シドラ湾事件 (1989年)

シドラ湾事件 (1989年)

シドラ湾事件とは、1989年1月4日に地中海南部のシドラ湾上空にて、アメリカ海軍部隊とリビア空軍との間で発生した軍事的な衝突を指します。この事件は、1981年のシドラ湾事件および1986年のリビア爆撃（エルドラドキャニオン作戦）に続くものであり、両国の緊張関係の集大成とも言えます。

事件の背景

リビアは1973年以降、シドラ湾を自国の領海と主張し、リビアの北海岸に沿って、ベンガジとミスラタを結ぶ線を領海の境界と定めました。一方、アメリカ合衆国はこの主張を広すぎるとし、国際水域としての航行の自由を主張しました。これが切っ掛けとなり、両国間の軍事的緊張が高まりました。アメリカはリビアに対して圧力をかける目的で、シドラ湾周辺で空母機動部隊による艦隊演習を行い、その結果1981年にも衝突がありました。1989年も同様に演習が行われることとなりました。

事件の実施

1989年1月4日、アメリカの空母機動部隊である「ジョン・F・ケネディ」は、リビアの北130kmに位置するクレタ島南部で演習を実施中でした。この演習に参加していた機体の中には、VA-75とVMFA(AW)-533のA-6E攻撃機があり、これらの機体をF-14A戦闘機が護衛する形で戦闘空中哨戒（CAP）が行われていました。

その際、VAW-126のE-2C早期警戒機がリビアのトブルク近郊から、リビア空軍のMiG-23戦闘機2機が離陸したと報告しました。これに対し、VF-32所属のF-14Aは南方へ向かう途中でMiG-23を発見し、無線で警告を発しましたが、MiG-23は接近を続けました。その後、F-14AのパイロットはMiG-23が武装しているのを確認し、アメリカ空母の指揮センターは敵対行動と判断して撃墜を許可しました。

F-14Aは最初にAIM-7ミサイルを発射しましたが、誘導に失敗し、続いて2発目も失敗しました。そこで、F-14Aは距離を取る形で回避行動を取り、再度接近した際にAIM-7を発射し、1機を撃墜しました。もう一機のF-14Aも続いて残るMiG-23に対し、AIM-9ミサイルを発射し、次のMiG-23も撃墜しました。リビア軍のパイロットは脱出しましたが、救助の確認は行われていません。アメリカ軍側には被害はありませんでした。

機体の種類に関する諸説

この事件の関係者間での議論は、撃墜されたリビアのMiG-23の正確な型に関するものがありました。アメリカ側は後期型のMiG-23MLであると認識していましたが、ソ連やロシアの文献によると、初期の輸出型であるMiG-23MSであったとの報告もあります。これにより、事件の解釈や評価が異なることになります。

まとめ

シドラ湾事件は、アメリカとリビアの間で続く緊張関係の象徴であり、冷戦時代の国際情勢の変化を反映した出来事でした。この事件は、軍事的衝突がどのようにして国際政治における関係に影響を与えるかという教訓を提供しており、今後の外交関係の在り方についても示唆を与えています。

もう一度検索