シグナス NG-10

NG-10ミッション

NG-10ミッションは、旧称OA-10Eとしても知られ、ノースロップ・グラマン社（買収前の名称はオービタルATK社）が運用した国際宇宙ステーション（ISS）への無人宇宙補給フライトです。これは、アメリカ航空宇宙局（NASA）との商業補給サービス（CRS）契約に基づき実施された、ISSへ向かう10回目の補給ミッションであり、シグナス宇宙船としては通算11回目の打ち上げとなりました。このミッションは2018年11月17日 09:01:31 UTCに、バージニア州のワロップス島にある中部大西洋地域宇宙基地（MARS）から打ち上げられました。NG-10ミッションは、その後の商業補給サービスフェーズ2（CRS-2）契約が発効するまでの間、ISSへ物資を継続的に供給するために必要な延長計画の一部として位置づけられています。

背景と経緯

オービタルATK社（現ノースロップ・グラフィカル・イノベーション・システムズ）とNASAは、国際宇宙ステーションへの商業貨物輸送サービスを提供するための新しい宇宙輸送システムを共同で開発しました。商業軌道輸送サービス（COTS）プログラムの下で、オービタルATK社は中型打ち上げロケットであるアンタレスと、タレス・アレーニア・スペース社が製造した与圧貨物モジュール（PCM）、そしてオービタルGEOStar衛星バスを基にしたサービスモジュールを組み合わせた先進的な宇宙船シグナスの設計、製造、組立てを担当しました。ノースロップ・グラマン社は2018年6月にオービタルATK社を買収し、その宇宙システム部門はノースロップ・グラマン・イノベーション・システムズとなりました。

2013年9月のCOTS実証飛行の成功後、オービタルATK社はCRS契約に基づき、2014年中に2回のISS補給ミッションを実施しました。しかし、3回目の打ち上げであったシグナス CRS Orb-3ミッションは、アンタレス130ロケットが離陸直後に爆発するという失敗に見舞われました。この事故を受けて、同社はアンタレスロケットの旧型である100シリーズの使用を中止し、新しい推進システムとしてより信頼性と性能の高いRD-181エンジンを第1段に搭載したアンタレス230シリーズの開発・導入を急ぎました。

アンタレス230の開発が完了するまでの間、同社はISSへの補給を途切れさせないために、2015年12月のCRS OA-4および2016年3月のCRS OA-6ミッションについて、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス（ULA）と契約し、フロリダ州のケープ・カナベラルから2機のアトラスVロケットを使用して打ち上げを実施しました。その後、オービタルATK社は2016年の第1四半期にCRS OA-5、第2四半期にCRS OA-6（ただしこれはアトラスVによるOA-6とは別のシグナスミッション）、および第4四半期にCRS OA-7の3回のシグナスミッションを計画しました。これらのミッションでは、新型のアンタレス230ロケットが2回、前述のアトラスVの2機目が1回使用され、これによりオービタルATK社は当初のCRS契約で定められた貨物輸送義務を達成することができました。

NG-10として実施されたこのミッションは、CRS-2契約発効までの期間を埋めるための延長計画の一環でした。当初OA-10Eと呼ばれていたのは、アンタレス230やアトラスVといったより強力なロケットへの切り替えにより、Orb-3の失敗を含めてもわずか7回のフライトで当初の契約分が輸送できたため、このミッションが「Extension」（拡張・延長）であることを示すために「E」が付加されていたためです。ノースロップ・グラマンによるオービタルATKの買収後、ミッション名もOA-10EからNG-10に変更されました。

シグナス宇宙船の製造と組立ては、バージニア州ダレスの施設で行われました。与圧貨物モジュールとサービスモジュールの結合は打ち上げ複合施設で行われ、ミッションの運用はバージニア州ダレスとテキサス州ヒューストンの管制センターから指揮されました。

宇宙船「ジョン・ヤング」

NG-10ミッションで使用されたシグナス宇宙船は、ノースロップ・グラマン社の前身であるオービタルATK社の伝統に倣い、アメリカの著名な宇宙飛行士の名前が付けられました。このシグナスは、「宇宙船ジョン・ヤング」と命名されました。ジョン・ヤング氏は、NASAの主要な宇宙プログラムであるジェミニ計画、アポロ計画、スペースシャトル計画の全てでそれぞれ2回ずつ飛行した、唯一の人物として知られています。ヤング氏は、このミッションが実施された2018年に87歳で逝去しました。

貨物と特別なペイロード

NG-10ミッションでシグナス宇宙船がISSへ運んだ貨物の総重量は、3,350 kg（約7,390ポンド）でした。この積荷は、ISSに滞在するクルーが必要とする補給品が1,141 kg、様々な科学研究プロジェクトに使用される機材が1,044 kg、船外活動（EVA）に用いる装備が31 kg、宇宙船本体の維持管理や修理に必要な資材が942 kg、そしてコンピューター関連資材が115 kgという内訳でした。

このミッションの特別なペイロードとして注目されたのが、「SEOPS スリングショット展開システム」です。NG-10は、このキューブサット展開システムを宇宙空間で初めて飛行させるミッションとなりました。スリングショットシステムおよび放出される予定だったキューブサット自体は、先行してスペースX社のCRS-16ミッションによってISSに運ばれていました。NG-10のシグナス宇宙船がISSにドッキング（係留）している間に、第58次長期滞在のクルーによって、このスリングショットシステムがシグナスの外部に取り付けられました。

シグナスがISSから分離した後、宇宙船はISSの軌道高度（約400 km）よりも約100 km高い、およそ500 kmの軌道へ上昇しました。この高軌道から、スリングショットシステムを用いて2機のキューブサット（ダビデおよびゴリアテII量子レーダー衛星）が放出されました。これらの衛星は、放出された軌道高度から見て、少なくとも2年間は軌道に留まることが期待されていました。さらに、スリングショットシステムには、シグナス宇宙船の電力、姿勢制御、通信といった機能を活用して、搭載したペイロードを長期にわたってホストする能力を実証するための試験的なペイロードも含まれていました。

ミッションの終焉

キューブサットの放出と、スリングショットシステムの搭載ペイロード実験が完了した後、ノースロップ・グラマン社の管制官はシグナス宇宙船に対する最終的な指令を発出しました。2019年2月25日、シグナス宇宙船は南太平洋上空で大気圏に再突入する軌道に誘導され、その過程で破壊され、ミッションを終了しました。

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