サルマ (聖書)

サルマ（ヘブライ語: שַׂלְמָה Śalmāh, ギリシア語: σαλμων）またはサルモン（ヘブライ語: שַׂלְמוֹן Śalmōn）は、旧約聖書および新約聖書に登場する重要な人物です。

生涯と家族

サルマは、ナフションの子として生まれました。ナフションは、出エジプトの際にイスラエルの民を率いたユダ族の首長であり、『民数記』や『歴代誌』にその名が記されています。サルマの妻は、エリコの娼婦であったとされるラハブであり、二人の間にはボアズが生まれました。ボアズは、ルツ記に登場する重要な人物であり、ダビデ王の曾祖父にあたります。したがって、サルマはダビデ王の高祖父ということになります。

サルマに関する記述は、『歴代誌上』2章10-11節、『ルツ記』4章20-21節、『マタイによる福音書』1章4-5節、『ルカによる福音書』3章32節にそれぞれ見られます。

時代背景

父であるナフションは、出エジプト後、モーセと共に荒野を旅したイスラエルの民の一員であり、ユダ族の指導者でした。このため、サルマはおそらくヨシュアと同世代で、約束の地カナンに到達した世代の一人であったと考えられます。当時、イスラエル人はエジプトを脱出し、長きにわたる荒野での旅を経て、約束の地への入植を果たそうとしていました。サルマは、その重要な転換期に生きた人物の一人でした。

ラハブとの結婚

サルマとラハブとの結婚は、旧約聖書には直接的に言及されていません。しかし、『ヨシュア記』では、エリコ攻略後にラハブが「今日までイスラエルのうちに住んでいる」と述べられています。ラハブは、エリコでスパイとして送り込まれたイスラエル人を匿い、その後のエリコ陥落において、彼女自身と家族が救われた人物です。彼女の信仰と勇気は、聖書の中で特筆されるべき出来事として語り継がれています。サルマとラハブの結婚は、異邦人であるラハブがイスラエルの民に迎え入れられた象徴的な出来事であり、神の救いの計画における重要な一歩であったと考えられます。

聖書における意義

サルマは、聖書の系図において、ダビデ王の先祖として重要な位置を占めています。彼の存在は、旧約聖書と新約聖書を繋ぐ架け橋となり、神の救済計画における継承を象徴しています。特に、ラハブとの結婚を通じて、異邦人が神の民の一部となる可能性を示唆しており、その後のキリスト教の教えにも影響を与えています。

サルマの生涯は、聖書の物語の中で、名祖を持たない一人の人物として、歴史的な繋がりと信仰の継承を示す重要な例として位置づけられています。彼の物語は、神が特定の民族だけでなく、すべての人々を救済する計画を持っていることを示唆しており、私たちに希望と信仰のメッセージを伝えていると言えるでしょう。

参考文献

• - 『聖書 [口語] 』日本聖書協会、1955年
• - 『聖書 [新共同訳] 』日本聖書協会、1987年

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