サンダー・ザボー

サンダー・ザボー（本名シャーンドル・サボー）は、1906年にハンガリーの首都ブダペストで生を受けた伝説的なプロレスラーです。強豪ひしめくアメリカのマット界で、長きにわたりトップ戦線で活躍しました。そのキャリアは1966年10月16日、60歳でこの世を去るまで続きました。

ザボーはまずアマチュアレスリングで才能を開花させ、1928年にはハンガリー選手権で頂点に立ちました。プロ転向後の初期には、1931年から翌年にかけて、ニューヨークで日本の先駆者である三宅タロー（三宅多留次）と異種格闘技戦に近い形式で数度にわたり拳を交わしています。その後、アメリカ西海岸、特にカリフォルニア地区を活動の拠点と定めました。1937年1月1日には、オークランドにてNWAパシフィック・コースト・ヘビー級王座（サンフランシスコ版）を初めて獲得。このタイトルには、1951年までの間に実に13回も戴冠しており、彼がこの地区の絶対的なエースであったことを物語っています。同年11月にはロサンゼルスでカリフォルニア州ヘビー級王座も手に入れ、これは翌1938年11月まで保持しました。

ザボーのキャリアにおいて最も特筆すべきは、プロレス界の最高峰の一つであるNWA世界ヘビー級王座の獲得でしょう。1941年6月5日、ミズーリ州セントルイスで行われたタイトルマッチで、当時の強豪ブロンコ・ナグルスキーを破り、統一前のアソシエーション時代における第30代王者となりました。さらに、1944年3月にはボストンにてユーボン・ロバートからモントリオール地区の権威あるタイトル、MAC世界ヘビー級王座を奪取。翌1945年4月には、ボストン版のAWA世界ヘビー級王座も獲得するなど、各地で主要タイトルを総なめにしました。

1950年代に入っても、ザボーは衰えを知らず、キャリア初期からの主戦場であるカリフォルニア地区を中心に精力的に活動しました。タッグプレイヤーとしても傑出し、1952年2月にはロン・エチソンとのコンビでシャープ兄弟からNWA世界タッグ王座（サンフランシスコ版）を奪取。同年5月にはビート・ザ・チャンプTV王座を獲得し、テレビ時代到来にも対応しました。1954年にはロサンゼルスでウイルバー・スナイダーやボボ・ブラジルといった強豪と組んでNWAインターナショナルTVタッグ王座を何度も獲得するなど、タッグ戦線でも重要な位置を占めました。この時期には、ロサンゼルスで日系レスラーのグレート東郷&ハロルド坂田組と頻繁に対戦し、また1957年4月にはサンフランシスコで海外修行中の豊登とシングルマッチで顔を合わせています。

サンダー・ザボーの名前は、日本のプロレスファンにとっても忘れられない存在です。1963年4月、彼は日本プロレスが開催した第5回ワールド大リーグ戦に参戦するため来日しました。キラー・コワルスキーやパット・オコーナーら名だたる強豪と共に、日本の英雄・力道山が生涯最後に出場したこの大会に名を連ねたのです。既に全盛期を過ぎていたため、大会全体での成績は振るいませんでしたが、公式戦では当時まだ若手だった猪木完至（後のアントニオ猪木）と対戦。ザボーは得意技のフロント・ネックチャンスリー・ドロップで猪木を下しました。この試合で受けた技は、猪木が後に自身のフィニッシュホールドの一つである「アントニオ・ドライバー」として昇華させるきっかけとなったと言われています。

ザボーは、相手を担ぎ上げて後方に落とす変形ブレーンバスターのような「フロント・ネックチャンスリー・ドロップ」、相手を振り回す「デス・スイング」、そして関節技の「ウイングロック・スープレックス」といった多彩な技を得意としました。その長いキャリアを通じて、彼はNWA世界ヘビー級王座を含む数多くのタイトルを獲得しました。中でもNWAパシフィック・コースト・ヘビー級王座の13回戴冠は驚異的な記録です。その功績は後世にも称えられ、2000年にはレスリング・オブザーバー誌の殿堂入りを果たしています。

サンダー・ザボーは、プロレス史に名を刻む偉大なレスラーとして、1966年10月16日に60歳で波乱の生涯を閉じました。

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