ジャガー・XJR-12

ジャガーXJR-12：栄光と苦闘の軌跡

ジャガーXJR-12は、1990年から1993年にかけて、トム・ウォーキンショー・レーシング（TWR）によって製作された、プロトタイプレーシングカーです。その名を世界に知らしめたのは、デイトナ24時間レース、セブリング12時間レース、そしてル・マン24時間レースといった、世界最高峰の耐久レースにおける輝かしい戦績です。本稿では、XJR-12の開発から、各レースでの活躍、そしてその歴史を詳細にわたって解説します。

開発の背景

XJR-12は、1988年のデイトナ24時間レースとル・マン24時間レースを制覇したXJR-9をベースに開発されました。最大の変更点は、1990年からWSPC（世界スポーツプロトタイプ選手権）とIMSA（国際モータースポーツ協会）でダンロップからグッドイヤーへのタイヤ変更に対応するため、サスペンションを改良した点です。エンジンは、XJR-9と同様、信頼性の高い大排気量自然吸気V型12気筒エンジンを搭載しました。ジャガーは、スプリントレースにはV型6気筒ターボエンジン搭載のXJR-10やXJR-11を使用していましたが、ターボエンジンの信頼性不足から、耐久レースでは自然吸気エンジンを選択したのです。

1990年シーズン：華々しいデビューと勝利

XJR-12は、1990年シーズン、デイトナ24時間、セブリング12時間、ル・マン24時間の3大耐久レースに参戦しました。デイトナとセブリングでは6.0リットル、ル・マンでは7.0リットル仕様のエンジンを搭載しました。

デビューレースとなったデイトナ24時間レースでは、2台のXJR-12が1-2フィニッシュという圧巻のデビューを飾りました。ライバルのニッサンやポルシェ勢が早期に脱落する中、ジャガーはレース開始から優位に立ち、61号車が優勝、60号車が2位に入賞しました。続くセブリング12時間ではニッサン勢に敗れましたが、61号車が3位に入賞しました。

そして、ル・マン24時間レース。4台のXJR-12を投入したジャガーは、ニッサンやポルシェ勢との激しい優勝争いを繰り広げました。レース終盤、ライバル勢がトラブルに見舞われる中、3号車がトップを快走し、2号車が2位でフィニッシュ。見事1-2フィニッシュを達成し、ジャガーの強さを世界に示しました。

シーズン終了後には、イギリスでXJR-12とSEPECAT ジャギュアによる0-400mの加速対決が行われ、XJR-12が勝利しました。

1991年シーズン以降：挑戦と苦闘

1991年シーズンも、デイトナ24時間、セブリング12時間、ル・マン24時間に出場。IMSAレギュレーション変更に伴い、エンジン排気量はデイトナとセブリングで6.5リットル、ル・マンで7.4リットルに拡大されました。しかし、このシーズンは、マシントラブルやライバル勢の強さの前に苦戦を強いられました。ル・マンでは、旧規定車に課せられた重量や燃費規制に苦しみながらも、3位、2位、4位と健闘しました。

1992年にはシルクカット社のスポンサー撤退により、SWCからの撤退を余儀なくされました。しかし、RMモータースポーツによる参戦計画もありましたが、スポンサー獲得に失敗し実現しませんでした。IMSAには引き続き参戦し、デイトナでは2位、セブリングでは4位という結果を残しました。

1993年は、IMSAへの参戦をデイトナ24時間レースのみに絞り込み、ル・マンへの参戦も計画されましたが、エアリストリクター規制の厳しさから断念しました。デイトナでは、XJR-12はル・マンクラス（旧グループCクラス）で参戦しましたが、エンジントラブルにより優勝を逃しました。

各シャシーの軌跡

複数のXJR-12シャシーが、デイトナ、セブリング、ル・マンと様々なレースを戦い抜きました。それぞれのシャシーは、独自の戦歴とドラマを刻み込みました。これらのシャシーの個別の戦績は、詳細な資料を参照することで、より深く理解することができます。

まとめ

ジャガーXJR-12は、1990年代初頭の耐久レースシーンを彩った名車です。その輝かしい勝利と、幾多の困難に立ち向かった挑戦の物語は、モータースポーツ史に永遠に刻まれるでしょう。その歴史を振り返ることで、XJR-12の持つ魅力と、その時代背景をより深く知ることができるでしょう。

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