シャルル (マイエンヌ公)

シャルル・ド・ロレーヌ（1554年 - 1611年）は、フランスの貴族であり、軍人でした。ギーズ公フランソワの次男として生まれ、母方の祖母はフランス王ルイ12世の娘ルネ・ド・フランスという名門の家系に連なります。彼はマイエンヌ公として知られ、ユグノー戦争の末期にカトリック同盟の重要な指導者として活躍しました。


1572年のサン・バルテルミの虐殺の際にはフランス国外にいましたが、その後のラ・ロシェル包囲戦には参加しました。1573年にはマイエンヌ公爵位を授与され、その後、ポーランド王となったアンジュー公アンリ（後のフランス王アンリ3世）に随行しましたが、すぐに帰国し、兄のギーズ公アンリ1世の副官として働きました。1577年にはポワチエ地方のユグノー勢力の掃討で活躍しましたが、国王アンリ3世の寵臣であったにもかかわらず、1582年にはフランス海軍提督の地位を別の寵臣に譲ることとなりました。


1588年、兄であるギーズ公アンリ1世と弟のギーズ枢機卿が国王アンリ3世の命により暗殺されると、シャルルはカトリック同盟の最高指導者となりました。彼は自身が知事を務めるブルゴーニュ地方とシャンパーニュ地方で兵を募り、パリに進軍しました。パリ市民は国王によるギーズ公暗殺に激しく憤っており、シャルルを熱狂的に歓迎しました。彼はパリに最高評議会を設立し、事実上のパリ政府を樹立、「王国総代官」の称号を名乗ってパリ政府の首班に就任し、国王アンリ3世やプロテスタント勢力と対峙しました。


1589年、アンリ3世がドミニコ会の修道士ジャック・クレマンに暗殺されると、カトリック同盟の士気は高まりました。パリの市議会はシャルルに王冠を差し出そうとしましたが、彼はこれを辞退し、代わりにブルボン枢機卿を王位継承者として支持しました。しかし、1590年にはナバラ王アンリ（後のアンリ4世）とのイヴリーの戦いで敗北しました。その後、シャルルはスペインの支援を受け、パリの包囲を救援しましたが、ブルボン枢機卿が亡くなると、カトリック同盟内の結束は弱まり、シャルルはアンリ4世との和解交渉を始めました。


カトリック同盟の急進派はシャルルを王位に就けることを主張しましたが、シャルル自身にはカリスマ性が欠けており、パリの扇動家たちとも相容れませんでした。彼はアンリ4世との和解交渉を進める一方で、アンリ3世の姉エリザベート・ド・ヴァロワとスペイン王フェリペ2世の娘イサベル・クララ・エウヘニアをフランス王位の相続人とする計画にも関与しました。しかし、1593年にパリ三部会にイサベル王女を王位継承者とする提案を諮りましたが、三部会は外国人の統治者に反対しました。


最終的に、シャルルは1595年にアンリ4世と和解し、国王として認めました。アンリ4世はシャルルにシャロン＝スュル＝ソーヌ、サール、ソワソンの3都市の支配を3年の年限付きで認め、彼の息子アンリをイル＝ド＝フランスの知事に任命し、マイエンヌ公爵家に莫大な補償金を与えました。


1611年、シャルルは57歳で死去しました。マイエンヌ公爵位は息子のアンリが継承しましたが、アンリが子供なく亡くなると、爵位は外孫のカルロ・ゴンザーガ＝ネヴェルスに移り、その後ジュール・マザランが継承しました。


シャルルは1576年にヴィラール侯爵オノラ2世・ド・サヴォワの娘アンリエット・ド・サヴォワと結婚し、4人の子供をもうけました。彼らの子孫は、後の歴史においても重要な役割を果たすことになります。



シャルルの生涯は、16世紀フランスにおける宗教対立と政治的混乱の時代を象徴するものであり、その行動と決断は後の歴史に大きな影響を与えました。

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