シリル・ネヴィル

シリル・ネヴィルとは

シリル・ネヴィル（Cyril Neville）は、1948年10月10日に米国ルイジアナ州ニューオーリンズで誕生したパーカッショニストであり、卓越したシンガーでもあります。特に、ニューオーリンズR&Bを象徴するファミリーグループ、ネヴィル・ブラザーズの主要メンバーとして世界的にその名を知られています。グループ活動と並行して、彼はアップタウン・オールスターズなどの自己のバンドを率い、レゲエを含むワールドミュージックの要素を取り入れた、より幅広い音楽性を追求しています。

来歴と音楽活動

ネヴィル家6人兄弟の末弟として育ったシリルは、早くから音楽に囲まれた環境に身を置きました。彼の兄、アート・ネヴィルは1950年代初頭からプロの道を歩んでおり、シリルは幼い頃からアートのバンドの演奏を間近で見て育ちました。プロミュージシャンとしての第一歩は1967年、アートが結成したバンド、アート・ネヴィル＆ザ・サウンズにメンバーとして加わったことでした。このバンドは後にミーターズへと発展する重要なグループで、アーロン・ネヴィルも在籍していましたが、シリルとアーロンはその後バンドを離れ、サウンド・マシーンを結成しました。

1970年には、ソロ名義でのシングル「Gossip」をリリースし、ソロアーティストとしてのキャリアをスタートさせました。この作品は、ミーターズが所属していたジョーシー・レコードからのリリースで、バック演奏もミーターズが務めました。一方、サウンド・マシーンはナッシュヴィルやニューヨークへと活動の拠点を移しましたが、大きな成功には繋がりませんでした。

転機が訪れたのは1972年です。シリルはミーターズのアルバム『Cabbage Alley』にゲストとして参加しました。1974年にはバンドの北米ツアーにも同行し、翌年に発表されたアルバム『Fire on the Bayou』からは正式メンバーとして名を連ねるまでになりました。

1977年にミーターズが解散すると、シリルは兄弟であるアート、アーロン、チャールズと共にネヴィル・ブラザーズを結成しました。この頃から、彼はカリブ海の音楽、特にレゲエに対して強い関心を示すようになります。

1983年には、「絶滅危惧種」を意味するエンデンジャード・スピーシーズ・バンドを結成し活動を開始しました。このバンド名は、黒人男性のミュージシャンが直面する厳しい状況への問題意識から名付けられたものでした。数年後には、新たな音楽ユニットであるアップタウン・オールスターズを結成します。

1994年には、アップタウン・オールスターズ名義での最初のアルバム『The Fire This Time』を発表しました。

ハリケーン・カトリーナの影響と移住

2005年、故郷ニューオーリンズを襲ったハリケーン・カトリーナにより、シリルの自宅は甚大な被害を受けました。この出来事を機に、彼はテキサス州オースティンへの移住を決意しました。オースティンでは、アップタウン・オールスターズに代わる新たなバンド、トライブ13を結成し、精力的に音楽活動を続けました。

社会的・政治的発言

シリルは以前から政治や社会問題について積極的に意見を表明してきましたが、近年その言動はより一層活発になっています。特にハリケーン・カトリーナ後のニューオーリンズにおける再開発計画、特にアフリカ系アメリカ人が多く暮らすロウワー・ナインス・ワードなどの地域に関し、「黒人を締め出す人種浄化が進んでいる」と批判し、大きな波紋を呼びました。また、オースティンへ移住した理由について、「ニューオーリンズの音楽シーンは既に死んでいる」と発言したことで、地元ミュージシャンや音楽ファンからの批判も招きました。

近年の活動

2005年には、ルイジアナ州湾岸の湿地帯保護を訴えるチャリティプロジェクト、タブ・ベノワ率いるヴォイス・オヴ・ウェットランズのアルバムに参加しました。このグループには、ジョージ・ポーターJr.、アンダース・オズボーン、ドクター・ジョンといった著名なミュージシャンも名を連ねています。同年、カトリーナ被災地支援のためのベネフィット・アルバム『Our New Orleans』にも参加し、カーティス・メイフィールドの「This Is My Country」をカバーしました。

2009年には、久々となるソロアルバム『Brand New Blues』をM.C.レコードからリリース。このアルバムには、兄のアート・ネヴィルをはじめ、ヴォイス・オヴ・ウェットランズで共演したタブ・ベノワや、ジャンピン・ジョニー・サンソン、ウェイロン・シボドーなどがゲスト参加しており、彼の音楽人脈の広さを示しています。

シリル・ネヴィルは、ネヴィル・ブラザーズでの成功、ミーターズへの貢献、そしてソロ活動を通じて、ニューオーリンズ音楽の伝統を守りつつ、多様な音楽スタイルを取り入れることで、独自の音楽世界を築き上げてきたアーティストです。彼の社会的なメッセージもまた、彼の表現活動の重要な一部となっています。

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