アブー・アルハサン・アリー

アブー・アルハサン・アリー：マリーン朝の隆盛と文化を築いたスルタン

アブー・アルハサン・アリー（1297年 - 1351年）は、マリーン朝の第11代スルタンとして、1331年から1348年まで在位しました。父はアブー・サイード・ウトマーン2世、母はエチオピア出身であり、その肌の色から「モロッコの黒いスルターン」として知られています。

生涯

即位前

父の存命中にはフェスの守りを固め、1331年に父が亡くなるとスルタン位を継承。ハフス朝との関係を深めるため、アブー・バクルの娘と結婚しました。

アルジェリア西部の制圧

1333年、グラナダのナスル朝からの要請に応じ、イベリア半島のアルヘシラスへ軍を派遣。ジブラルタルを奪還するなどの軍事的功績を挙げました。その後、ハフス朝の要請を受け、ザイヤーン朝との戦いにも介入。1337年には首都トレムセンを陥落させ、アルジェリア西部をマリーン朝の支配下に置きました。

イベリア進出の挫折

1339年、ナスル朝からの援軍要請を受け、カスティーリャ王国と戦いますが、1340年のサラード川の戦いで敗北。イベリア半島での支配を確立することはできませんでした。

王朝最大版図の実現と崩壊

1346年、ハフス朝の内紛に乗じてチュニスを占領。マリーン朝はモロッコからチュニジアにわたる広大な地域を支配し、ムワッヒド朝に匹敵する大国となりました。しかし、その支配は長くは続かず、1348年にはアラブ遊牧民との戦いに敗れ、領土は急速に縮小しました。

I.フルベクは、マリーン朝の急速な崩壊の原因として、人材と物資の分散、部族主義と地域主義、財政負担、国内統制の不足を指摘しています。

息子との戦い

フェスでは、アブー・アルハサンの戦死という偽の報告を受け、息子のアブー・イナーンがスルタンを宣言。内戦状態となります。敗北を重ねたアブー・アルハサンは、最終的に息子への譲位を認めざるを得ませんでした。

1351年5月24日、アトラス山中で病死。その遺体はアブー・イナーンによって手厚く葬られました。

文化事業

アブー・アルハサンは、軍事的な才能だけでなく、文化人としての側面も持ち合わせていました。フェスにアッタラーン・メデルサを建設した他、エッ・サハーリジ・メデルサや王家の霊廟などの建設も手がけました。また、征服地においてもモスクを建設するなど、文化的な事業を積極的に推進しました。

チュニスへの遠征には学者たちを帯同させましたが、1348年の海難事故で多くが命を落とすという悲劇も起きました。

アブー・アルハサンは、マリーン朝の最盛期を築き上げたスルタンとして、その名 voice に残る人物です。

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