コルマク・コン・ロンガス

コルマク・コン・ロンガス

コルマク・コン・ロンガス（Cormac Cond Longas）は、アイルランドのアルスター物語群に登場する英雄であり、コンホヴァル・マク・ネサ王の息子として知られています。「コン・ロンガス（追放された者の長）」という異名を持ち、その生涯は波乱に満ちたものでした。

亡命と流浪

コルマクがコノートへの亡命を余儀なくされたのは、父王コンホヴァルがウシュリウの息子たちを謀殺したことがきっかけでした。コルマクは、フェルグスやドゥフタハと共にノイシュら三兄弟の身柄を保証していましたが、父の裏切りに抗議し、国外へ逃亡します。コノートに身を寄せた彼らは、流浪の生活を送ることになります。

クーリーの牛争いでは、コノート側としてアルスターと戦うことになりますが、フェルグスが父王に剣を振りかざそうとした際、コルマクはそれを制止しました。この行動は、彼が故郷への愛情と葛藤を抱えていたことを示唆しています。

王位と悲劇的な死

コンホヴァルの死後、コルマクはアルスターの次期王として迎えられることになり、コノートを離れます。しかし、帰国の途中でコノートの強奪隊と衝突し、勝利はしたものの、鍛冶師ダ・ホカの館で宿泊中にコノート軍の報復を受け、激戦の末に命を落とします。

コルマクの死は、彼自身が破滅へと向かう宿命を背負っていたことを示唆しています。『ダ・ホカの館』では、禁忌を破ると次々と災いが訪れるというモチーフが用いられており、コルマクは竪琴弾きクラフティネの妻シュケンブと密通を重ねていました。クラフティネはコルマクの帰還に同行し、禁忌の楽器である竪琴を演奏することで、コルマクを破滅へと導きます。さらに、コルマクは死の予兆として、死神バドヴに遭遇し、死を宣告されていたのです。

フェルグスが駆けつけた時には、既にコルマクは埋葬されていました。彼は、里親として育てたコルマクを救えなかったことを嘆き悲しみます。

コルマクの出自

コルマクの出自には謎が多く、コンホヴァルが自分の母親ネスと近親相姦して生まれた子であるという説も存在します。また、別の物語では、コルマクの母親は上王エオヒド・フェドレフの娘クロトルであり、メイヴ女王の姉妹であるともされています。

所有物

『コンホヴァルの話』によれば、コルマクは Croda という血みどろの盾、あるいは剣を所有していたとされています。近代の創作では、これに加えて、名のある剣や槍を所有していたという設定が付与されています。

近代創作におけるコルマク

グレゴリー夫人の作品では、竪琴師クレイフタインがコルマク一行が宿泊するダ・ホカの館の近くに住んでおり、ハープの音色でコルマクから戦う力を奪い、死に至らしめたとされています。フィオナ・マクラウドの短編では、コルマク・コンリナスの妻エイリイが子を身ごもりますが、夫の竪琴師クレヴィンに露見し、クレヴィンによって二人は破滅するという物語が描かれています。

コルマク・コン・ロンガスの物語は、アイルランドの英雄叙事詩の中でも特に悲劇的な色彩が濃く、裏切り、宿命、そして愛憎が複雑に絡み合った人間ドラマとして、今日まで語り継がれています。

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