コーミ

コーミ株式会社

コーミ株式会社は、愛知県名古屋市に本社を置く調味料メーカーです。特に、中京圏で長年愛されている「こいくちソース」で広く知られています。社名の「コーミ」は、良い風味や味わいを意味する「香味」に由来しており、味へのこだわりを象徴しています。同社はソース事業を主軸としながらも、愛知県産のトマトを使った加工品や、名古屋めしなどのご当地グルメに特化した調味料開発にも注力しており、これらを事業の三本柱としています。コーポレート・スローガンは「いい味、いい笑顔」。

沿革

1946年（昭和21年）、川澄鋼一氏がソースの製造販売を開始したのがコーミの歴史の始まりです。その後、川澄食品工業株式会社として法人化され、1967年（昭和42年）に現在のコーミ株式会社へと社名を変更しました。ソース専門の犬山工場の建設や各地への営業拠点設置などを経て、ソース専業大手の一角を占める企業へと成長を遂げました。1987年（昭和62年）には名古屋市東区に本社ビルを新築移転しています。1993年（平成5年）には創業者の川澄鋼一氏が会長となり、川澄正美氏が社長に就任しました。1994年（平成6年）3月期には売上高が50億円を超えるなど順調に推移し、株式公開も視野に入れていましたが、以降は業績の伸び悩みが見られ、近年は30億円台後半で推移しています。

主な事業と製品

ソース事業

コーミの最大の強みは、主力商品の「こいくちソース」が中京圏で圧倒的なブランド力を持っていることです。味噌文化が根付くこの地域の消費者の濃口嗜好に合致し、「地域ナンバーワン」「中部を代表する味覚」と称されるほどの地位を確立しています。中京圏のウスターソース市場では、同じく愛知県が創業地のカゴメと競合しつつも優位性を保ち、両社が市場売上の上位を占めています。特に、家庭用の1リットルや500ミリリットルの大型・中型容器のこいくちソースは、この地域で最も売れ筋の商品となっています。しかし、この強みは同時に、地域性の高さとなり、中京地区以外でのシェアが低いという課題も生んでいます。

近年の市場変化に対応し、300ミリリットルといった小型容器の売上比率が上昇するなど、容器サイズの多様化が進んでいます。また、特定の料理に合わせた専用ソース市場へも積極的に参入しており、とんかつソース、お好みソース、焼そばソースなどを展開。地元特産の八丁味噌や白醤油を隠し味に使った和風の濃口専用ソースも開発しています。有機野菜を使用したソースや、国産野菜のみを使用しアレルギー物質や化学調味料・着色料・甘味料無添加で仕上げた「国産野菜でつくった」シリーズなど、近年高まる食の安全・安心へのニーズに応えるこだわり商品も提供しています。主力である「こいくちソース」の容器デザインも、2013年（平成25年）に約30年ぶりに刷新されました。

トマト加工品事業

ソースに次ぐ事業の柱として、トマト加工品分野にも力を入れています。「食塩無添加有機ケチャップ」や、黒酢を使用した「トマトケチャップ黒酢仕立て」など、素材や製法にこだわった製品を展開しています。愛知県産加工用トマトの生産拡大と安定供給を目指し、JAあいち経済連や岡本食品などと連携して「愛知県加工用トマト拡大協議会」を設立し、活動を進めています。原料確保の取り組みは国内にとどまらず、北海道沼田町との業務連携協定や、イタリア産完熟トマトのみを使用した製品開発なども行っています。ケチャップ以外にも、ピザソースやトマトベースの基礎調味料、「料理おまかせトマト」、トマト鍋専用調味料など、幅広いトマト加工品を提供しています。さらに、トマトケチャップを通じた食育活動にも力を入れています。

ご当地調味料・コラボ商品など

地域に根差した企業として、名古屋めしを家庭で手軽に楽しめる「名古屋めし」シリーズを展開しています。手羽先のたれ、あんかけパスタソース、みそかつのたれなどが代表的な商品です。また、B1グランプリなどで知られるご当地グルメとのコラボレーションも行っており、四日市とんてき協会認定のたれ、富士宮やきそば学会監修ソース、駒ヶ根ソースかつ丼のたれなどを開発・販売しています。さらに、CoCo壱番屋、道とん堀といった他社との共同開発によるソースや、中部大手菓子卸の種清との連携によるソース味のあられなども手掛けています。ソース以外の製品として、ゆであずきや黒豆ごはんの素といった缶詰も製造販売しています。

事業構造

売上構成を見ると、かつては家庭向け市販用商品が約75%を占めていましたが、業務用商品の拡販に注力した結果、大手コンビニエンスストアの中部地区向けなどで採用が進み、2012年（平成24年）3月期には業務用比率が約33.5%まで上昇しました。品目別では、2000年（平成12年）の実績では、ウスターソース類、トマト加工品類が売上の主要部分を占め、たれ類がそれに続いています。

過去の挑戦

1990年代の規制緩和を受けて、コーミは地ビール事業への参入を試みました。1996年（平成8年）に名古屋市名東区にビール醸造所併設レストランを開業しましたが、業績不振が続き、テコ入れも実らず2002年（平成14年）12月に閉鎖し、地ビール事業から撤退しました。

広告活動

広告戦略においては、長年にわたり女優の山本陽子氏をCMに起用し「値段は高いがいい味です」というキャッチフレーズで品質を訴求しました（実際の店頭価格は他社と大差ない）。2002年（平成14年）4月からは、より若い世代の主婦層への浸透を図るため、三浦りさ子氏を起用し「マイマザーソース」をキャッチフレーズとして、主力であるこいくちソースの顧客層拡大を目指しました。

事業所

本社：愛知県名古屋市東区
東京営業所：東京都中央区
大阪営業所：大阪府大阪市淀川区
工場：愛知県犬山市、愛知県豊橋市

関連事項

過去にはテレビ番組のスポンサーを務めました。漫画「八十亀ちゃんかんさつにっき」とのコラボや、アーティスト広瀬香美氏との連携なども行っています。

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