コンスタンティノープル包囲戦 (626年)

626年コンスタンティノープル包囲戦：東ローマ帝国の命運を分けた戦い

626年、東ローマ帝国の首都コンスタンティノープルは、サーサーン朝、アヴァール人、スラヴ人という強大な勢力による包囲を受けました。この危機的な状況を、東ローマ帝国はいかにして乗り越え、その後の歴史にどのような影響を与えたのでしょうか。本稿では、包囲戦の背景、経過、そしてその後の展開について詳しく解説します。

包囲戦の背景

7世紀初頭、東ローマ帝国は内憂外患に苦しんでいました。602年にフォカスが帝位を簒奪し、その失政によって国力は大きく衰退。サーサーン朝のホスロー2世は、この混乱に乗じて東ローマ帝国への侵攻を開始しました。サーサーン朝軍は破竹の勢いで領土を拡大し、アナトリア半島の中心部まで迫りました。

一方、東ローマ帝国ではカルタゴ総督ヘラクレイオスが反乱を起こし、フォカスを倒して帝位に就きました。ヘラクレイオスは帝国の再建に尽力しましたが、サーサーン朝の勢いを止めることはできませんでした。カルケドンが陥落し、コンスタンティノープルへの道が開かれるという状況下で、ホスロー2世はアヴァール人のカガンと同盟を結び、東西からコンスタンティノープルを挟撃する作戦を立てました。

包囲戦の経過

626年、サーサーン朝軍がカルケドンに駐屯する一方、アヴァール人はヨーロッパ側からコンスタンティノープルを包囲し、ウァレンス水道橋を破壊しました。しかし、東ローマ海軍がボスポラス海峡の制海権を維持したため、サーサーン朝軍はヨーロッパ側に渡ることができず、アヴァール人との連携は困難を極めました。また、海峡を挟んでの情報伝達も滞り、両陣営の連携は不十分なものとなりました。

コンスタンティノープルの防衛は、総大主教セルギオス1世とパトリキオスのボヌスが指揮しました。ヘラクレイオス帝は、首都の防衛を固める一方、自らは小規模な軍を率いてサーサーン朝の中心部へ逆侵攻するという大胆な作戦に出ました。

6月29日、アヴァール人を中心とする攻城軍がコンスタンティノープルへの総攻撃を開始しました。城壁内には1万2000人の熟練した下馬騎兵が配置され、8万人のアヴァール人とその配下のスラヴェニ族の攻撃に耐え忍びました。セルギオス1世は聖母マリアのイコンを掲げて城壁を巡回し、兵士たちの士気を高めました。

8月7日、サーサーン朝軍は船でボスポラス海峡を渡ろうとしましたが、東ローマ海軍に撃破されました。また、スラヴ人は金角湾から海の城壁を攻撃しましたが、ボヌス率いる東ローマのガレー船団によって撃退されました。アヴァール人も陸上からの総攻撃を試みましたが、いずれも失敗に終わりました。さらに、東方でヘラクレイオスの弟テオドロスがシャーヒーン率いるサーサーン軍に勝利したという知らせが届き、アヴァール人は撤退を開始。コンスタンティノープル包囲は失敗に終わりました。

包囲戦のその後

コンスタンティノープル包囲の失敗は、サーサーン朝に大きな打撃を与えました。ホスロー2世はシャフルバラーズの暗殺を企てましたが、その計画は露見し、シャフルバラーズは中立の立場を取りました。ヘラクレイオスはその後もサーサーン朝への侵攻を続け、ニネヴェの戦いで勝利を収めました。628年、ホスロー2世は廃位され、サーサーン朝は内乱状態に陥りました。ヘラクレイオスは新たな君主カワード2世と和平を結び、サーサーン朝軍を撤退させ、長きにわたる東ローマ・サーサーン朝戦争は終結しました。

包囲戦の評価

626年のコンスタンティノープル包囲戦は、東ローマ帝国の存亡をかけた重要な戦いでした。アヴァール人の攻城技術の不足、サーサーン朝軍との連携の失敗、そして東ローマ帝国の堅固な防衛体制が、包囲戦失敗の要因として挙げられます。この勝利によって東ローマ帝国は息を吹き返し、その後の歴史を歩むことができました。

しかし、サーサーン朝の衰退後、イスラーム勢力が台頭し、東ローマ帝国は新たな脅威に直面することになります。コンスタンティノープルはその後も、アラブ人による包囲戦を経験することになります。

626年のコンスタンティノープル包囲戦は、東ローマ帝国の歴史における重要な転換点であり、その後の帝国の命運を大きく左右する出来事でした。

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