ジェームズ・ビドル

ジェームズ・ビドル:アメリカ海軍士官、日本開国への先駆者



ジェームズ・ビドル(1783年2月18日 - 1848年10月1日)は、アメリカ海軍の士官であり、東インド艦隊司令長官を務めた人物です。彼は、アメリカとして初めて日本に開国を求めたことで知られています。名門出身で、その経歴は多岐にわたります。

若き日の経歴



ペンシルベニア州フィラデルフィアで生まれたビドルは、ペンシルベニア大学に進学しました。卒業後の1800年、アメリカ海軍士官候補生として入隊し、軍人としてのキャリアをスタートさせます。1801年には第一次バーバリ戦争に従軍し、その際、乗艦していたフリゲートフィラデルフィアトリポリ沖で座礁し、19ヶ月間の捕虜生活を送るという苦難も経験しました。

米英戦争(1812年〜1815年)では、ビドルはスループ・ワスプの副艦長として従軍。イギリス艦フローリックを捕獲するも、後に奪回され、自身も捕虜となりました。釈放後、スループ・ホーネットを指揮し、英国海軍のスループ・ペンギンとの交戦で勝利を収めました。1817年には、イギリスとのオレゴン係争のためコロンビア川に派遣され、1818年に任務を完了しました。1820年代には、カリブ海、南大西洋、地中海でアメリカ船保護の任務に当たりました。

1830年、ビドルはアメリカ領事デビッド・オフリーと共にオスマン帝国政府と交渉を行い、条約締結に成功しました。この条約は後に、オスマン帝国におけるアメリカ市民の治外法権特権に利用されました。

望厦条約の批准書交換



1845年12月、ビドルはアメリカとの間で結ばれた最初の条約である望厦条約の批准書交換を広州郊外で行いました。これにより、アメリカとの関係はさらに深まりました。

日本への開国要求



1846年、ビドルは国務長官ジョン・カルフーンから、に滞在中のケイレブ・クッシング公使に対して、日本との外交折衝を開始するよう指示する書簡を受け取りました。しかし、クッシングは既に帰国しており、後任のアレクサンダー・エバレットも健康状態が悪く、日本への航海に耐えられない状況でした。そのため、ビドルは自ら日本との交渉を行うことを決意しました。

1846年7月7日、ビドルは戦列艦コロンバスとスループ・ビンセンスを率いてマカオを出港し、7月19日弘化3年閏5月26日)に浦賀に入港しました。しかし、日本の船が直ちに両艦を取り囲み、上陸は許されませんでした。ビドルは日本に対し、望厦条約と同様の条約締結を希望する旨を伝えました。

数日後、日本の小舟がコロンバスに近づき、幕府からの正式な回答を伝えるため、日本船への乗り移りを求めました。ビドルは躊躇しましたが、同意。しかし、日本船に乗り込もうとした際、通訳の手違いから、護衛の武士がビドルを殴り、刀を抜くという事態が発生。ビドルはコロンバスに戻り、日本側は謝罪しました。最終的に幕府からの回答は、オランダ以外の国との通商は行わず、外交関係は全て長崎で行うというものでした。ビドルは「辛抱強く、敵愾心や米国への不信感を煽ること無く」交渉することが求められていたため、それ以上の交渉を断念し、7月29日(6月7日)、両艦は浦賀を後にしました。この際、帆船であったため風がなく、曳航されて浦賀を出るという事態もありました。

ビドルの来訪は、その年のオランダ風説書によって日本側に事前に知られていました。

その後



ビドルはコロンバスを率いて太平洋を横断し、12月にはチリのバルパライソに到着しました。米墨戦争の勃発に伴い、1847年3月2日にはカリフォルニアのモントレー沖に移動。そこで太平洋艦隊と合流し、先任であったビドルは太平洋艦隊の司令官となりました。

1848年10月1日、ビドルはフィラデルフィアで亡くなり、同地のキリスト教会墓地に埋葬されました。

ビドルの影響



1853年、マシュー・ペリーは日本の開国に成功しますが、ペリーはビドルの失敗を研究し、砲艦外交によって日本を開国させたとされています。ビドルの試みは失敗に終わりましたが、その後の日本の開国への重要なステップとなったと言えるでしょう。

関連項目



明治維新以前に日本に入国した欧米人の一覧

外部リンク



ジェームズ・ビドル - Find a Grave英語
『ビドル』 - コトバンク
『ビッドル』 - コトバンク

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