サイドアーム (シューティングゲーム)

サイドアーム（HYPER DYNE SIDE ARMS）

『サイドアーム』は、カプコンが開発し1986年にアーケードゲームとして稼働を開始した、サイドビューのシューティングゲームです。プレイヤーは人型の機動兵器を操り、様々な方向から襲来する敵を迎撃します。アーケード版の成功を受けて、本作は国内外のコンシューマー機にも数多く移植されました。特にPCエンジンCD-ROM²版では、『サイドアーム スペシャル』として、スタンダード版と大きくゲーム性が異なるBC版が同時収録されています。

ゲームシステム

本作は8方向レバーと3つのボタン（左ショット、右ショット、武器チェンジ）を使用して自機を操作します。自機には1P側の「α機」と2P側の「β機」があり、それぞれのプレイヤーが担当します。攻撃は左方向に撃つ場合は左ショットボタン、右方向の場合は右ショットボタンと、進行方向とは独立した操作が特徴です。全10ラウンドで構成され、ラウンドごとに右方向や下方向など、画面のスクロール方向が変化するのもユニークな点です。各ラウンドの最後には強力なボスキャラクターが登場し、これを倒せば次のラウンドへ進むことができます。

特定の敵を倒すと出現する「Pow」アイテムにショットを撃ち込むことで、スピードアップや攻撃用の武装など様々なアイテムに変化します。これらはストック可能で、武器チェンジボタンを使って状況に応じて切り替えることができます。装備できる武器には、攻撃方向が広がるショットガン、貫通力のあるメガバズーカランチャー、3方向への同時攻撃が可能な3WAYなどがあり、それぞれ異なる特徴を持ちます。同じ武器アイテムを取得することで、最大3段階までパワーアップが可能です。ただし、敵の攻撃や衝突などで自機が破壊されると、その時に装備していた武器は失われます。

ステージ中に隠された特定のアイテムを取得すると、2機の自機が合体するシステムもあります。合体中は攻撃ボタンと連動して8方向への特殊ショットが発射可能になります。1人プレイ時でも2P機が登場して合体でき、この状態では敵の弾に2発まで耐えることができます。2人協力プレイで合体した場合は、アイテムを取得したプレイヤーが移動と通常攻撃、もう一方が8方向ショットを担当します。合体状態で耐久力がなくなると分離します。また、アイテムの中には自機のスピードを下げる「Wop」や、攻撃ボタンを押しっぱなしで連射可能になる「AUTO」（同社作品のキャラクター「弥七」「佐吉」の形状）、残機が増える「モビちゃん」なども存在します。

ストーリー

人類は、強力なモビルスーツを操る謎の敵「ホゾン」による攻撃を受け、壊滅的な被害を受けていました。「ホゾン」の兵器は地球の気象にまで影響を及ぼし、地球は再び氷河期を迎えようとしていました。この未曽有の危機に対し、ヘンリー中尉とサンダース軍曹は地球を守るため、最新鋭のモビルスーツに搭乗して戦場へと降下するのでした。

移植版

PCエンジン (HuCARD) 版

アーケード版からの移植ですが、いくつか大きな変更点があります。武器の選択はRUNボタンで画面を止めて行う方式に変更され、1人プレイ専用となりました。使用できる自機はα機のみで、合体もα合体のみです。ショットガンは敵弾を相殺可能になるなど性能が強化されました。エンディングも文字表示から専用曲とエンドロールが追加されるなど、演出面が強化されています。BGMはアーケード版の曲配置が一部変更され、新曲も追加されました。サウンドは立石孝氏が担当しています。

PCエンジンCD-ROM²版 (サイドアーム・スペシャル)

