サルドゥリ1世

サルドゥリ1世：ウラルトゥ王国黎明期の王

サルドゥリ1世（在位：紀元前844年頃 - 紀元前828年）は、ウラルトゥ王国で記録が明確に残る最初の王として知られています。彼の登場は、王国が統一国家として歩み始める上で重要な転換点となりました。

王国の成立とサルドゥリ1世の即位

ウラルトゥ王国の建国期に関する記録は限られていますが、紀元前9世紀初頭まで、アナトリア半島東部の高原地帯には「ナイリ」と呼ばれる部族が分立していました。アッシリア帝国の脅威が増すにつれて、これらの部族はアラマやルティプリといった指導者の下で統合され、中央集権化が進んだと考えられています。サルドゥリ1世は、ルティプリの息子として生まれ、アラマの後を継いで王位に就きました。彼は、ヴァン湖畔のトゥシュパ（現在のヴァン）を首都と定め、統一されたウラルトゥ国家の基礎を築きました。

サルドゥリ1世の碑文

1916年にロシア考古学協会によってヴァンで発掘された碑文には、サルドゥリ1世の業績が刻まれています。碑文の内容からは、彼が自らを「大王」「強い王」「世界の王」「ナイリの王」と称し、並ぶ者のない存在として、また戦を恐れぬ王として誇っていたことがうかがえます。また、彼は近隣の王たちから貢物を受け、アルニウルの町から石灰岩を運び、城壁を築いたことが記されています。この碑文は、サルドゥリ1世の権力と業績を物語る貴重な資料です。

軍事と技術の革新

サルドゥリ1世は、組織的な軍隊を編成し、ウラルトゥへの遠征を繰り返すアッシリア帝国に対抗しました。アラマの時代以降、ウラルトゥはアッシリアの軍事組織や政治システムを模倣していましたが、サルドゥリ1世の時代には、武器が青銅から鉄へと置き換えられ、軍事力の強化が図られました。また、碑文などで初めて楔形文字によるウラルトゥ語の筆記が行われるようになりました。当初は簡略化されたアッシリア語が用いられていましたが、これはウラルトゥ独自の文化の発展を示すものでした。

まとめ

サルドゥリ1世は、ウラルトゥ王国を統一し、国家としての基礎を築いた重要な王です。彼の軍事力強化と技術革新は、王国を強国へと押し上げました。また、楔形文字による記録の開始は、ウラルトゥの文化的な発展を示すものです。サルドゥリ1世の治世は、ウラルトゥ王国の歴史において、特筆すべき時代と言えるでしょう。

参考文献

Пиотровский Б. Б. Ванское царство (Урарту), Издательство Восточной литературы, Москва, 1959
（邦訳）『埋もれた古代王国の謎 幻の国ウラルトゥを探る』（ボリス・ボリソヴィッチ・ピオトロフスキー著、加藤九祚訳、岩波書店） ISBN 9784000001601 (4000001604)
* Меликишвили Г. А. Урартские клинообразные надписи, Издательство АН СССР, Москва, 1960

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