ジェレミー・ステーシー

ジェレミー・ステーシー（Jeremy Stacey）は、1963年9月27日に生まれたイギリス出身の多才なミュージシャンです。主にドラマーとして知られていますが、キーボード奏者としても活動しており、その幅広い音楽性で多くのアーティストから信頼を得ています。

彼の音楽キャリアは1990年代初頭に本格化しました。この時期には、双子の兄弟でギタリストのポール・ステーシーや、元ワールド・パーティーのガイ・チェンバースらと共にザ・レモン・トゥリーズ（The Lemon Trees）というバンドで活動しました。また、デンジル（Denzil）というバンドにも参加しており、キャリアの初期からその演奏力を磨いてきました。

ジェレミー・ステーシーは、その卓越した技術と幅広い適応力から、数多くの著名アーティストのレコーディングやライブに参加してきました。彼の共演者のリストは非常に長く、ロック、ポップス、ジャズ、プログレッシヴ・ロックなど、多様なジャンルを網羅しています。例えば、シェリル・クロウ、ユーリズミックス、ジョー・コッカーといった世界的なポップ・スターから、ブラック・クロウズのクリス・ロビンソン、アダムF、トーマス・アンダース、エコー&ザ・バニーメン、スザンナ・ホフス、マイク・スコット、ロビー・ウィリアムズ、アズテック・カメラ、シャルロット・ゲンズブール、ネリーナ・パロットといった多彩な顔ぶれが含まれます。さらに、アンドレア・ボチェッリやパトリシア・カースといった非英語圏のアーティストとも共演しています。

特定のアルバムへの参加も注目に値します。1999年のクレア・マーティンのアルバム『Take My Heart』ではドラムを担当し、クリス・スクワイアのアルバム『Chris Squire's Swiss Choir』や、兄弟ポール・ステーシーと共にザ・シンの2005年のアルバム『Syndestructible』にも名を連ねています。シーアのアルバム『Colour the Small One』や、ローレンス・コトル、ジェイソン・リベイロ、Zero 7、マルコム・マクラーレン、ボリス・グレベンシコフといったアーティストとの仕事も彼のキャリアの幅広さを示しています。

近年の活動としては、ライアン・アダムスとの共同作業が挙げられます。2011年にはアルバム『アッシズ&ファイア』を録音し、2014年にも再びライアン・アダムスの作品に貢献しています。また、ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズのメンバーとしても活動し、人気バンドのサウンドを支えました。さらに、プログレッシヴ・ロック界のレジェンドであるクリス・スクワイアとスティーヴ・ハケットによるプロジェクト、スクアケットのアルバムでも演奏しており、ジャンルを超えた柔軟性を見せています。

ジェレミー・ステーシーのキャリアにおいて、特に大きな転機となったのは、2016年からのキング・クリムゾンへの参加です。2016年3月7日、彼は同年予定されていたヨーロッパ・ツアーにおいて、一時的に離脱することになったドラマーのビル・リーフリンに代わる形で、バンドの中央のドラマーとして参加することが発表されました。その後、リーフリンがバンドに復帰した後も、ジェレミーはその貢献が評価され、正式メンバーとしての地位を保持しました。現在のキング・クリムゾンにおけるトリプルドラム体制の一角として、非常に複雑かつダイナミックなバンドのサウンドを構築する上で重要な役割を担っています。

キング・クリムゾンでの活動と並行して、スティーヴン・ウィルソンのアルバム『トゥ・ザ・ボーン』にも参加するなど、現代プログレッシヴ・ロックシーンにおいてもその存在感を示しています。

多岐にわたるプロジェクトとアーティストとの共演歴、そしてキング・クリムゾンのような伝説的なバンドでの活動を通じて、ジェレミー・ステーシーは現代英国音楽界において欠かせない、尊敬されるミュージシャンの一人としての地位を確立しています。

もう一度検索