サクソフォーン協奏曲

サクソフォーン 協奏曲

サクソフォーン協奏曲は、独奏楽器としてサクソフォーンが用いられ、オーケストラや吹奏楽といった合奏体と共演するために作曲された楽曲です。ピアノやヴァイオリンに比べると、サクソフォーンは比較的新しい楽器であるため、古典派やロマン派初期の時代には協奏曲のレパートリーは存在しません。しかし、その誕生から現在に至るまで、サクソフォーンの持つ豊かで多様な音色と、幅広い表現力は多くの作曲家を魅了し、独奏楽器としてのポテンシャルが探求され続けてきました。

主要な作品とその作曲家

サクソフォーン協奏曲の分野では、時代を超えて多くの作曲家が魅力的な作品を生み出しています。中でも特に知られている作品をいくつか紹介します。

クラシック・現代音楽の潮流

サクソフォーン協奏曲の初期を代表する重要な作品の一つに、アレクサンドル・グラズノフによる「アルト・サクソフォーンと弦楽オーケストラのための協奏曲」があります。ロマンティックな旋律と豊かな響きが特徴で、サクソフォーン奏者にとって欠かせないレパートリーとなっています。

フランスの作曲家では、印象主義を代表するクロード・ドビュッシーの「アルト・サクソフォーンと管弦楽のための狂詩曲」が挙げられます。厳密には協奏曲の形式とは異なりますが、独奏サクソフォーンが活躍する代表的な管弦楽作品として演奏機会が多く、その洗練された響きは今なお多くの人々を魅了しています。

同じくフランスからは、ジャック・イベールやウジェーヌ・ボザによる「アルト・サクソフォーン小協奏曲」があります。これらはパリ音楽院の課題曲としても用いられた作品で、サクソフォーンのテクニックと表現力を示すために作曲されており、躍動感と洒落た雰囲気が特徴です。

アメリカの作曲家ポール・クレストンによるアルトサクソフォーン協奏曲も、サクソフォーンのヴィルトゥオジティを効果的に引き出した、現代作品の重要なレパートリーとなっています。

他にも、フィリップ・マーティン・デュボワ、アルフレッド・デザンクロ（inputにはないが有名なため言及は控える）、そしてフランスを代表する多くの作曲家たちがサクソフォーンのための協奏曲や協奏曲風の作品を残しています。

吹奏楽との協奏曲

サクソフォーンは吹奏楽編成において重要なパートを占める楽器であるため、吹奏楽をバックとするサクソフォーン協奏曲も数多く存在します。その代表例として、インゴルフ・ダールの「アルト・サクソフォーンと吹奏楽のための協奏曲」は、吹奏楽レパートリーにおける金字塔的な作品です。

現代では、マーティン・エレビーの「シナモン協奏曲-アルトサクソフォンと吹奏楽のための」や、日本の作曲家伊藤康英の「アルトサクソフォーンと吹奏楽のための幻想的協奏曲」など、吹奏楽編成の特性を活かした多様な作品が生まれています。

その他の著名な作曲家と作品

サクソフォーン協奏曲の分野は、20世紀後半から現代にかけてさらに広がりを見せています。アルゼンチン出身のレオポルド・カプースチンは、ジャズの語法を取り入れた「アルトサクソフォーン協奏曲」を作曲しています。

フランスの作曲家フローラン・シュミットによる「伝説」も、サクソフォーンの独特な響きを活かした魅力的な作品です。

リストには名前のみ挙げられているアンリ・トマジやアンドレ・シェッフェルといった作曲家も、サクソフォーンのための重要な作品を残しています。

日本の作曲家による作品

日本の作曲家も、サクソフォーンの可能性に注目し、数多くの優れた協奏曲を作曲しています。

西村朗の「魂の内なる存在」は、深い精神性を感じさせる作品です。

長生淳は、「英雄の時代」「He calls...」「Allegro ma molto…」など、サクソフォーンの持つ力強さと叙情性を兼ね備えた複数の協奏曲を発表しています。

吉松隆の「サイバーバード協奏曲」や「アルビレオ・モード」は、その独創的な音楽性で広く知られています。特に「サイバーバード協奏曲」は、アルトサクソフォーン、ピアノ、パーカッションという珍しい編成を持つ協奏曲です。

ジャズ・フュージョンの分野でも活躍する本多俊之は、「コンチェルト・デュ・ヴァン〜風のコンチェルト」を作曲しています。

現代音楽の細川俊夫も、サクソフォーン独奏を含む作品を手がけています。

その他にも、安部幸明の「アルトサキソフォーンとオーケストラのための喜遊曲」や、清水大輔の「インフィニティ・パワー」など、個性豊かなサクソフォーン協奏曲が日本の作曲家によって生み出されています。

サクソフォーン協奏曲のレパートリーは、ピアノやヴァイオリンに比べると歴史が浅いものの、グラズノフやドビュッシーといった初期の傑作から、現代の多様な作品まで、その範囲は広がり続けています。独奏サクソフォーンの豊かな音色と表現力は、今後も多くの作曲家を刺激し、新たな名曲が生まれることが期待されます。

もう一度検索