サボー・ラースロー

サボー・ラースロー

サボー・ラースロー（Szabó László）は、1936年3月24日にハンガリーの首都ブダペストで生まれた、フランスとハンガリーを股にかけて活躍した俳優、映画監督、そして脚本家です。特に、フランス映画史における重要なムーブメントであるヌーヴェルヴァーグ期において、俳優として多くの印象的な作品に貢献し、その後は自身の作品も発表しました。

来歴とキャリア

ラースローは1950年代の初め、まだ10代の頃にハンガリー国内の映画で俳優としてのキャリアをスタートさせました。しかし、1956年に母国で発生したハンガリー動乱の影響による政治情勢の不安定化を背景に、彼はフランスのパリへと移り住むことを決意します。この移住が、彼のその後のキャリア形成に決定的な影響を与えました。

パリに移ったラースローは、フランス映画界の新しい波、ヌーヴェルヴァーグの中心へと身を置くことになります。クロード・シャブロル監督の『いとこ同志』（1959年）や『気のいい女たち』（1960年）、そして最も特筆すべきはジャン＝リュック・ゴダール監督との協働です。彼はゴダール監督の『小さな兵隊』（1960年）、『女と男のいる舗道』（1962年）、『アルファヴィル』（1965年）、『メイド・イン・USA』（1967年）、『ウイークエンド』（1967年）、さらには後年の『パッション』（1982年）や『子どもたちはロシア風に遊ぶ』（1993年）といった主要な作品群に俳優として多数出演し、ヌーヴェルヴァーグの顔ぶれの一人として重要な存在感を放ちました。ラウール・クタール撮影監督やシュザンヌ・シフマンなど、ゴダール組の中心人物たちとも深く関わっています。

また、ゴダール作品以外でも、ジャック・リヴェット監督の『地に堕ちた愛』（1984年）や『パリでかくれんぼ』（1995年）、エリック・ロメール監督の『満月の夜』（1984年）、アルノー・デプレシャン監督の『魂を救え!』（1992年）など、フランスを代表する様々な監督の作品に出演しています。国際的な活動としては、コスタ＝ガヴラス監督の『告白』（1970年）や、ハンガリーのミクロシュ・ヤンチョー監督の仏ハンガリー合作『シロッコ』（1969年）では助監督も兼任するなど、俳優以外の形でも映画製作に関わりました。

俳優としての確固たる地位を築いたラースローは、自身の監督としてのキャリアも開始します。1973年に、ベルナデット・ラフォンを主演に迎えた『Les Gants blancs du diable』で長編映画監督としてデビュー。続いて、クロード・ベリがプロデュースし、カトリーヌ・ドヌーヴとベルナデット・ラフォンが出演した1975年の監督作『恋のモンマルトル（Zig zig）』は、日本でも劇場公開されるなど国際的な注目を集めました。監督作の中には、母国ハンガリーで撮影された作品もあり、フランスとハンガリーという二つの国が彼の活動基盤であり続けたことを示しています。例えば、『Sortüz egy fekete bivalyért』（1985年、仏ハンガリー合作）や、『Az Ember, aki nappal aludt』（2003年、ハンガリー映画）などが挙げられます。

サボー・ラースローは、ハンガリーで俳優として出発し、パリでヌーヴェルヴァーグの波に乗って国際的に活躍した稀有な映画人です。俳優として多くの巨匠に起用される一方で、自らもメガホンを取り、独自の視点から作品を生み出し続けました。彼のキャリアは、20世紀後半のヨーロッパ映画史、特にフランス映画の変遷を知る上で興味深い軌跡を描いています。

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