サウンド・オブ・サイレンス (アルバム)

サウンド・オブ・サイレンス

『サウンド・オブ・サイレンス』（Sounds of Silence）は、アメリカのフォークロック・デュオ、サイモン&ガーファンクルが1966年1月にリリースしたセカンド・スタジオ・アルバムです。彼らにとって初の全米チャートインとロングセラーをもたらし、その後の輝かしいキャリアを確立する上で極めて重要な作品となりました。

このアルバムの制作は、ある1曲の予期せぬ大ヒットによって急遽決定されました。当時、1964年のデビューアルバム『水曜の朝、午前3時』が商業的に失敗した後、サイモン&ガーファンクルは事実上の活動休止状態にありました。ポール・サイモンは英国へ渡り、ソロアーティストとして活動を展開していました。一方、アート・ガーファンクルは米国に残り、大学に戻っていました。

しかし、事態は1965年春に動き出します。前作のプロデューサーであったトム・ウィルソンは、アルバムに収録されていたアコースティック版の「サウンド・オブ・サイレンス」に注目。彼の発案により、ニューヨークのスタジオミュージシャンたちが演奏するエレクトリック楽器による伴奏が、オリジナル録音にオーバーダビングされました。この新たなシングル・バージョンは、彼らの知らない間にラジオでヘヴィーローテーションされ、全米ヒットチャートを駆け上がり、ついに1966年1月1日付で全米No.1に輝いたのです。

この驚異的なヒットを受け、ポール・サイモンは英国から急遽帰国。アート・ガーファンクルと再合流し、デュオとしての活動を再開することを決意しました。そして、ヒットしたシングルに続くアルバムを迅速に制作する必要が生じました。

アルバムの大部分は、1965年12月にニューヨークで集中的にレコーディングされました。プロデューサーには、当時ボブ・ディランの傑作『追憶のハイウェイ61』を手がけたばかりのボブ・ジョンストンが起用されました。急な制作スケジュールの影響もあり、このセッションで新たに書き下ろされた新曲は「ブレスト」「リチャード・コリー」「早く家へ帰りたい」の3曲のみでした。その他の収録曲は、ポールが英国で発表していたソロ・アルバム『ポール・サイモン・ソングブック』からのセルフカバーや、既存の楽曲のカバーで構成されています。当初録音されたジャクソン・C・フランクのカバー「ブルース・ラン・ザ・ゲーム」は最終的にアルバムには収録されず、「早く家へ帰りたい」はシングルとして先行リリースされました。また、「雨に負けぬ花」は次作『パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム』に収録が見送られました。最終的には、先行ヒットシングル「サウンド・オブ・サイレンス」のオーバーダブ・バージョン、そして活動休止前の1965年4月にトム・ウィルソンのプロデュースで録音されていた「どこにもいないよ」「はりきってゆこう」の2曲を含む、全11曲が収められました。

アルバム『サウンド・オブ・サイレンス』は、本国アメリカで大成功を収めました。ビルボードのアルバムチャートに初めてランクインすると、実に143週にわたる驚異的なロングセラーを記録し、最高順位は1968年に21位まで上昇しました。英国でも初めてチャートインし、最高13位を記録しています。日本では1966年8月に発売されましたが、前作が未発売だったため、本作が日本におけるサイモン&ガーファンクルの実質的なデビューアルバムとなりました。

本作に収録された楽曲は、その後の彼らのキャリアにおいても重要な位置を占めています。特に、「サウンド・オブ・サイレンス」と「4月になれば彼女は」は、1967年公開のマイク・ニコルズ監督による青春映画『卒業』のサウンドトラックに採用され、作品の成功とともに楽曲も改めて注目を集めました。

2001年に発売された本作のリマスターCDには、制作当時に未収録となった「ブルース・ラン・ザ・ゲーム」に加え、1970年に行われたデモ録音から「バーブリアレン」「ローズ・オブ・アバディーン」「ローヴィング・ギャンブラー」の3曲がボーナストラックとして追加収録されています。

収録曲

特記なき楽曲はポール・サイモン作詞・作曲。6.はインストゥルメンタル。

Side 1

1. サウンド・オブ・サイレンス - "The Sound of Silence" - 3:08
2. 木の葉は緑 - "Leaves That Are Green" - 2:23
3. ブレスト - "Blessed" - 3:16
4. キャシーの歌 - "Kathy's Song" - 3:21
5. どこにもいないよ - "Somewhere They Can't Find Me" - 2:37
6. アンジー - "Anji" (Davy Graham) - 2:17

Side 2

1. リチャード・コリー - "Richard Cory" - 2:57
2. とても変わった人 - "A Most Peculiar Man" - 2:34
3. 4月になれば彼女は - "April Come She Will" - 1:51
4. はりきってゆこう - "We've Got a Groovy Thing Goin'" - 2:00
5. アイ・アム・ア・ロック - "I Am a Rock" - 2:50

2001年リマスター盤ボーナス・トラック

1. ブルース・ラン・ザ・ゲーム - "Blues Run The Game" (Jackson C. Frank) - 2:55
2. バーブリアレン (デモ) - "Barbriallen" (traditional) - 4:06
3. ローズ・オブ・アバディーン (デモ) - "Rose of Aberdeen" (traditional) - 2:02
4. ローヴィング・ギャンブラー (デモ) - "Roving Gambler" (traditional) - 3:03

また、本作収録曲の一つである「リチャード・コリー」は、ポール・マッカートニー率いるウイングスのライブでも度々演奏され、1976年のライブアルバム『ウイングスU.S.A.ライヴ!!』にも収録されています。

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