や休日の別荘を意味することが多いです。多くの場合、湖や海岸線といった自然豊かな場所に位置し、釣りやハイキング、セーリングなどを楽しむことができます。一方、町中でもコテージ・スタイルの家屋を見かけることができます。カナダでは、家屋の規模に関わらず「コテジ」という用語が用いられる傾向があります。

代表的なコテジ

世界には、歴史的にも建築的にも重要なコテジが数多く存在します。オークハースト・コテジ、ビショップ・アズベリー・コテジ、ラ・トローブズ・コテジ、ノッカーン、ウィリー・ロットのコテージ、クレイヴン・コテージ、ブロン・イ・アーなどは、それぞれ独自の建築様式や歴史的背景を持つ代表的なコテジです。これらのコテジは、建築史研究においても貴重な資料となっています。

まとめ

コテジは、その歴史を通して、様々な意味と役割を担ってきました。農民の住まい、庭園装飾、そして現代の別荘という多様な解釈は、社会情勢や人々のライフスタイルの変化を反映しています。これからも、コテジは建築様式や文化的象徴として、人々の生活に寄り添っていくことでしょう。

もう一度検索