サーサーン・クシャーナ戦争

サーサーン・クシャーナ戦争

サーサーン・クシャーナ戦争は、サーサーン朝とクシャーナ朝の間で発生した一連の戦争を指します。この戦いは、サーサーン朝の東方拡大とクシャーナ朝の衰退を招きました。

背景

サーサーン朝は、初代皇帝アルダシール1世の統治下で、アルサケス朝パルティアを滅ぼし成立しました。パルティアは、クシャーナ朝の拡大により、重要な属州バクトリアの大部分を失っていました。サーサーン朝は、パルティアが失った領土の奪還と更なる拡大を目指し、クシャーナ朝との軍事衝突に至りました。

戦闘

第一次サーサーン・クシャーナ戦争

アルダシール1世は、サーサーン朝を東方へ拡大しようと試み、クシャーナ朝と軍事衝突しました。史料の不足から詳細は不明ですが、アルダシール1世は、サカスターン、ゴルガーン、ホラーサーン、メルヴ、バルフ、ホラズムなどを占領したとされています。碑文によると、これらの地域を支配していた王たちがアルダシール1世に服従したとされていますが、貨幣学的な根拠からは、クシャーナ朝がシャープール1世に服従した可能性が高いです。

第二次サーサーン・クシャーナ戦争

アルダシール1世の死後、息子のシャープール1世が単独統治を開始しました。シャープール1世は、クシャーナ朝とサカスターンに対するサーサーン朝の権威を確立するため、242年にコラスミアを占領し、251年にはクシャーナ朝の王都プルシャプラを攻略しました。これにより、クシャーナ朝は事実上滅亡し、旧クシャーナ朝領はサーサーン朝の支配下に入りました。シャープール1世は、帝国内の多民族共生を反映し、称号を「イランと非イラン人の諸王の王」へと変更しました。ラグ・イ・ビビの岩のレリーフやナクシェ・ロスタムのレリーフからも、サーサーン朝の支配がガンダーラ地方の中心地であるペシャーワルにまで及んでいたことが確認できます。

第三次サーサーン・クシャーナ戦争

クシャーノ・サーサーン朝は、サーサーン朝から一部領土を奪還し、広範囲の地域を支配していました。325年以降、シャープール2世はクシャーノ・サーサーン朝への遠征を度々行い、領域の南部を奪還しました。350年頃、キダーラ朝によってクシャーノ・サーサーン朝が壊滅状態に陥ると、サーサーン朝はキダーラの傀儡となったクシャーノ・サーサーン朝に対して優位に立ちました。サーサーン朝の支配はインダス川以東にも拡大し、伝説ではシンドまで及んだとされています。

影響

一連の戦争の結果、サーサーン朝は東方への勢力を拡大し、帝国の軍事力を示しました。併合された旧クシャーナ朝領は反乱を起こし、クシャーノ・サーサーン朝として分裂しました。クシャーナ朝は、パンジャーブを拠点として「小クシャーナ朝」として存続しましたが、4世紀半ばにはグプタ朝に征服されました。アラーハーバードの石柱碑には、クシャーナ朝最後の統治者がサムドラグプタに降伏し、支配下に入ったことが刻まれています。

この戦争は、サーサーン朝の東方拡大とクシャーナ朝の衰退を決定づける重要な出来事となりました。

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