コマツナ

コマツナ（小松菜）

コマツナは、アブラナ科アブラナ属の野菜で、学名をBrassica rapa var. perviridisといいます。冬菜（フユナ）、鶯菜（ウグイスナ）とも呼ばれ、冬場が旬の緑黄色野菜です。特にビタミン、鉄分、カルシウムが豊富で、健康的な食生活を支える食材として知られています。

名称と来歴

コマツナは、江戸時代初期に現在の東京都江戸川区小松川付近で、ツケナ類を品種改良して栽培が始まったとされています。小松菜の名前の由来は、1719年（享保4年）に徳川吉宗が小松川を訪れた際、地元の神社で出された青菜を気に入り、「小松菜」と名付けたという説が有力です。別説では、5代将軍、徳川綱吉が命名したとも伝えられています。

特徴

コマツナは、関東地方を代表する葉物野菜の一つで、年間を通して流通していますが、特に冬の時期は葉の緑色が濃くなり、より美味しくなります。葉は丸みを帯びており、表面は濃い緑色、裏面はやや薄い緑色をしています。寒さに強く、霜に当たると甘みが増す性質があります。早生品種や晩生品種があり、栽培は周年化されています。また、新潟県の女池菜や福島県の信夫菜など、地方品種も存在します。コマツナは菜の花の仲間であり、成長すると黄色い十字型の花を咲かせます。

様々な品種

縮み小松菜: 葉にちりめん状のしわが入った品種で、食感が良く甘みがあり、お浸しや炒め物に適しています。
ジャンボ小松菜: 標準的なコマツナよりも大きく、長さが40～50cmにもなります。青臭さが少なく、シャキシャキとした歯ごたえが特徴です。
ごせき晩生小松菜: 1950年から育種が始まり、1963年に発売された固定品種です。江戸東京野菜として認定されています。
城南小松菜: 明治時代中期から栽培されている固定品種で、世田谷区、目黒区、大田区など、城南の暖地向きです。こちらも江戸東京野菜として認定されています。
うぐいす菜: コマツナやカブを早どりしたもので、春のウグイスが鳴く頃に収穫されることからこの名があります。会席料理の汁物や炊き合わせなどに使われます。
千宝菜: バイオ技術によって、コマツナとキャベツを掛け合わせて作られた葉野菜です。葉は緑色が濃く厚みがあり、和洋中問わず様々な料理に使えます。

生産地

コマツナは、江戸時代に江戸で栽培が始まったこともあり、関東地方で古くから親しまれてきました。特に東京都内では、江戸川区をはじめ、葛飾区、足立区、八王子市など、多くの地域で栽培されています。また、埼玉県、神奈川県、千葉県など、首都圏近郊での生産も盛んです。近年では、大阪府、兵庫県、愛知県、福岡県など、全国各地の大都市近郊でも生産されるようになっています。

2019年の統計によると、全国の年間生産量は約11万4900トン、作付面積は約7300ヘクタールです。都道府県別の生産量では、茨城県、埼玉県、福岡県、東京都、群馬県が上位を占めており、関東地方を中心とした生産が多いことがわかります。流通量が多い時期は、冬の1月から2月にかけてです。

栽培

コマツナは、暑さにも寒さにも強く、半日陰でもよく育ちます。プランターでも簡単に栽培できるため、家庭菜園にもおすすめです。栽培適温は15～25度、発芽適温は15～30度です。収穫までの日数は、秋冬まきでは80～90日程度かかるのに対し、夏まきでは20日程度と短期間で収穫できます。

栽培方法には、春まきで初夏に収穫する方法と、秋まきで中秋から春先まで収穫する方法があります。秋まきは、9月下旬に種まきを始め、10日から2週間ごとに3～4回に分けて種まきをすると、長期間収穫できます。種まきは春から秋まで可能ですが、最も作りやすいのは秋まきです。

コマツナは、植え替えに弱いため、苗は作らず、直接畑に種をまいて栽培します。肥料を好む性質があるため、畑は日当たりと水はけを良くし、種まきの3週間前までに完熟堆肥をすき込んでおきます。また、生育に合わせて追肥も行うようにします。

