サーサーン内乱 (628年‐632年)

サーサーン朝内乱：王位を巡る権力闘争と王朝の衰退

628年、サーサーン朝のホスロー2世が亡くなると、王位を巡り皇族や貴族の間で激しい内乱が勃発しました。この内乱は、統一された政権が存在しない状態が続いたため、「サーサーン朝空位時代」とも呼ばれています。

内乱の背景

ホスロー2世の治世末期、アスパーフバド家、ミフラーン家などの有力貴族たちがホスロー2世を転覆させました。その後、ホスロー2世の息子であるカワード2世が王位に就きましたが、わずか半年で疫病により死去。幼いアルダシール3世が即位しますが、実権は宰相マードゥー・グシュナースプが握りました。こうした権力闘争が、内乱へと発展する要因となりました。

内乱の経過

アルダシール3世の治世下で、軍司令官シャフルバラーズがクーデターを企て、アルダシール3世らを処刑。しかし、シャフルバラーズもまた暗殺され、その後もボーラーン、アーザルミードゥフトといった王女たちが相次いで擁立されるものの、短期間で退位や殺害されるなど、王位は目まぐるしく入れ替わりました。

各地の貴族や軍閥も独自の勢力を拡大し、中央政権の統制は著しく低下しました。ファールフ・ホルミズドは「イランの民の指導者」を自称し、独自の硬貨を発行。各地で反乱が頻発し、サーサーン朝の国力は衰退の一途を辿りました。

内乱の終結とその後

混乱の末、ホスロー2世の孫であるヤズデギルド3世が632年に即位し、一応の内乱終結を見ました。しかし、サーサーン朝の弱体化は覆い隠せず、翌年からはイスラム勢力による侵攻が始まりました。貴族たちはヤズデギルド3世への協力を拒み、各地で抵抗するも敗北。651年、ヤズデギルド3世は暗殺され、サーサーン朝は完全に滅亡しました。

内乱後、一部の貴族はイスラム勢力と同盟・離反を繰り返しながらも、独自の勢力を維持しました。ロスタム・ファーロフザードはカーディシーヤの戦いで、ペーローズ・ホスローはニハーヴァンドの戦いで戦死。ファールフザードはタバリスタンに独立勢力を築き、バーワンド朝を開きました。

サーサーン朝内乱は、王朝の衰退を決定づける出来事となりました。貴族たちの権力闘争と地方勢力の割拠は、中央集権体制を崩壊させ、イスラム勢力の侵攻を許す要因となりました。この内乱は、古代ペルシアの歴史における重要な転換点であり、その後のイランの歴史に大きな影響を与えました。

もう一度検索