サヤインゲン

サヤインゲンとは

サヤインゲン（英: Green bean）は、インゲンマメの若いサヤを食用とする果菜です。缶詰や冷凍食品としても広く流通しており、世界中で食べられています。日本では、塩茹でにして和え物やおひたしにしたり、バター炒めにするのが一般的です。ササゲと混同されることもありますが、東北地方ではササギとも呼ばれています。

原産地はメキシコ南部から中央アメリカにかけての地域です。日本には中国を経由して渡来し、江戸時代に禅僧の隠元隆琦によって伝えられました。これがインゲンマメの名前の由来となり、未熟なサヤを若採りして食べるものをサヤインゲンと呼ぶようになりました。生育が早く、温暖な地域では年に3回収穫できることから「三度豆」とも呼ばれます。

本来の旬は夏（6 - 9月）ですが、産地をリレーしたり、施設栽培を行うことで、一年を通して市場に出回っています。良質なサヤインゲンは、サヤ全体が均一な緑色で、変色が無く、ツヤがあります。豆の形がはっきりしているものは、実が育ちすぎて硬くなっている可能性があります。

主な種類

インゲンマメには、つるが長く伸びる「つるあり種」と、つるが伸びない「つるなし種」があります。サヤインゲンの種類は、つるの有無やサヤの形で分類されます。かつてはサヤに硬い筋がある品種が主流でしたが、品種改良によって筋の無いものが多く流通しています。

主な種類:

丸ざやいんげん
つるあり種・丸サヤの代表的な品種で、「ケンタッキーワンダー」や「尺五寸」などとも呼ばれます。柔らかく、独特の香りがあり、食味が良いのが特徴です。
丸さやいんげん（わい性丸さや）
つるなしの丸サヤ種で、早採りされ、8 - 10 cm程度の長さで出荷されます。
モロッコいんげん
つるなしの平ザヤ種で、サヤが偏平で幅が広いです。花豆の若ザヤであり、柔らかくて食味が良いのが特徴です。1980年前後に日本に導入されました。
平ざやいんげん（わい性平ざや）
つるなしの平ザヤ種で、筋が少なく、まっすぐなサヤが特徴です。緑色が薄く、サヤにでこぼこが少ない傾向があります。甘味が強く、味が濃厚です。

食用

サヤインゲンを調理する際は、筋がある品種の場合、筋を取り除いてから調理します。一般的には、少量の塩を加えた熱湯で茹でて調理されますが、茹ですぎると色褪せて水っぽくなり、風味が損なわれるため注意が必要です。茹でた後は、ザルに上げて手早く冷ますか、冷水に取る場合は素早く水気を切ることで、鮮やかな緑色を保つことができます。短時間で加熱することで、栄養の損失を抑え、食感と特有の甘味を生かすことができます。茹でたサヤインゲンは、和え物、お浸し、サラダなどに利用したり、天ぷらや炒め物などにも適しています。

サヤインゲンは、野菜と豆類の栄養的な特徴を兼ね備えた緑黄色野菜です。β-カロテン、ビタミンB群・ビタミンC、食物繊維などを豊富に含んでいます。サヤにはタンパク質やアスパラギン酸、必須アミノ酸が含まれており、豆の部分にはタンパク質の他、デンプン、糖分などが含まれています。タンパク質を構成するアミノ酸の一種であるリジンを多めに含むため、特有の旨味があります。サヤごと食べることで、これらの栄養素をバランス良く摂取でき、疲労回復や夏バテ防止などの効果が期待できます。β-カロテンの吸収を高めるためには、食用油を使った調理がおすすめです。

収穫後は時間が経つほど香りや甘味が失われていくため、新鮮なうちに食べるのが理想的です。保存する場合は、茹でてから冷蔵保存すると2 - 3日程度は保存できます。

栽培

サヤインゲンの栽培期間は4月下旬 - 7月で、春に種を播き、晩春から初夏にかけて生育し、6月下旬ごろから7月にかけて収穫できます。寒さに弱く暑さに強い性質があり、栽培適温は20 - 28度とされています。20度以下では発芽が極端に悪くなり、30度を超えるような高温下では、花が咲いても実がつきにくくなります。栽培は比較的容易ですが、連作は避ける必要があります。マメ科野菜を3 - 4年ほど作っていない日当たりの良い畑で育てると良いでしょう。根粒菌はつきますが、エンドウマメほどではないため、元肥は少々必要で、チッソ分を多めに施します。追肥は少量を与えます。直根タイプのマメ科作物であるため、移植は行いません。「つるあり種」は長く収穫でき、「つるなし種」は種まきから1か月ほどで収穫できます。生育は日光の当たり具合に大きく影響され、光が少ないと着果数が減少し、品質も低下するため、株間を広めにとって、十分に日光を当てることが大切です。

種まきは、良く耕した畑に幅70 - 180 cmほどの畝を作り、畝の両側に「つるあり種」は株間35 - 40 cm以上、「つるなし種」は30 cm以上の間隔をあけて、1か所に3 - 4粒ずつ種をまいて覆土します。覆土が浅かったり、押さえ方が足りないと、芽が正常に展開できないことがあります。適度な気温と水やりをすれば3 - 4日ほどで発芽し、間引きをしながら、最終的に本葉が4 - 5枚になるころまでに1か所に1本だけ残します。「つるあり種」は、つるが長く伸びるので、株のそばに長い支柱を立てる必要があります。通常は、草丈15 cmほどになったら、高さ1.5 mほどの合掌式の支柱を立てます。花が咲き始めるときに、株間に追肥を行い、10 - 20日ごとに継続して追肥を与えます。つるあり種では、つるの長さが2 mほどまで伸び、サヤは開花後1 - 2週間で10 cmまで伸び、少しサヤが膨らんできたころが収穫適期となります。収穫が遅れると、筋が発達してサヤも硬くなってしまうため、早めに収穫することが大切です。「つるなし種」では、種まきから30 - 50日、高さ15 - 30 cmで収穫できるようになり、生長期に支柱を立てる必要はありません。

日本国内の主な産地は、福島県、沖縄県、千葉県、茨城県などですが、生鮮品や冷凍品として中国やタイ、アメリカ、オマーンからも輸入されています。

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