サステイナビリティ学

サステナビリティ学：持続可能な未来のための学問

地球温暖化や資源の枯渇など、現代社会は多くの地球規模の課題に直面しています。これらの問題に対処し、未来世代に豊かな地球を残すためには、持続可能な社会の構築が不可欠です。サステナビリティ学（Sustainability Studies、サスティナビリティ学とも表記）は、まさにこの課題解決を目指し生まれた、学際的な学問分野です。

サステナビリティ学は、地球環境問題への対処を主眼とし、経済、社会、環境の3つの側面を統合的に考察します。単なる環境問題へのアプローチにとどまらず、持続可能な社会システムの構築に必要な、多様な視点と知識体系を統合しようとする点が特徴です。そのため、自然科学、人文科学、社会科学など、様々な分野の知見を融合させた学際的な研究が展開されています。

サステナビリティ学の源流：持続性科学

サステナビリティ学の基礎となる考え方の一つに、持続性科学（Sustainability Science）があります。これは、人間活動と環境システムとの相互作用を研究対象とする学問分野です。土地変化科学、政治生態学と共に、2000年代以降の人間-環境研究における主要な柱となっています。

アメリカ合衆国では、1970年代から農業における持続可能性が課題となり、持続的農業（sustainable agriculture）の概念が注目されるようになりました。国際連合食糧農業機関（FAO）やアメリカ合衆国農務省（USDA）もこの動きに注目し、持続可能な農業生産システムの確立に貢献してきました。

日本におけるサステナビリティ学

日本でサステナビリティ学を提唱した先駆者の一人に小宮山宏氏がいます。小宮山氏は、地球システム、社会システム、人間システムの相互作用を研究の中心に据え、文理融合による超学際的なアプローチを推進しました。

2005年には、東京大学を中核としたサステイナビリティ学連携研究機構が設立されました。これは、全国の大学が連携して研究拠点を形成し、サステナビリティ学の体系化と地球持続性ビジョンの構築を目指すネットワーク型の組織です。

その後も、サステナビリティ学の教育・研究体制は着実に強化されています。例えば、2016年には法政大学大学院に公共政策研究科サスティナビリティ学専攻（修士課程、博士後期課程）が開設され、2023年には武蔵野大学に工学部サステナビリティ学科が開設されました。これらの取り組みは、将来のリーダーとなる人材育成に大きく貢献すると期待されています。

サステナビリティ学の展望

サステナビリティ学は、まだ発展途上の学問分野です。しかし、地球環境問題の深刻化に伴い、その重要性はますます高まっています。不確実性への対応や予防原則といった、従来の学問では扱いが難しかった問題にも積極的に取り組むことで、持続可能な社会の実現に貢献することが期待されています。

今後、サステナビリティ学は、気候変動問題、資源問題、貧困問題など、様々な地球規模課題への解決策を探る上で、中心的な役割を果たしていくことになるでしょう。学際的な研究アプローチをさらに深化させ、社会実装への取り組みを加速させることが、今後の重要な課題です。

関連書籍

小宮山宏『サステイナビリティ学への挑戦』岩波書店、2007年
三村信男・伊藤哲司・田村誠・佐藤嘉則 編著『サステナビリティ学をつくる』新曜社、2008年
明日香壽川、河宮未知生、高橋潔、吉村純、江守正多、伊勢武史、増田耕一、野沢徹、川村賢二、山本政一郎 『地球温暖化懐疑論批判』　東京大学 IR3S/TIGS叢書 2009年
Mino Takashi, Shogo Kudo (eds), (2019), Framing in Sustainability Science. Singapore: Springer.

関連キーワード

学際、総合科学、サステイナブル工学、持続可能性、環境問題、環境教育、環境技術、地球温暖化

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