コンゴ解放民族戦線

コンゴ解放民族戦線（FNLC）について

コンゴ解放民族戦線（Front for the National Liberation of the Congo、略称：FNLC）は、1970年代後半にザイールのシャバ州で活動を展開した反政府武装勢力です。FNLCの成立や活動は、当時のザイールの政治環境や国際情勢と密接に関わっています。

背景と成立の経緯

1965年、ザイールでモブツ・セセ・セコが政権を掌握しました。彼の統治下で、1966年と1967年に白人傭兵による反乱が発生しましたが、いずれも失敗に終わりました。反乱に参加していたカタンガ兵は、モブツの政権からの迫害を恐れ、隣国のアンゴラに逃れることを余儀なくされました。当時、アンゴラでは独立戦争が続いており、カタンガ兵たちはポルトガルの秘密警察PIDEに雇われて治安維持活動に従事しました。

しかし、1974年にカーネーション革命が発生し、ポルトガルの支援が打ち切られた結果、カタンガ兵はアンゴラ解放人民運動（MPLA）との接近を強いられました。MPLAと敵対するFNLAやUNITAはモブツの支持を受けていたため、カタンガ兵たちの選択は困難なものでした。1975年のアンゴラ人民共和国の成立によって彼らは一時的に安定した環境を得るものの、冷戦下の米ソ代理戦争の一端を担うこととなりました。彼らの目指すはモブツ政権の打倒とザイールの解放でした。

組織の構成と訓練

FNLCは、ソ連から提供された兵器で武装し、キューバ兵の訓練を受けました。将校や下士官には、カタンガ憲兵隊の生き残りが選ばれ、シャバ州内のルンダ族から募集された兵士が多くを占めていました。さらに、活動を支援するために左派白人ポルトガル人傭兵も参加しており、多国籍の構成がFNLCの特色の一つです。

第一次シャバ紛争

1977年3月、FNLCはナタニエル・ムブンバ将軍の指揮のもと、約2,000名の兵力でアンゴラ国境を越えてシャバ州に侵攻しました。これが第一次シャバ紛争と呼ばれる事件で、FNLCはベンゲラ鉄道沿いのディロロ、カサジ、ムチャチャを占領し、モブツ政権に迫ります。しかし、モブツの要請を受けたモロッコ軍や他の国々の軍隊が加勢したため、同年5月末にはFNLCは再びアンゴラ領内へと追い戻されました。

第二次シャバ紛争

1978年5月、FNLCは再びシャバ州へ侵攻し、コルヴェジを占領しましたが、兵士たちの行動が問題を引き起こします。略奪や白人住民に対する虐殺が始まると、多国籍軍の介入を招く結果になりました。5月19日にはフランス軍の空挺部隊が降下し、続いてベルギー軍やイギリス軍、アフリカ諸国の軍隊が加わり、FNLCは6月末までにシャバ州から撃退されました。これによって、FNLCの反乱はほぼ頓挫しました。

その後の展開

ムブンバは1987年に党を追放され、1988年にはアンゴラ政府に逮捕され、強制送還されて投獄されました。しかし、1990年になるとモブツは与党以外の政党を容認し始め、1991年にはFNLCの合法化が行われました。この結果、FNLCのメンバーは帰国し、現在も政党として活動を続けています。

FNLCの歴史には、軍事的な活動と国際的な政治が交錯しており、ザイールの歴史の中で重要な役割を果たした存在であると言えるでしょう。

もう一度検索