ショウジョウトンボ

ショウジョウトンボの詳細な解説

ショウジョウトンボ（猩々蜻蛉、Crocothemis servilia mariannae）は、トンボ科に属するトンボの一種です。その特徴的な外見と行動から、多くの人に親しまれています。

外見の特徴

ショウジョウトンボの最大の特徴は、オスの鮮やかな色彩です。和名にある「猩猩（しょうじょう）」を連想させる、全身が真っ赤な体色をしています。一方、メスはハクビシンを思わせる茶色をしており、オスとメスで全く異なる色彩をしています。

オスの縄張り行動

オスは、池の縁に強い縄張り意識を持ちます。縄張りの境界線に沿って力強く飛び回り、パトロールをします。他のオスが侵入すると、約20cmの距離を保ちながら、低空で編隊飛行（にらみ合い）を行います。この時、やや下側を飛んでいるのが縄張りの持ち主です。時には激しく羽音を立てて格闘することもありますが、メスに対しては寛容です。交尾は、向かい合って上下に飛行した後、約2m上空で軽く絡み合う程度で、短時間で終わります。交尾後のメスは、水草に腹部をこすりつけるように産卵します。オスは、産卵中のメスの上空でホバリングし、他の虫を寄せ付けないように守ります。オスの飛翔は非常に速く、力強く、風に乗ってゆっくりと飛ぶことはありません。パトロール後は、縄張り内のお気に入りの場所で警戒を続けます。一方、メスは同じオスの縄張りに留まらず、産卵後すぐに移動します。また、メスの飛翔はオスに比べて緩やかです。

羽化と成長

羽化したばかりの個体は、黄色っぽく、羽もキラキラとしています。この時期の飛翔は弱々しく、午前中の最初の飛行で、ツバメやスズメの餌食になることが多いです。夕方には、羽化した池の周辺の草地に止まっている姿をよく見かけます。草の陰などに隠れるのではなく、草の上で水平に止まっているのが特徴です。羽化後、2〜3日程度で姿を消します。

ヤゴの生態

ヤゴは、水底ではなく水草に留まって生活します。水槽観察では、オオカナダモの中に潜み、アオミドロが発生すると好んで移動します。餌は、肉眼では見えないほど小さな動物プランクトンです。水盤のような小さな環境でも冬を越し、十分に成長・成熟します。4月には、雨上がりの数日後の晴れた日に、産卵場所から離れた湿った地面でヤゴが見つかることがあります。歩行速度も速く、陸上でも餌を捕食している可能性があります。

農薬の影響と移動能力

7月頃のヘリコプターによる農薬散布後には、池の周辺でオスの死骸が発見されます。しかし、数日以内には新しいオスが定着することから、オスの縄張り探しの飛翔は数キロメートル以上に及ぶと推測されます。オスが縄張りを確立すると、頻繁に格闘が見られます。負けて縄張りを離れるオスは、一直線に高速で飛び去るため、数キロメートルは移動できると考えられます。そのため、稲田の上空で旋回するツバメに捕食される可能性は低く、ツバメの巣の下に成熟したオスの残骸は見当たりません。

分類

ショウジョウトンボには、以下の亜種が確認されています。

Crocothemis servilia mariannae - ショウジョウトンボ
Crocothemis servilia servilia - タイリクショウジョウトンボ（鹿児島県で「分布特性上重要」に指定）

保全状況

国際自然保護連合（IUCN）は、ショウジョウトンボ（Crocothemis servilia）を軽度懸念（Least Concern）と評価しています。日本では、以下の都道府県でレッドリストに指定されています。

希少野生生物（Cランク） - 青森県（環境省の準絶滅危惧相当）
分布特性上重要 - 鹿児島県

近縁種

Scarlet dragonfly (Crocothemis erythraea)

参考文献

井上清、谷幸三『トンボのすべて』トンボ出版、1999年6月1日。ISBN 4887161123。
今森光彦　『水辺の昆虫』　山と溪谷社〈ヤマケイポケットガイド〉、2000年、ISBN 4-635-06228-7。

関連項目

赤とんぼ

外部リンク

* ショウジョウトンボ（神戸のトンボ）

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