輪作年限は1～2年とされ、連作は避ける必要があります。同じ畑では3～4年空けるようにしましょう。

栽培方法詳細

種まきは、狭い場所ではばらまき、広い場所では畝を作って筋まきか点まきを行います。種をまいた後は、薄く土を被せます。11月以降に種まきをする場合は、寒冷紗をかけるなどの防寒対策が必要です。

間引きは、葉が触れ合わない程度に行います。本葉が2枚の時に最初の間引きを行い、その後、本葉が4枚、5～6枚になった時に、それぞれ間引きを行います。間引きが遅れると徒長して軟弱になるため、タイミングが重要です。間引き後は、土寄せと追肥を行いましょう。種まきから30日後には、肥料を多く吸収するため、カルシウム分の多い肥料で追肥を行うと良いとされています。

冬に霜に当たると甘みを増すため、春まで収穫する場合は、霜が降りる頃から寒冷紗でトンネル掛けをすると良いでしょう。草丈が20～30cmになったら、必要に応じて間引きながら収穫をします。種まきから3～4週間で収穫可能です。収穫は株元から引き抜いて行い、収穫後は追肥と土寄せをしておくと良いでしょう。

種を採取する場合は、収穫せずにそのままにしておくと、春に花が咲き、実ができます。実が枯れ始めたら刈り取って乾燥させると、種が取れます。ただし、他のアブラナ科の作物と交雑しやすいため注意が必要です。

家庭菜園では、深さ20cm以上のプランターや鉢で栽培可能です。土壌改良には、完熟堆肥を1平方メートルあたり5kg以上入れると良いでしょう。

コマツナは、青虫やアブラムシなどの害虫に食べられやすいため、注意が必要です。

利用

コマツナは、一年中流通していますが、本来の旬は冬（12～3月）です。関東地方では、ハクサイと並んで冬の野菜の代表格とされています。葉は厚みがあり、緑色が濃くてみずみずしいもの、茎は太いものが良品とされます。

コマツナは、東京風の雑煮には欠かせない野菜の一つです。ホウレンソウと似た使い方がされますが、灰汁が少ないため、下茹でなしで炒めたり煮たりできます。味噌汁、鍋物、おひたし、和え物、炒め物、漬物など、幅広い料理に活用できます。

和食だけでなく、バターやクリームとの相性も良いため、洋風料理にも使えます。調理する際は、根を切り落とし、葉と茎に分けてざく切りにして使うのが一般的です。加熱する際は、火の通りにくい茎から調理を始めると良いでしょう。コマツナの菜の花は、蕾のうちに食べるのがおすすめです。

また、コマツナは種子が安定して入手でき、栽培が容易で生育が速いため、成長試験や発芽試験などにも用いられています。

栄養

コマツナは、緑黄色野菜であり、β-カロテン、ビタミンC、カルシウム、鉄、カリウム、食物繊維などの栄養素が豊富です。特にカルシウムの含有量は非常に多く、ケールに次ぐほどです。

カロテンやビタミンCには、強い抗酸化作用があり、動脈硬化の抑制やがんの予防効果が期待できます。カルシウムは、歯や骨を丈夫にし、心臓の筋肉を正常に働かせる役割があります。カリウムは、余分な塩分を排出して高血圧を抑制する効果があり、鉄は貧血予防に効果的です。その他にも、骨の形成を促すビタミンK1や、造血ビタミンである葉酸も多く含まれています。

保存

コマツナは傷みやすい野菜のため、収穫後または購入後、2～3日以内に使い切るようにしましょう。すぐに使わない場合は、濡れた新聞紙などで根元を包み、ビニール袋に入れて冷蔵保存します。長期保存する場合は、硬めに茹でてから使いやすい長さに切り、水気を切って冷凍保存しましょう。

コマツナは、その栄養価の高さと使い勝手の良さから、日々の食生活に取り入れたい野菜の一つです。

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