シリーズ・江戸川乱歩短編集

シリーズ・江戸川乱歩短編集



『シリーズ・江戸川乱歩短編集』は、日本の推理小説を代表する作家、江戸川乱歩の傑作短編群を原作としたNHK BSプレミアム制作のテレビドラマシリーズです。

2016年1月に第1弾が放送されて以降、第2弾(2016年12月)、第3弾(2018年12月)、第4弾(2021年3月)と断続的に制作・放送が続けられています。また、2019年からは一部のエピソードがNHK総合テレビでも再放送されるなど、より多くの視聴者に乱歩の世界が届けられています。

本シリーズの大きな特徴は二つ挙げられます。

一つは、女優の満島ひかりが主要な役を務めている点です。特に、探偵・明智小五郎が登場する第1弾、第2弾、第4弾では、満島ひかりが型破りな解釈の明智像を演じ、大きな話題となりました。第3弾では明智は登場しませんが、各作品の主人公や重要な女性キャラクターを演じています。

もう一つは、映画、CM、ミュージックビデオなど、様々な分野で先鋭的な活躍を見せる映像クリエイターたちが演出を手掛けている点です。彼ら独自の感性によって、乱歩作品が持つ猟奇的、幻想的、あるいは耽美的な世界観が、現代的かつ鮮烈な映像表現で描かれており、一般的なドラマとは一線を画す独特の雰囲気を醸し出しています。

各シリーズの概要



第1弾『1925年明智小五郎



2016年1月に放送された最初のシリーズです。原作として選ばれたのは、江戸川乱歩の初期作品の中でも特に名高い1925年に発表された『D坂の殺人事件』、『心理試験』、『屋根裏の散歩者』の三編。これらの作品は、乱歩の「黄金時代」とも評される時期のもので、満島ひかり演じる明智小五郎の初登場が描かれました。

キャストには満島ひかりのほか、菅田将暉嶋田久作篠原信一田中要次村杉蝉之介津田寛治など、個性豊かな俳優陣が出演しました。演出は宇野丈良、佐藤佐吉、渋江修平がそれぞれ一編ずつ担当し、各クリエイターの個性が光る仕上がりとなっています。地上波では2019年に再放送されました。

第2弾『妖しい愛の物語』



2016年12月に放送されました。今回は『何者』、『黒手組』、『人間椅子』という、人間の内面に潜む「妖しい愛」や欲望を描いた三編を映像化。第1弾に続き、満島ひかり明智小五郎(またはそれに準ずる探偵役)や主人公を演じました。

出演者には満島ひかりの他、若葉竜也田中圭麿赤兒ミッツ・マングローブ仁村紗和中村靖日など多様な顔ぶれが揃いました。演出は再び佐藤佐吉と渋江修平が参加し、『黒手組』は関和亮が手掛けました。地上波では2019年から2020年にかけて再放送されています。

第3弾『満島ひかり×江戸川乱歩



2018年12月30日に一挙放送されたシリーズです。この弾では、明智小五郎は登場せず、満島ひかりが『お勢登場』、『算盤が恋を語る話』、『人でなしの恋』という三編の主人公や重要な役柄を演じるという趣向で制作されました。

共演者には宮藤官九郎岩井勇気ハライチ)、嶋田久作高良健吾などが名を連ねました。演出は佐藤佐吉、森ガキ侑大渋江修平が担当し、さらに満島ひかり自身も幕間演出を手掛けるという意欲的な取り組みが見られました。

第4弾『新!少年探偵団』



2021年3月に放送された最新シリーズ(放送時点)です。今回は『怪人二十面相』、『少年探偵団』、『妖怪博士』という、お馴染みの少年探偵団シリーズから三編が選ばれました。第1弾、第2弾と同様、満島ひかり明智小五郎役で主演を務めています。

森山未來麿赤兒団時朗仲本工事斉木しげる髙橋來嶋田久作村杉蝉之介坂井真紀岩井勇気ハライチ)、YOUなど、ベテランから若手まで幅広い俳優が出演しました。演出は佐藤佐吉、渋江修平、古屋蔵人が担当し、少年探偵団の世界観を現代的に再構築しました。地上波でも2021年7月に放送されています。

制作スタッフ



本シリーズはNHKエンタープライズテレコムスタッフが制作、NHKが著作を手掛けています。第1弾ではプロデューサーを淵邉恵美、制作統括を千葉聡史、松永真一、長嶋甲兵、脚本を演出家陣が兼任しています。

関連シリーズ



NHK BSプレミアムでは、江戸川乱歩シリーズの他にも、太宰治や横溝正史といった日本文学の短編を同様のスタイルで映像化した『太宰治短編小説集』や『シリーズ・横溝正史短編集』などが制作されており、文豪たちの世界を現代の映像クリエイターが解釈する試みとして注目されています。

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