サワ (セルビア大主教)

聖サワ：セルビア正教会の守護聖人

聖サワ（セルビア語: Свети Сава, Sveti Sava; 1174年頃 – 1236年1月14日）は、セルビア正教会の初代大主教であり、正教会における重要な聖人です。セルビアでは最も敬愛される人物であり、その生涯はセルビアの歴史と文化に深く根ざしています。日本正教会では「セルビヤの大主教聖サワ」と表記されますが、「聖サヴァ」とも呼ばれることもあります。

生涯

誕生から修道誓願まで

聖サワは、ステファン・ネマニャの息子として、ブルガリアのタルノヴォで生まれました。俗名はラストゥコといい、3人兄弟の末っ子でした。温和で穏やかな性格で読書を好み、他の貴族のように遊ぶことを好む兄たちとは対照的でした。

15歳でヘルツェゴビナの行政を任されますが、政治には全く興味がなく、神への献身を願っていました。アトス山の修道士たちが父ステファン・ネマニャに財政支援を求めた際、その修道院の素晴らしさに感銘を受けたラストゥコは、密かにアトス山へ渡り、聖パンテレイモン修道院で修道士サワとなりました。父は息子を連れ戻そうと兵を派遣しましたが、サワはすでに修道誓願を終えていました。

サワは修道院で謙虚に祈りと斎に励み、読書に勤しみました。彼の献身的な姿勢は、周囲の人々に深い感銘を与えました。

父とのヒランダル修道院設立

やがて、父ステファン・ネマニャも息子の影響を受け、修道士シメオンとして修道生活を送るようになりました。親子はアトス山にヒランダル修道院を設立し、セルビア正教会にとって重要な修道院として発展させました。ヒランダル修道院は、セルビアの教育と文化の中心地となり、多くの翻訳や著述、イコン制作が行われました。また、若い正教徒たちが学び、セルビア各地に派遣される司祭たちを輩出しました。

兄弟の内戦調停

父の死後、セルビアでは兄弟間で跡目争いが勃発し、国家は危機に瀕していました。ステファン・ネマニッチは、サワに父シメオンの不朽体を携えて帰国するよう要請しました。サワはアトス山から父の不朽体を持って帰国し、兄弟の仲裁を行い内戦を終結させました。これにより、セルビアは平和を取り戻し、ステファン・ネマニッチは後にセルビア初代国王となりました。

セルビア正教会の成立と永眠

父シメオンの不朽体はストゥデニツァ修道院に納められ、サワは同修道院の指導者として多くの修道士を教育しました。サワは教会の組織化を進め、修道士たちを各地に派遣しました。また、人里離れた庵に籠り、精神力を高めることもありました。

サワは、セルビア正教会の独立を目指し、皇帝とコンスタンディヌーポリ総主教庁に働きかけました。その結果、セルビア正教会は独立を認められ、初代大主教にサワが選ばれました。サワは、セルビア正教会の組織を整え、兄ステファン・ネマニッチに戴冠を行い、多くのセルビア人主教を叙任しました。また、宗教書の翻訳や父の伝記である『聖シメオン伝説』を執筆し、セルビア文語の発展に貢献しました。

1233年に大主教を辞任し、東方へ旅立ちました。各地でセルビア人巡礼者のための宿泊施設を設け、彼らの受け入れを手配しました。1236年、エルサレム巡礼からの帰路、タルノヴォで肺炎を患い、そのまま永眠しました。

永眠後

サワは永眠後、聖人として列聖され、父シメオンも共に列聖されました。当初、ブルガリア皇帝はサワの遺体をブルガリアに留めようとしましたが、サワの甥であるセルビア王ヴラディスラヴが尽力し、1237年にセルビアへ移されました。サワの不朽体は多くのセルビア人正教徒から崇敬を集めましたが、オスマン帝国支配下の1594年に不朽体は焼却されてしまいました。

しかし、その焼却は崇敬を止めることはできませんでした。サワはセルビアの正教徒だけでなく、カトリック教徒からも尊敬を受けており、教育と啓蒙の象徴として今もなおセルビアの人々に記憶されています。

サワを記念して建てられた聖サワ大聖堂は、世界最大級の正教会の大聖堂です。聖サワの生涯は、セルビアの文化と信仰の基盤となっています。

参考文献

金原保夫「中世のバルカン」『バルカン史』収録（柴宜弘編, 世界各国史, 山川出版社, 1998年10月）
尚樹啓太郎『ビザンツ帝国史』（東海大学出版会, 1999年2月）
スティーヴン・クリソルド編『ユーゴスラヴィア史』増補版（柴宜弘、高田敏明、田中一生訳, 恒文社, 1993年3月）

関連項目

聖サワ大聖堂
セルビア十字
Category:セルビアの修道院

外部リンク

セルビア正教会ポータルサイト内のページ'>Свети Сава（セルビア語）
St. Sava I, enlightener and first archbishop of Serbia (1235)
St Sava of Serbia
LIFE OF OUR HOLY FATHER SAVA I Enlightener and First Archbishop of the Serbs (+1235)

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