ザクセン戦争 (カール大帝)

ザクセン戦争：フランク王国とザクセン人の長き戦い

ザクセン戦争は、772年から804年まで、フランク王国とザクセン人との間で繰り広げられた30年以上にわたる戦争です。フランク王国のカール大帝（カール1世）による領土拡大とキリスト教の普及が主な目的でしたが、ザクセン人の抵抗も激しく、長期戦となりました。

ザクセン人とは

ザクセン人は、古代ゲルマン民族の一つで、2世紀頃から歴史に登場します。当初は北ドイツのホルシュタイン地方に居住していましたが、徐々に勢力を拡大し、ライン川一帯まで進出しました。7世紀末には、エルベ川からエムス川にかけて広大な地域を支配する大部族へと成長しました。

ザクセン社会は、貴族、自由民、解放奴隷から構成されていましたが、貴族とそれ以外の身分との結婚は禁じられていました。また、宗教面ではキリスト教を受け入れず、伝統的な多神教を信仰していました。

戦争の背景

フランク王国は、メロヴィング朝時代末期からザクセン人への侵攻を開始しました。領土拡張とキリスト教の布教が目的でしたが、ザクセン人は頑強に抵抗しました。フランク王国は、ライン川中流域からマイン川にかけてドイツ植民を進め、「オストフランケン（東フランク）」と呼ばれる地域を形成し、ドイツ支配の拠点としました。

戦争の経過

772年、カール1世はザクセンの聖樹イルミンスルを破壊し、本格的なザクセン征服を開始しました。しかし、ザクセン人の抵抗は激しく、カール大帝は10回以上にもわたる遠征を繰り返しました。

初期には、フランク王国の軍事力に屈し、多くのザクセン貴族がフランク王国に降伏しました。しかし、ザクセンの王ヴィドゥキントは、デーン人の国（デンマーク）に逃れ、フランク王国に対抗する動きを続けました。

782年、ヴィドゥキントはザクセンに帰還し、フランク軍を破る戦果を挙げましたが、カール大帝の反撃により、再び劣勢に立たされました。カール大帝は、782年にヴェーザー川支流アラー川の畔で、4,500人ものザクセン人捕虜を虐殺しました。

785年、カール大帝はヴィドゥキントに降伏とキリスト教への改宗を呼びかけました。ヴィドゥキントはこれを受け入れ、洗礼を受けましたが、その後、ザクセン戦争には参加せず、修道院で隠遁生活を送りました。

797年、カール大帝はキリスト教秩序を尊重しない者を死罪とする法令を改めて罰金刑とし、ザクセンへの懐柔政策へと転換しました。804年、カール大帝はザクセン人を完全に服属させ、戦争は終結しました。

戦争の結果

ザクセン戦争の結果、ザクセン人の国家はフランク王国の版図の一部となり、フランク人はザクセンに移民し、キリスト教（カトリック）が布教されました。ザクセン人の社会組織は温存され、有力者が官職に任命されました。

この戦争は、ヨーロッパのキリスト教文明の成立において重要な意味を持ちました。フランク王国は、ザクセンを征服したことにより、ヨーロッパ大陸の大部分を支配する力を得ました。

まとめ

ザクセン戦争は、フランク王国によるザクセン征服という、中世ヨーロッパ史において重要な出来事の一つです。この戦争を通して、フランク王国は領土を拡大し、キリスト教を広め、ヨーロッパ世界の形成に大きく貢献しました。ザクセン人の抵抗もまた、歴史に名を刻むものとなりました。

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