サキシマスオウノキ属

サキシマスオウノキ属（Heritiera）

サキシマスオウノキ属（Heritiera）は、アオイ科（クロンキスト体系ではアオギリ科）に属する植物の属です。主にインド洋沿岸や南太平洋沿岸の熱帯・亜熱帯地域に分布しており、海岸近くの環境に適応した種が多く見られます。

特徴

この属の植物は、海岸線や潮間帯の扇状地といった独特な環境に生育しています。代表的な種としては、以下のようなものが挙げられます。

サキシマスオウノキ（Heritiera littoralis）: インド洋や南太平洋の沿岸地域に広く分布しています。
*スンドリ（Heritiera fomes）: 主にバングラデシュからタイにかけての潮間帯に生育し、2008年に絶滅危惧種に指定されました。スンダルバン/シュンドルボンの語源になったと考えられています。
*マルミノサキシマスオウノキ（Heritiera globosa）: ボルネオ島の潮間帯に生育し、2008年に絶滅危惧種と評価されました。

種

サキシマスオウノキ属には、約40種が認められています。以下に主な種をリストアップします。

Heritiera actinophylla (F.M.Bailey) Kosterm.
Heritiera albiflora (Ridl.) Kosterm.
Heritiera angustata Pierre
Heritiera arafurensis Kosterm.
Heritiera aurea Kosterm.
Heritiera borneensis (Merr.) Kosterm. - #利用参照
Heritiera burmensis Kosterm.
Heritiera catappa Kosterm.
Heritiera cordata Kosterm.
Heritiera densiflora (Pellegr.) Kosterm.（シノニム: Tarrietia densiflora (Pellegr.) Aubrév. & Normand）- オグエ（Ogoue）
Heritiera dubia Wall. ex Kurz
Heritiera elata Ridl.
Heritiera fomes Banks - スンドリ（インド・バングラデシュ名: sundri、ベンガル語: সুন্দরী）
Heritiera gigantea Kosterm.
Heritiera globosa Kosterm. - マルミノサキシマスオウノキ
Heritiera impressinervia Kosterm.
Heritiera javanica (Blume) Kosterm.（シノニム: H. cochinchinensis (Pierre) Kosterm.）- パラピ（インドネシア名: palapi）、ドンチェム（クメール語: ដូនចែម don-chem） - #利用参照
Heritiera kanikensis Majumdar & L.K.Banerjee
Heritiera kuenstleri (King) Kosterm.
Heritiera littoralis Aiton - サキシマスオウノキ
Heritiera longipetiolata Kaneh. - ナガエスオウノキ
Heritiera macrophylla Wall. ex Kurz
Heritiera macroptera Kosterm.
Heritiera magnifica Kosterm.
Heritiera montana Kosterm.
Heritiera novoguineensis Kosterm.
Heritiera ornithocephala Kosterm.
Heritiera papilio Bedd. - サダナング（タミル名: sadanangu）
Heritiera parvifolia Merr.
Heritiera peralata (F.M.Bailey) Kosterm.
Heritiera percoriacea Kosterm.
Heritiera polyandra (L.S.Sm.) Kosterm.
Heritiera pterospermoides Kosterm.
Heritiera rumphii Kosterm.
Heritiera simplicifolia (Mast.) Kosterm. - メンクラン（マレー語: mengkulang (siku keluang)）- #利用参照
Heritiera solomonensis Kosterm.
Heritiera sumatrana (Miq.) Kosterm.
Heritiera sylvatica S.Vidal（シノニム: Tarrietia sylvatica (S.Vidal) Merr.）- ドゥングン（フィリピン名: dungon、マレー語: dungun）
Heritiera trifoliolata (F.Muell.) Kosterm.
Heritiera utilis (Sprague) Sprague（シノニム: Tarrietia utilis (Sprague) Sprague）- ニヤンゴン（アニ語: niangon）- #利用参照

利用

この属の植物の多くは、有用な材木として利用されています。特に、以下の種が重要です。

メンクラン: マレー群島区系に分布するHeritiera borneensis、H. javanica（パラピ）、H. simplicifoliaの3種は、まとめて「メンクラン」と呼ばれます。心材は帯桃中褐色から暗赤褐色で、縦軸方向の切断面に黒い筋が現れることが多く、淡橙色の辺材が混ざり込みます。不規則な交錯木理を持ち、柾目木取りの材面には幅の広い縞杢や赤い斑が現れます。肌目はやや粗いですが均一で、気乾比重は0.64-0.72と樹種によって差があります。乾燥は早く良好ですが、そりや表面割れを起こしやすい場合もあります。緻密な木材で、乾燥後は安定しています。曲げ強さ、剛性、耐衝撃荷重性は中庸で、圧縮強度は高いですが、蒸し曲げに対する適性は非常に低いとされます。加工性は良い方ですが、刃先を鈍磨させやすい難点があります。釘打ちには下穴が必要です。接着性は良好で、目止め剤を使用すれば美しい仕上がりが得られます。腐朽しやすく、辺材はケブトヒラタキクイムシの被害を受けやすいです。心材は保存薬品処理が難しいものの、辺材は比較的容易です。原産地では、キャビネット、家具、車大工、車体内装、羽目板、敷居、枕木、ボートの肋材、厚板、住宅用フローリングなどに用いられます。また、扉、竜骨、つき板、曲木としても利用されます。メンクラン材はロータリーカットで合板に、スライスカットで化粧単板に加工されます。

ニヤンゴン: 西アフリカ産のHeritiera utilis*は、「ニヤンゴン」と呼ばれ、同様に建材や家具などに利用されます。

サキシマスオウノキ属の植物は、その木材としての価値だけでなく、生態系においても重要な役割を果たしています。しかし、伐採や環境破壊により、一部の種は絶滅の危機に瀕しています。これらの植物を保護し、持続可能な利用を促進することが重要です。

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