シボレー・アストロ

シボレー・アストロとは

シボレー・アストロは、ゼネラルモーターズ（GM）が製造し、シボレーブランドで販売していた自動車です。主にミニバンとして、その広い室内空間と多様な用途で人気を博しました。特にアメリカでは、商用車としての利用だけでなく、豪華な内装にカスタマイズされたコンバージョンバンとしても広く知られています。

初代モデル (1985–1995年)

1985年、クライスラーが発売したミニバン「ダッジ・キャラバン」に対抗する形で登場しました。当初は後輪駆動（FR）のみでしたが、1990年モデルから四輪駆動（AWD）が追加され、様々なニーズに対応できるようになりました。

エンジンは、2.5リットルの直列4気筒ガソリンエンジン（1990年まで）と、4.3リットルのV型6気筒ガソリンエンジンが設定されました。V6エンジン搭載車の燃費は、高速道路走行時で約8〜9km/L（AWD時速80キロ走行時）、市街地走行で4〜5km程度でした。

サスペンションは、後輪がリーフスプリングとリジッドアクスルの組み合わせで、前輪は駆動方式によって異なり、FRはダブルウィッシュボーンとコイルスプリング、AWDはトーションビームが採用されました。

ボディは当初リアオーバーハングが短い設計でしたが、1993年からリアオーバーハングを約25cm延長したエクステンドモデルが登場し、1994年からはエクステンドモデルが標準となりました。リアドアには、観音開きの他に、1992年モデルからダッチドアと呼ばれる上部跳ね上げ、下部観音開きのものが採用されました。ダッチドアはバックミラーの視界を確保するためのもので、視界を遮るドアの窓枠がなくなり、リアワイパーも装備できるようになりました。

2代目モデル (1995-2005年)

1995年にモデルチェンジを受けましたが、2005年モデル限りで生産が終了し、アストロを生産していたボルチモアの工場も閉鎖されました。

日本での輸入

日本においては、所ジョージ氏が自動車雑誌『Daytona』で取り上げたことをきっかけに、1990年代前半から並行輸入が盛んになりました。その後、三井物産オートモーティブが米スタークラフト社でカスタマイズされたコンバージョンバンを正規輸入し、1993年からはヤナセが正規輸入を開始しました。一時は、姉妹車のGMC・サファリを含めて年間1万台近くも輸入されたこともありました（その大部分は並行輸入）。

1995年のモデルチェンジ後、米国仕様車は上位・中位グレードが「シェビートラックマスク」と呼ばれるコンビネーションランプを採用しましたが、正規輸入車はしばらくの間、並行輸入車との識別のため角形2灯が採用されていました。1999年モデルから正規輸入車もコンビネーションランプに変更されました。

しかし、日本での使用には車体が大きすぎることや左ハンドルであること、スライドドアが右側にしかないといった不便さもありました。輸入元は後に日本GM、最終的にはスズキへと移管されました。

コンバージョンバン

シボレー・アストロ/GMC・サファリは、本来は商用車として使用される車種でしたが、FRP製のハイルーフや革張りのシート、ウッドパネル、シャンデリアなどを備えた豪華な内装のコンバージョンバンとして人気を集めました。アメリカには多くのコーチビルダー（改造業者）が存在し、様々なカスタマイズが施されました。

日本では、トヨタ・ハイエースや日産・キャラバンなどが同様に豪華な内装に改造される「バニング」と呼ばれる文化が存在しますが、アストロはアメリカンな雰囲気と広い室内空間から独自の人気を博しました。

また、車体後部を大幅に改造してキャンピングカーとしたモデルも存在します。2001年に特種用途自動車の構造用件が厳しくなるまでは、コンバージョンでも特定の条件を満たせばキャンピングカーとして登録できました。そのため、普通乗用車扱いの3ナンバーよりも、貨物自動車扱いの1ナンバーや特種用途自動車扱いの8ナンバーで登録された車両が多く見られました。

正規輸入されていたコンバージョンモデルとしては、三井物産が輸入していた「スタークラフト」と「ティアラ」、ヤナセが輸入していた「ガルフストリーム」などが挙げられます。

一方、並行輸入車の中には、エンブレムやステッカーだけを貼っただけの車両や、無名ブランドのコンバージョンを「アストロコンバージョン」と称して販売されたり、エアロパーツを装着したり、車高を落として「サファリローライダー」と称して販売された車両も存在します。逆にオフロードカーのようにリフトアップの改造ベースになることも多いです。

主なコンバージョン・アストロ/サファリのブランド

スタークラフト（STARCRAFT）：三井物産オートモーティブによる正規輸入。正規輸入車は前輪の上にある「ブロアム」(Brougham)のプレートで識別可能。
ティアラ（Tiara）：三井物産オートモーティブによる正規輸入。正規輸入車は「ロイヤルスター」(Royal Star)のサブネームを使用。
ガルフストリーム（Gulf Stream）：ヤナセによる正規輸入。
レインボースター(RAINBOWSTAR)
エクスプローラー(EXPLORER)
アメリカンロード(The American Road)

車名の由来

「ASTRO (アストロ)」は、英語で「星の、天体の」を意味します。

シボレー・アストロ