DSP衛星

国防支援計画（DSP）衛星：アメリカの早期警戒システム

国防支援計画（DSP）衛星は、アメリカ空軍宇宙軍団によって運用されている、弾道ミサイル早期警戒衛星です。アメリカ合衆国の弾道ミサイル早期警戒システムの中核を担い、常に3機以上の衛星が、弾道ミサイルや宇宙ロケットの発射、地上の核爆発などが発する特徴的な熱源を監視しています。

概要

DSP衛星は、高度約3.6万kmの静止軌道上に配置され、広角シュミット反射望遠鏡と赤外線センサーを搭載しています。衛星全体が10秒ごとに1回転することで、センサーが地球全体をスキャンし、高熱源体を捕捉して、弾道ミサイルのブースト段階を監視・追跡します。探知された情報は、迅速に地上ステーションへ通報されます。

湾岸戦争時には、イラク軍のスカッドミサイル発射情報をイスラエルとサウジアラビアに即時警報し、その有効性を示しました。また、自然災害である火山の噴火や森林火災なども赤外線センサーで感知しています。2009年には、北朝鮮から発射されたミサイルを探知し、太平洋への落下を確認しました。

衛星の構造と打ち上げ

DSP衛星は、全長約10m、直径約6.7m、重量約2.4トンです。通常はタイタン4Bブースターで打ち上げられていましたが、スペースシャトル・アトランティスやデルタ4ヘビーロケットで打ち上げられたこともあります。

運用体制

第14空軍第460宇宙航空団が運用を担い、バックリー空軍基地に司令部を置いています。DSP衛星運用部隊からの警報は、ピーターソン空軍基地の北アメリカ航空宇宙防衛司令部・戦略軍早期警戒センターに送られ、関係部局や世界中の作戦部隊へと発信されます。衛星の開発と調達は、ロサンゼルス空軍基地内の宇宙ミサイルシステムセンターにある宇宙配備赤外線システム航空団が担当しています。

性能向上の歴史

DSPは、1960年代の宇宙空間赤外線ミサイル警報システム（MiDAS）から発展しました。MiDASは1960年から1966年までに12機の衛星を打ち上げ、DSPへと移行しました。最初のDSP衛星は1970年に打ち上げられ、以来、アメリカの主要な弾道ミサイル早期警戒システムとして機能しています。

30年以上にわたる運用期間中に、DSP衛星は数々の改良を経て、信頼性と能力が向上しました。初期の衛星と比較して、最終型の衛星は重量、電力、センサー素子数、設計寿命が大幅に向上しています。また、センサーの信頼性向上、背景ノイズ除去性能の向上、生残性の向上なども図られました。

後継システムへの移行

DSP衛星計画は、2008年以降、後継の宇宙空間赤外線システム（SBIRS）衛星に置き換えられています。当初は25機の計画でしたが、SBIRSを優先するために最後の2機はキャンセルされました。

各ブロックの改良点

現在のブロックに至るまでに、以下の5つの向上計画が実施されました。

Block 1 Phase I (1970-1973): 4機
Block 2 Phase II (1975-1977): 3機
Block 3 Multi-Orbit Satellite Performance Improvement Modification (MOS/PIM) (1979-1984): 4機
Block 4 Phase II Upgrade (1984-1987): 2機
Block 5 DSP-I (DSP-Improved) (1989)

一般的な仕様

主要な目的: 戦略ミサイルおよび戦術ミサイルの探知
契約社: ノースロップ・グラマン（旧TRW）、エアロジェットエレクトロニクスシステムズ
重量: 2,380kg
衛星軌道: 35,900km
自転速度: 6rpm
動力部: 太陽電池 1,485W
冷却機構: 極低温ヘリウム閉鎖循環系の放熱器
高さ: 約10m（軌道上）、約8.5m（発射時）
直径: 約6.7m（軌道上）、約4.2m（発射時）
最新形衛星: 18号-23号
単価: 4億ドル

高軌道偵察衛星としての特徴

DSP衛星は、静止衛星軌道という高軌道にあるため、低軌道の偵察衛星と比較して長寿命です。全地球を監視対象とするため、常に3機以上の稼働状態の衛星が必要となります。ただし、特定の地域のみをカバーする場合は、より少ない数で済む可能性があります。

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