シド・マイヤー

シド・マイヤー：ゲーム界の巨匠

シド・マイヤー（Sid Meier）、本名シドニー・K・マイヤーは、1954年2月24日カナダ生まれのアメリカのゲーム開発者です。彼は、数々の戦略ゲームとシミュレーションゲームを制作し、その功績から「ゲーム界の巨匠」と称えられています。『シヴィライゼーション』シリーズは特に有名で、ゲーム史にその名を深く刻んでいます。

若年期と教育

カナダのオンタリオ州で生まれたマイヤーは、幼少期に家族と共にアメリカへ移住し、ミシガン州で育ちました。両親はオランダとスイスからの移民であり、そのため彼はカナダとスイスの二重国籍を有しています。ミシガン大学では、歴史と計算機科学を専攻し、1975年に計算機科学の学士号を取得しました。

キャリアの始まり

大学卒業後、マイヤーはデパートのレジスターを開発する仕事に就きました。1981年頃、彼はAtari 800を購入し、プログラミングによるゲーム制作に興味を持ち始めます。そこで、同じくゲーム開発に情熱を燃やすビル・スティーリーと出会い、共にゲーム会社を立ち上げることを決意します。

マイクロプローズの設立

1982年、マイヤーとスティーリーはマイクロプローズを創業しました。当初は『Floyd of the Jungle』のような2Dアクションゲームを制作していましたが、その後、『Hellcat Ace』、『Spitfire Ace』、『Solo Flight』、『F-15 Strike Eagle』などのフライトシミュレーションゲームで成功を収めました。これらのゲームはマイヤーがデザインとプログラミングを担当しました。

1986年以降、マイクロプローズは広告にマイヤーの名前と顔を使用するようになり、1987年にはゲームタイトルに初めてマイヤーの名前を冠した『Sid Meier's Pirates!!!』をリリースしました。このタイトルに自身の名前を入れた理由について、マイヤーは「従来のゲームとは異なる」と説明しています。スティーリーは、マイヤーの名前を冠することで、フライトシミュレーションゲームファンがこの新しいゲームに興味を持つと考えました。

この戦略は功を奏し、1992年には「マイヤーの名前は、ゲームの質を保証する」とまで評されるようになりました。ただし、マイヤーの名前がタイトルに入っていても、必ずしも彼がメインデザイナーを務めているわけではありません。『シヴィライゼーションII』はブライアン・レイノルズ、『シヴィライゼーションIII』はジェフ・ブリッグス、『シヴィライゼーションIV』はソーレン・ジョンソンが、それぞれメインデザイナーを担当しています。

『F-19 Stealth Fighter』以降、マイヤーは戦略ゲームの開発に注力しました。『シムシティ』や『エンパイア』に触発され『シド・マイヤーズ レイルロードタイクーン』を制作、そして後に彼の代表作となる『シヴィライゼーション』を生み出しました。

1990年頃、マイクロプローズのアーケードゲーム開発を巡り、マイヤーはリスクが大きいと感じ、スティーリーと意見が対立します。その結果、マイヤーはマイクロプローズの持ち分をスティーリーに売却しましたが、会社での役職は維持しました。

フィラクシス・ゲームズの設立

マイクロプローズは1991年に公開会社となり、1993年にスペクトラムホロバイトと合併しました。1996年、マイクロプローズの事業統合に伴い多くの従業員が解雇されたことに不満を抱いたマイヤーは、ジェフ・ブリッグス、ブライアン・レイノルズとともに会社を去り、1997年にフィラクシス・ゲームズを設立しました。

フィラクシスでは、マイクロプローズ時代から続く戦略ゲームの開発を継続しました。特に『シヴィライゼーション』シリーズや、『パイレーツ！』のリメイク作品などが有名です。また、1996年には、3DO向けにリアルタイム作曲・合成システム「C.P.U. Bach」を開発しました。

1995年、『ネクストジェネレーション』誌は、マイヤーを「1995年のゲーム業界で最も重要な75人」の一人に選出しました。フィラクシスの社員によると、マイヤーは1996年頃から自分専用のゲームエンジンを開発し続けており、それを用いてゲームのプロトタイプを制作しているものの、その詳細は誰にも明かしていません。

2000年代初頭、恐竜をテーマにしたゲームを開発していましたが、2001年に開発を中止しました。その理由として、様々なアプローチを試みたものの、このコンセプトを十分に面白いものにすることができなかったと説明しています。しかし、マイヤーは恐竜ゲームへの情熱を捨てておらず、機会があれば再挑戦したいと語っています。

2005年、テイクツー・インタラクティブがフィラクシスを買収し、2006年にはPopTop Softwareと合併し、マイヤーがその統括を務めることになりました。

2020年9月、マイヤーは自伝『Sid Meier's Memoir!: A Life in Computer Games』を出版し、自身のゲーム開発人生を振り返りました。

開発スタイル

マイヤーは、「シミュレーションの『楽しい部分』を重視し、それ以外は捨てる」という開発理念を持っています。また、「楽しさという捉えどころのないものを発見することが、デザインの最も難しい部分だ」とも語っています。彼のゲームでは、暴力的な時代や場所がテーマになることが多いですが、流血表現は一切ありません。これは、ゲームを面白くするために何度もプレイし、デザインを改良し続けるという彼の徹底した姿勢によるものです。

私生活

マイヤーは、現在の妻であるスーザンとともにメリーランド州ハントバレーに住んでいます。スーザンとは、マイヤーが現代音楽のディレクターを務める教会で出会いました。夫妻は、現代音楽を使った礼拝を指導しています。息子であるライアンは、ゲーム開発会社ブリザード・エンターテイメントで働いています。

受賞歴

シド・マイヤーは、ゲーム業界への多大な貢献により、数々の賞を受賞しています。以下はその一部です。

1996年: GameSpot 「コンピュータゲーム界で史上最も影響力のある人物」第1位
1996年: Computer Gaming World 「史上最も影響力のあるゲーム業界人」第8位
1997年: Computer Gaming World 「コンピュータゲーム界で史上最も影響力のある人物」ゲームデザイン部門第1位
1999年: Academy of Interactive Arts & Sciences 殿堂入り
2008年: Game Developers Conference 生涯功労賞
2009年: 『デベロップ』誌 「究極の開発ヒーロー」第5位
2009年: IGN 「歴代トップゲームクリエイター」ランキング第2位
2017年: ゴールデンジョイスティックアワード 生涯功労賞

シド・マイヤーは、その独創的なゲームデザインと、ゲーム業界への貢献により、世界中のゲームファンから愛される存在です。彼の作品は、今後も多くのプレイヤーを魅了し続けるでしょう。

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