サレ

モロッコの古都サレ：歴史と文化が息づく街

サレは、モロッコの首都ラバトとブー・レグレグ川を挟んで隣接する都市です。この二つの都市は、古くから双子都市として発展してきました。サレは、その豊かな歴史と文化、そして美しい景観で、訪れる人々を魅了し続けています。

歴史

サレの歴史は古く、フェニキア人によって最初に人が住み始めたとされています。都市の名前は、ローマ人によって建設されたシェッラーに由来すると考えられています。中世には、ヨーロッパとの交易の中心地として栄えました。

10世紀頃には、ズウナート族の独立政権が存在していましたが、1058年にムラービト朝に併合されました。その後、ムワッヒド朝、マリーン朝といった王朝の支配下に入り、15世紀には、マリーン朝の有力貴族であるワッタース家がサレを本拠地としていました。

17世紀には、スペインから亡命してきたモリスコたちがサレに住み着き、海賊として活動しました。彼らは「サレの海賊」として恐れられ、1627年頃には海賊の自治国家であるサレ共和国が成立しました。モロッコの王国は、サレから税金が納められる限り、海賊行為を黙認していたと言われています。

アラウィー朝のムーレイ・イスマーイールは、海賊たちを抑えるため、町の近くにアビド（黒人奴隷で構成される親衛隊）を配置しました。これにより、サレの独立性は徐々に低下し、手工業と宗教活動の町へと変わっていきました。ブー・レグレグ川の沈泥によって港の使用が不可能になると、サレはラバトのベッドタウンとして機能するようになりました。

経済

サレは、手工業が盛んな都市として知られています。特に陶芸は有名で、ブー・レグレグ川沿いには陶芸センターがあり、約20軒の工房が軒を連ねています。また、サレはモロッコ最大のござの産地でもあります。

その他にも、製粉、コルクの製造、魚類の缶詰の製造などが行われています。

観光

サレには、ムワッヒド朝時代の大モスクや、1260年に建設されたムリーサ門など、歴史的な建造物が数多く残っています。

ムリーサ門は、かつて内湾の水門として機能していました。1260年代には、マリーン朝の君主アブー・ユースフ・ヤアクーブによって内湾の岸辺に兵器庫が建設されました。現在、陸地となった内湾にはユダヤ教徒の居住区が置かれています。

町の正門であるアブー・ハジャ門を初めとして、市街地内の道の中央、脇道の入り口に多くの門が建てられているのが、サレの街の特徴です。

大モスクの裏側には、サレの守護聖人であるシーディー・アブドゥッラー・ブン・ハサンの廟が建立されており、祭日には多くの参拝客で賑わいます。サレの海賊や冒険者は、航海の安全を祈願してアブドゥッラー・ブン・ハサン廟を詣でたと言われています。

大モスクには、1341年にマリーン朝のアブー・アルハサン・アリーによって建設されたマドラサ（神学校）が隣接しており、その美しい建物は高く評価されています。アブドゥッラー・ブン・ハサン廟以外にも、シーディー・アハメッド・ハッジ廟やシーディー・アハメッド・ブン・アシール廟など、聖者（スーフィー）にまつわる建築物が数多く存在します。アハメッド・ブン・アシール廟には、精神病の治癒を祈願する参拝客が多く訪れます。

1260年には、カスティーリャ王国のアルフォンソ10世によってサレの城壁が破壊されましたが、再度の攻撃に備えて新たに建設された城壁が町を取り囲んでいます。城壁を再建したマリーン朝の王アブー・ユースフ・ヤアクーブは、その内側にマドラサやザーウィヤ（修行者のための修養所）を建設しました。

交通

サレには、以下の交通機関があります。

空港: ラバト＝サレ空港
鉄道: サレ・ヴィル駅、サレ・タブリクト駅
* 路面電車: ラバト＝サレ市電

サレは、その豊かな歴史と文化、そして美しい景観で、訪れる人々を魅了する都市です。モロッコを訪れる際には、ぜひサレにも足を運んでみてください。

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