ジェミニ2号

ジェミニ2号

ジェミニ2号は、アメリカ合衆国が進めた有人宇宙飛行計画である「ジェミニ計画」において、その中心となるジェミニ宇宙船の機能や性能を試験するために実施された無人飛行ミッションです。ジェミニ計画の最初のミッションであるジェミニ1号と同様に、宇宙飛行士は搭乗せず、無人での技術検証を目的としていました。

ジェミニ1号が軌道投入後に回収されず、大気圏再突入によって消滅したのに対し、ジェミニ2号では宇宙船の回収が計画されていました。このミッションの最も重要な目的の一つは、大気圏への高速再突入時に発生する膨大な熱から機体を保護する耐熱シールドが、設計通りの性能を発揮するかを確認することでした。このため、ジェミニ2号は軌道に乗るのではなく、高高度への弾道軌道を描き、その後意図的に大気圏への再突入を行い、海上へ着水して回収される計画でした。機体の内部には、飛行中の様々なデータを収集するための計測機器が多数搭載されていました。

打ち上げに使用されるのは、ジェミニ計画のために改良されたタイタンII GLVロケットでした。このロケットは1964年の夏にフロリダ州のケープカナベラル空軍基地に到着しましたが、ハリケーンが接近したため、安全のために分解され、格納庫に保管されました。ロケットの最終的な組み立て作業が開始されたのは1964年9月12日のことです。その後、11月にかけて広範な地上試験が実施され、11月24日からいよいよ燃料充填と打ち上げに向けた最終カウントダウンが始まりました。

当初の打ち上げ予定日は12月9日でした。この日は、将来の有人宇宙飛行に備え、ジェミニ3号に搭乗する予定だった宇宙飛行士たちが、実際に宇宙服を着用し、本番の手順に沿った搭乗訓練を行う機会も設けられました。しかし、発射時刻となりエンジンが点火されたものの、わずか1秒後に機体の異常検知システムがエンジン圧力に問題があることを検知し、自動的にロケットエンジンの緊急停止が行われました。これにより、打ち上げは延期されることとなりました。

延期を経て、ジェミニ2号の再打ち上げが実施されたのは1965年1月19日、協定世界時（UTC）で14時03分59秒のことでした。ケープカナベラル空軍基地のLC-19発射台から、ロケットは無事に離昇に成功しました。しかし、皮肉にも、発射直後に地上の管制センターが停電に見舞われるという予期せぬ事態が発生しました。このため、宇宙船の追跡や初期の管制は、大西洋上の追跡船が中心となって行われることになりました。

ジェミニ2号は、計画通りおよそ105度の方向へ打ち上げられ、最高高度171.2キロメートルに達する弾道飛行を行いました。ロケットからの分離後、宇宙船は自動操縦システムによって制御され、打ち上げから約6分54秒後に逆噴射エンジンが作動し、大気圏への再突入プロセスを開始しました。約18分16秒の飛行時間の後、ジェミニ2号カプセルは発射地点から3,422.4キロメートル離れた大西洋上に見事着水しました。着水地点は当初の予定地点からわずか26キロメートルの誤差でした。カプセルはその後、アメリカ海軍の航空母艦「レイク・シャンプレイン」によって無事回収されました。

この飛行ミッションの結果、逆噴射装置や最も重要な試験対象であった耐熱シールドが期待通りの性能を発揮したことが確認されました。一方で、燃料電池や冷却装置など、さらなる改良が必要な技術課題も明らかになりました。このミッションには、アメリカ国防総省も大規模な支援を行っており、6,562名の人員、67機の航空機、16隻の艦艇が投入され、安全な飛行と回収を支えました。

ジェミニ2号に使用された宇宙船のカプセルは、回収後に再整備が行われました。そして、1966年11月3日には、アメリカ空軍が進めていた「有人軌道実験室」（MOL）開発プログラムの一環として、再び無人機として打ち上げられ、軌道飛行後に再回収されるという、極めて稀な二度目の宇宙飛行を経験しました。この歴史的なカプセルは現在、フロリダ州のケープカナベラル空軍基地に位置する空軍宇宙・ミサイル博物館で展示されており、宇宙開発の初期における重要な技術試験の証として、訪れる人々にその物語を伝えています。

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