コモン (競走馬)

コモン：イギリス競馬史に輝く三冠馬の生涯

1888年から1912年にかけて活躍した競走馬コモンは、イギリス競馬史にその名を刻むサラブレッドです。類まれな才能でクラシック三冠を制覇し、種牡馬としても後世に影響を与えました。この記事では、コモンの生涯を競走馬時代、種牡馬時代、そしてその血統背景も交えながら詳細に解説します。

出自と幼少期

コモンはイギリスのドーセット州で生まれました。生産者は初代アリントン男爵ヘンリー・スタート卿で、自身の邸宅でサラブレッドの育成を行っていました。コモンは、男爵とサー・フレデリック・ジョンストン第8代準男爵が共同所有し、ハンプシャーの調教師ジョン・ポーターの厩舎に預けられました。青鹿毛の体躯は、ダービー当時16ハンド（約162.56cm）を超える堂々としたものでした。

その父はアスコットゴールドカップを連覇した名馬アイソノミー。種牡馬としても成功し、後に三冠馬アイシングラスを輩出しています。母シッスルは現役時代にシャンペンステークスなど4勝を挙げ、コモンが三冠を達成した当時でも健在でした。優れた繁殖能力も持ち合わせており、ニューステークス勝ち馬ゴールドフィンチやセントレジャーステークス勝ち馬スラッスルなどを生んでいます。

競走馬時代：華麗なる三冠への道

コモンは2歳時は競走に出走せず、3歳春になって競走馬としてデビューしました。デビュー戦は、1891年4月29日に行われた2000ギニー（ニューマーケット）。『スポーティング・タイムズ』紙は、デビュー前のコモンを「極めて良好」と評していました。8倍という穴馬扱いながら、軽々と先行馬を抜き去り、初勝利を飾りました。

続くダービーステークス（エプソム）は、雹混じりの豪雨と濃霧の中での開催となりました。視界不良の中、最後の直線で先行集団を捉え、2馬身差で優勝。二冠を達成しました。

その後、セントジェームズパレスステークスを制覇しましたが、エクリプスステークスでは古馬に敗れました。

そして、運命のセントレジャーステークス（ドンカスター）。三冠達成への期待から、2.25倍という断然人気に支持されました。レースでは、ペースを上げるライバルを出し抜き、最後は1馬身差で勝利。見事、クラシック三冠を達成しました。

種牡馬時代：新たな才能の育成

三冠達成後、コモンには多くの種牡馬としてのオファーが殺到しました。最終的には、サー・ジョン・ブランデル・メープル準男爵に高額で売却され、チルドウィックブリー牧場で繋養されました。

種牡馬としては、1000ギニー勝ち馬ナンナイサーなど、多くの活躍馬を輩出しました。特に牝馬の活躍が目立ち、ヨークシャーオークス勝ち馬フェアマイルやアスコットコロネーションステークス勝ち馬コムーネなどがいます。牡馬では、長距離戦で活躍したオースベックなどがいます。

メープル準男爵の死後、コモンは売却され、種付け料も大幅に下がりました。そして、1912年12月17日、チェルムスフォード牧場でその生涯を終えました。

血統表

(※血統表は本文からは省略)

まとめ

コモンは、競走馬として圧倒的な強さを見せ、イギリス競馬史に名を残す三冠馬となりました。種牡馬としても成功を収め、その血統は現代の競馬にも影響を与えています。豪雨と濃霧の中でのダービー制覇など、その生涯にはドラマチックなエピソードが満載です。コモンの物語は、競走馬の栄光と儚さを伝える、競馬史における重要な一章と言えるでしょう。

もう一度検索