サザナミヤッコ

サザナミヤッコ（Pomacanthus semicirculatus）

サザナミヤッコは、キンチャクダイ科に属し、インド太平洋の海域に広く分布する魅力的な海水魚です。この魚は、1831年にフランスの博物学者ジョルジュ・キュヴィエにより、最初に記載されました。当時は Holacanthus semicirculatus という名で知られ、タイプ標本はインドネシアとパプアニューギニアで採取されました。種小名の「半円」に由来する模様が、特に幼魚の体の後半に見られます。この特徴により、和名の「サザナミヤッコ」も、体側にある波紋の模様から名付けられました。

分布

サザナミヤッコは、西はスーダン、南アフリカ共和国から東アフリカを経て紅海、インド洋を横断し、東はフィジー、トンガ、サモアにまで生息しています。また、北は南日本、南はオーストラリアの海域までのインド太平洋の幅広い領域に分布しています。オーストラリアでは西オーストラリア州からシドニーにかけて観察されるほか、幼魚はメリンブラ周辺でも見つかります。クリスマス島、ココス諸島、さらにタスマン海のロード・ハウ島での出現も確認されています。1999年以降はフロリダ州沖でも散発的に観察され、2005年以降はハワイ諸島のオアフ島でも目撃されています。日本では伊豆諸島、小笠原諸島、屋久島、琉球列島などで観察され、時には黒潮に乗って本州沿岸などでも見られることがあります。

形態

サザナミヤッコの体は側扁しており、全体的に高い体型をしています。背鰭は13棘と20〜23軟条、臀鰭は3棘と18〜22軟条で構成されています。最大サイズはおおよそ40 cmとなり、成魚の体色は緑褐色をベースに中央部は淡い黄緑色、全体に斑点が点在し、中央部は紺色、後部は水色です。胸鰭は黄色で、全ての鰭や鰓には青い蛍光色での縁取りが施されています。その目の周辺には、アイシャドーのように青いラインが付いています。また、口は小さく、吻の部分が黄色なのも特徴です。成魚の背鰭と臀鰭は後方に長く延びています。

一方、幼魚の模様は成魚とは大きく異なり、黒地に白と青の細い湾曲した横縞が入ります。体長は8〜16 cmと小さく、成長と伴に体色は変化していきます。

良く似た種

サザナミヤッコは、ロクセンヤッコ、アデヤッコ、タテジマキンチャクダイなどと類似しています。特にタテジマキンチャクダイの幼魚は2 cm以下の小サイズの個体が似ているものの、サザナミヤッコには吻端から背中にかけての白い線がない点で区別できます。ロクセンヤッコも模様に類似は見られますが、サザナミヤッコの白線は大きくカーブし、ロクセンヤッコは直線的です。また、アデヤッコはロクセンヤッコの幼魚に似ていますが、目の周辺が成長に伴いオレンジ色に変わります。

生態

この魚は水深1〜40 mのサンゴ礁に生息し、雑食性を特長とします。海藻、ホヤ、カイメンなどを食べることで知られています。幼魚は特に警戒心が強く、近づくのが難しい存在です。幼魚は浅い場所に多く、成魚は隠れ場所となるサンゴ礁や難破船を好んで生息します。また、この魚は通常単独またはペアで行動します。

人との関わり

観賞魚としての人気が高く、サザナミヤッコは丈夫で飼育が容易ですが、時に性格が強いため、他の魚を追い回すことがあります。このため、気の弱い魚との同居には注意が必要です。沖縄県では食用として流通していることもあります。

サザナミヤッコは、海の環境で見られる多様な生態系の一部であり、その美しい姿と独特の模様は、多くの人々に愛されています。

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