シチ川の戦い

シチ川の戦い：ウラジーミル大公国の悲劇

1238年3月4日、ロシア北東部のシチ川沿いで、ウラジーミル大公ユーリー2世率いるルーシ軍と、モンゴル帝国軍のブルンダイ率いる部隊との間で激戦が繰り広げられました。この戦いは、1237年から1240年にかけて行われたモンゴルのルーシ侵攻、特に1237年から1238年の北東ルーシ遠征において、重要な転換点となる出来事でした。

戦いの背景

1237年12月、モンゴル軍はリャザンを陥落させました。その後、1238年1月にはコロムナでルーシ連合軍を破り、ウラジーミル大公国へと侵攻を開始しました。これを受け、大公ユーリーはウラジーミルを離れ、シチ川近くの森（現在のヤロスラヴリ州北西）に新たな軍勢を集結させました。ウラジーミルには、ユーリーの家族とピョートル・オスレデュコヴィチ率いる守備隊が残されました。ユーリーは兄弟であるヤロスラフの援軍を期待していたと伝えられていますが、シチ川の戦いにヤロスラフが参加したという記録はありません。

一方、モンゴル軍は1238年2月7日にウラジーミルを占領した後、主力部隊はユーリエフ・ポリスキー、ペレスラヴリ・ザレスキーなどを攻撃、さらにトヴェリ、トルジョークへと進撃しました。ブルンダイ率いる別働隊は、大公ユーリーの甥であるユーリ－・コンスタンチノヴィチの領地であるヴォルガ川流域の都市を攻撃しました。

戦いの経緯

ウラジーミル占領から3週間後、ブルンダイ率いる別働隊は長距離の行軍を経てシチ川に到着しました。ほぼ同時に、主力部隊もトヴェリ、トルジョークの包囲戦を終え、ウグリチ方面からシチ川に接近しました。対するルーシ軍は、ドロフェイ・セミョーノヴィチ率いる3000名を除き、十分な兵力を集結させる時間はありませんでした。

1238年3月4日、シチ川で戦闘が開始されました。ルーシ軍はモンゴル軍に包囲され、壊滅的な敗北を喫しました。ほとんどの兵士が戦死するか捕虜となり、大公ユーリーも戦死、その首はモンゴル軍総司令官バトゥに送られました。ヤロスラヴリ公フセヴォロドも戦死し、捕虜となったロストフ公ヴァシリコは処刑されました。スヴャトスラフとウラジーミルは辛うじて撤退に成功しました。

戦いの結果

シチ川の戦いの敗北は、ウラジーミル大公国のモンゴルへの抵抗を完全に打ち砕きました。ウラジーミル大公国はモンゴル帝国に従属する運命を辿ることになりました。ユーリーの死後、大公位は弟のペレヤスラヴリ・ザレスキー公ヤロスラフが継承し、ウラジーミル大公国とペレヤスラヴリ・ザレスキー公国を直接統治しました。

一方、シチ川の戦いを戦ったブルンダイ率いるモンゴル軍では疫病が発生し、その戦力は弱体化しました。これは、バトゥがノヴゴロドへの進軍を断念した要因の一つと考えられています。シチ川の戦いは、モンゴルによるルーシ征服の歴史において、大きな転換点であり、悲劇的な結末となったのです。

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