1989年にNECアベニューから発売されました。CD-ROMの大容量を活かし、内容が異なる2つのゲームが収録されています。

スタンダード版: HuCARD版とほぼ同じ内容ですが、BGMがCD音源によるアレンジ版に変更されています。このアレンジは、カプコンのサウンドチームによる女性バンド「アルフ・ライラ・ワ・ライラ」が担当しました。ボスキャラクターのグラフィック修正や、難易度選択機能が追加されています。
BC（ビフォークライスト）版: アーケード版をベースに、システムやゲーム性が大きく改変されたバージョンです。武器は連射系と溜め撃ち系が標準となり、取得した武器が自動で切り替わる方式です。合体システムはなくなり、オプションが攻撃補助とバリアを兼ねるシステムに変更されています。面構成も短縮化されるなど、テンポ重視の調整が施されており、ほぼ新作と呼べる仕上がりになっています。元々はHuCARD版の試作として作られ、没になったバージョンを再調整して収録したものです。

その他の移植

PlayStation 3やXbox 360向けの『カプコン アーケード キャビネット -レトロゲームコレクション-』に収録されたほか、日本国外ではPlayStation Portable版『Capcom Classics Collection Remixed』やPlayStation 2/Xbox版『Capcom Classics Collection Vol.2』にも収録されています。

開発

ステージ2以降の背景グラフィックとキャラクターデザインは、カプコン入社直後の安田朗氏が手掛けました。ステージ1の背景は岡本吉起氏が担当しています。背景の一部には、アニメ『ザンボット3』の遮光器土偶型要塞、映画『風の谷のナウシカ』の巨神兵、映画『エイリアン』の世界観など、様々な作品からインスパイアされたデザインが描かれており、クリエイターの遊び心が見られます。

自機であるサイドアームのデザインは、脚部やバックパックが『Ζガンダム』を彷彿とさせます。敵キャラクターにもザクやズゴック、アッシマーを思わせるデザインの機体が登場し、パワーアップアイテムとして『機動戦士Ζガンダム』で百式が使用したメガバズーカランチャーが登場するなど、『ガンダム』シリーズからの強い影響が見られます。安田朗氏は後のインタビューで、開発時期がちょうど『Ζガンダム』の放映時期であり、岡本吉起氏と共に番組に夢中になっていたため、それを観ながらデザインしたと語っています。なお、2022年配信の『カプコンアーケード2ndスタジアム』版では、一部の敵キャラクターデザインが変更されています。

評価

アーケード版はゲーム誌『ゲーメスト』で「第1回ゲーメスト大賞」のベストグラフィック部門10位を獲得し、同誌の「ヒットゲームBEST10」で第1回1位に選ばれるなど、稼働当時に高い評価を得ました。

PCエンジン版 (HuCARD) は、『ファミコン通信』のクロスレビューで21点、『マル勝PCエンジン』で30点、『PC Engine FAN』の読者投票によるゲーム通信簿で20.86点（30点満点中）を獲得しています。当時のレビューでは、左右に撃ち分けられるシステムが画期的であり、初心者から上級者まで楽しめるバランスだと評されています。

PCエンジンCD-ROM²版は、『ファミコン通信』で27点、『マル勝PCエンジン』で28点を獲得しました。『月刊PCエンジン』のレビューでは、オリジナルに忠実な高難易度のスタンダード版と遊びやすくなったBC版の両方が収録されている点でお得感があると評価されています。一方、BC版で合体システムがなくなったことを残念がる意見も見られました。

ゲスト出演

本作のプレイヤーキャラクターをデフォルメした「モビちゃん」は、1990年代前半にかけてカプコンの多くの作品にマスコットキャラクターとして登場しました。『天地を喰らうII 赤壁の戦い』のエンディングでは、ストリートファイターシリーズの技を繰り出す寸劇を披露しています。また、クロスオーバー作品である『NAMCO x CAPCOM』や『PROJECT X ZONE』シリーズでは、モビちゃんや自機ロボット（α機・β機）が戦闘ユニットとして登場し、必殺技で本来の姿や合体攻撃を披露しています。

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