シグナス NG-13

NG-13ミッション

NG-13ミッションは、ノースロップ・グラマン社が運用する無人宇宙補給機シグナスによる、国際宇宙ステーション（ISS）への重要なフライトです。以前はOA-13として知られていましたが、ノースロップ・グラマンによるオービタルATKの買収に伴い名称が変更されました。これはシグナス宇宙船にとって14回目の飛行であり、NASAとの商業補給サービス（CRS）契約に基づいたISSへの13回目の物資輸送任務にあたります。特に、商業補給サービスフェーズ2（CRS-2）契約下においては、2回目のフライトとして位置づけられています。

この商業宇宙輸送システムは、NASAの商業軌道輸送サービス（COTS）計画に基づき、オービタルATK（現ノースロップ・グラディアン）とNASAが協力して開発しました。打ち上げには中型ロケットであるアンタレスが用いられ、その第1段構造はウクライナの専門家から提供された技術を基に設計・製造されました。シグナス宇宙船自体は、ノースロップ・グラマンのGEOStar衛星バスに、産業パートナーであるタレス・アレーニア・スペースが供給する高度な与圧貨物モジュール（PCM）を結合した、高い機動性を持つ設計となっています。ノースロップ・グラマンは2018年6月にオービタルATKを取得し、社名をノースロップ・グラマン・イノベーション・システムズに変更しています。

ミッションの準備と打ち上げ

NG-13ミッションに使用されたシグナス宇宙船は、バージニア州ダレスで製造・組み立てが行われました。サービスモジュールと与圧貨物モジュールの統合は打ち上げ施設で実施され、ミッションの運用はバージニア州ダレスとテキサス州ヒューストンの管制センターから遠隔で行われました。オービタルATKの買収後、ミッションの名称はOA-13からNG-13へと公式に変更されています。打ち上げに使用されるアンタレスロケットは、水平統合施設で約6ヶ月間をかけて組み立てや加工が施されました。

当初、NG-13の打ち上げは2020年2月9日を予定していました。しかし、カウントダウン残り3分の時点で打ち上げ台の安定器に技術的な問題が発生したため、直前で中止となりました。続く2回目の打ち上げ試みは2020年2月14日に行われましたが、今度はカウントダウンが約90分を残した時点で、高層の強風が予測されたために再び延期されました。度重なる遅延を経て、シグナス NG-13は2020年2月15日 20:21:01 UTCに、技術的な問題や天候の影響もなく、無事に打ち上げに成功しました。

ISSでの運用

打ち上げられたシグナス宇宙船は、2020年2月20日 09:05 UTCにISSへ到着しました。ISSに滞在していた第62次長期滞在クルーの一員である宇宙飛行士アンドリュー・モーガンが、ISSのロボットアーム（カナダアーム2）を用いてシグナス宇宙船を捕捉しました。捕捉後、地上管制の指示により、シグナスはステーションのユニティモジュールの地球側ポートに結合されました。シグナス宇宙船はその後、2020年5月11日まで約3ヶ月間、ISSに結合された状態で滞在し、貨物の搬入や回収物の搭載などが行われました。

搭載貨物

NG-13ミッションでは、総計3,377 kg（7,445 lb）の貨物がシグナス宇宙船に搭載されました。この貨物はISSでの科学研究、クルーの生活支援、宇宙船の運用に必要なハードウェアなど多岐にわたります。

搭載貨物の主な内訳は以下の通りです。

宇宙船ハードウェア: 1,588 kg
科学実験機器: 966 kg
乗組員補給品: 712 kg
船外活動（EVA）装備: 81 kg
コンピューター関連資材: 30 kg
合計: 3,377 kg

主なハードウェアとしては、欧州のコロンバスモジュールの通信能力を向上させる「コロンバスKaバンド通信ターミナル（COLKa）」、ISS内の空気成分を監視する「主要成分分析装置（MCA）」の予備品、船外活動で使用される高解像度カメラの代替品などが含まれていました。また、クルー用の水タンク9個や、船外活動用の酸素補充に使用される窒素/酸素再充填システム（NORS）タンク、低温での貨物輸送を可能にするPOLARフライトアセンブリなども運ばれました。

科学実験分野では、将来の宇宙探査や地球上の技術に貢献する様々な研究サンプルや装置が届けられました。組織や細胞培養のための新しい施設である「モバイル・スペースラボ」や、小型走査型電子顕微鏡の初の宇宙実証となる「Mochii」が搭載されました。さらに、微小重力下での火炎の挙動を詳細に調査する一連の実験の4番目となる「宇宙船火災実験IV（Saffire-IV）」や、分子レベルで骨芽細胞を研究し骨量減少の理解を深める「OsteoOmics」、宇宙環境がバクテリオファージに与える影響を調べる「ファージ進化」などの研究が行われました。

複数のキューブサットも搭載されており、ISS離脱後に放出が計画されていました。「Red-Eye 2」、「DeMI」、「TechEdSat 10」などが含まれます。特に通信業者向けのCubeSatである「Lynk」の1機は、2020年5月13日にシグナスに搭載された展開器から放出されました。

ミッション終了と廃棄

ISSから離脱した後、シグナスNG-13は軌道上で「サファイアV実験」を実施しました。これはISS内で行われたSaffireシリーズとは異なり、シグナス宇宙船の与圧キャビン内で燃焼実験を行うものでした。実験完了後、シグナスは数トンのゴミを搭載したまま軌道を離脱する機動に入りました。2020年5月29日、シグナスNG-13は地上管制からの指令を受けて太平洋上空で大気圏に再突入し、燃え尽きました。このミッションは、シグナスの外部ペイロードキャリアのテストも兼ねていました。なお、ISSから地球の景観を撮影していた欧州の実験装置HDEVも、このミッションで地球に帰還する予定でした。

NG-13ミッションは、ISSへの継続的な補給と科学研究の機会を提供する上で、重要な役割を果たしました。また、命名されたロバート・H・ローレンスは、最初のアフリカ系アメリカ人の宇宙飛行士の一人であり、彼の功績を称えるものでした。

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