ジェラルド・ゴルドー

ジェラルド・ゴルドー：波乱万丈の格闘人生

ジェラルド・ゴルドー（Gerard Gordeau）は、1959年3月30日生まれのオランダ人。空手、キックボクシング、総合格闘技、プロレスと、幅広いジャンルで活躍した異色の格闘家です。ドージョー・カマクラの主宰としても知られています。

幼少期の苦労と格闘技との出会い

6人兄弟の次男として生まれたゴルドーは、11歳の時に父親を亡くし、12歳から肉体労働で家計を支える苦労人でした。妹たちを養うために、恐喝に手を染めたこともあったといいます。16歳の頃、友人の勧めで空手道場を見学したことがきっかけで格闘技の世界へ足を踏み入れます。恵まれた体格を生かし、最初は趣味として空手を始めましたが、日本人少年との敗北を機に真剣に取り組み、1年後には見事リベンジを果たしました。

多様な格闘技経験と日本での活躍

極真会館主催の世界大会で来日後、K-1やリングスなど日本の格闘技イベントで活躍しました。空手以外にも、アマチュアレスリング、ボクシング、柔道など様々な格闘技を学び、サバット（フランス式キックボクシング）の試合にも出場。プロレスラーとしてもリングに上がっています。一時USA大山空手の傘下に入っていましたが、オランダで自身の道場「ドージョー・カマクラ」を開き、後進の指導にあたっています。

UWFでの前田日明戦と疑惑

1988年8月13日、第2次UWFで前田日明と異種格闘技戦で対戦。試合開始直後から打撃で前田を圧倒しましたが、右ハイキックをキャッチされ、カーフスライサー（公式発表は裏アキレス腱固め）で敗北しました。しかし、この試合は事前に結末が決まっていたという主張も存在します。ゴルドー自身も「マエダには言いたいことがある。ビジネスでやったフィックスト・マッチだった、と正直に言うべきだ」と語っています。

リングスでの反則負け

リングスでは、1992年1月25日に佐竹雅昭と対戦。試合2日前の公開スパーリングで右脚を肉離れしてしまいます。佐竹は試合開始から右脚への攻撃を集中。苦しくなったゴルドーはクリンチを増やし、フロントチョークを狙いますが、ブレイクがかかります。セコンドの抗議後、ゴルドーは佐竹への顔面パンチやサミングなどの反則行為を連発し、反則負けとなりました。

UFCでの衝撃的な戦い

1993年11月12日、UFC 1に参戦。1回戦で元幕下力士のテイラ・トゥリに、倒れた相手へのサッカーボールキックという衝撃的なKO勝利を収めます。しかし、決勝ではホイス・グレイシーに敗れ、準優勝に終わりました。この試合では、ホイスの腕に噛みつくという蛮行も行っています。

中井祐樹戦と和解

1995年4月20日、「VALE TUDO JAPAN OPEN 1995」では、中井祐樹に対し、レフェリーの制止を無視してサミングを繰り返しました。これにより中井は右目を失明。ゴルドーは当初「同じ場面が来たら私はまた同じことをやる」と発言していましたが、その後中井とは和解し、中井の「強い魂」を称えています。

プロレスラーとしての活動

プロレスラーとしては、UWF、新日本プロレス、UFO、ZERO-ONEを主戦場に活躍。アントニオ猪木の引退カウントダウンの相手を務めたことでも知られています。

人物像とエピソード

オランダで用心棒をしていた経験からか、喧嘩ファイトを得意とし、「時には人を殺しても平気なくらいに凶暴になれる」と豪語したこともあります。しかし、総合格闘技黎明期において、ローキックで足を殺し、パンチでKOを狙うなど、後のストライカーの原型ともいえる完成度の高い試合運びを見せていました。

日本文化への造詣も深く、自宅に日本の鎧を飾ったり、背中に和彫の刺青を入れたりしています。ドージョー・カマクラの入口には振袖姿の日本女性の等身大ポスターを貼っていたこともあるそうです。

晩年

2010年にはZERO1の靖国神社大会に参戦。弟子である崔領二とのタッグで勝利を飾りました。
粗暴な振る舞いから嫌う人もいる一方、極真空手の増田章の道場を表敬訪問するなど、意外な一面も持ち合わせています。

スペル・デルフィンの旧リングネーム「モンキーマジック・ワキタ」の名付け親でもあります。デルフィンの動きを見たゴルドーが「おまえ（デルフィン）は孫悟空（モンキーマジック）みたいな動きをするな」と賞賛したことがきっかけでした。

ジェラルド・ゴルドーは、その破天荒な生き方と強烈な個性で、格闘技史に名を刻んだ人物と言えるでしょう。

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