ジャボチカバ

ジャボチカバとは

ジャボチカバ（学名: Plinia cauliflora）は、フトモモ科に属する常緑高木で、その独特な生態で知られています。幹に直接、濃い紫色の実をつけるのが最大の特徴で、その見た目から「ブラジリアングレープツリー」とも呼ばれます。原産地は南アメリカ大陸で、ブラジルを中心にアルゼンチン、パラグアイ、ボリビアなどで自生しています。

名称の由来

ジャボチカバという名前は、ブラジルの先住民トゥピ族の言葉で「亀のいる地」を意味します。この名前からも、古くからこの植物が地域の人々に親しまれてきたことが伺えます。また、地域によっては「ジャブチカバ」、「ジャボチカ」、「グアペルー」、「ヒバプルー」、「ウバプルー」、「サバラ」など、さまざまな別名で呼ばれています。

特徴

幼木の葉はサーモン色をしていますが、成長するにつれて緑色に変化します。成長は非常に遅く、湿度が高く弱酸性の土壌を好みますが、水の管理を適切に行えばアルカリ性の砂浜近くでも育つことができます。樹高は品種によって異なり、野生種では15メートルにも達するものがあります。

花は幹に直接咲き、その後に実がなります。果実は直径3～4センチで、1～4個の種子を含んでいます。果皮は濃い紫色でやや厚みがあり、果肉は白色またはピンク色をしています。糖度は16～20度と高く、甘酸っぱい味が特徴で、ブドウ、ライチ、ブルーベリーを合わせたような風味があります。生食されることが多く、ブラジルの市場では一般的に売られています。

果実は日持ちしないため、ゼリー、ジャム、ジュース、ワイン、リキュールなどへの加工も盛んに行われています。熱帯地域では四季なり性があり、一年を通して収穫が可能です。

利用状況

ブラジルでは経済栽培が盛んに行われており、消費量も多いです。カリブ海諸国やアメリカ合衆国のテキサス州、カリフォルニア州などでも栽培されています。カリフォルニアには100年以上前に持ち込まれ、サンフランシスコ周辺のような比較的涼しい地域でも露地栽培の記録があります。日本では沖縄県や鹿児島県などで少量栽培されています。

ジャボチカバと同じキブドウ属の近縁種には、カムカム、ホワイトジャボチカバ、ブルーグレープなどがありますが、カムカム以外は日本ではあまり知られていません。

伝統的に、乾燥させた果皮を煎じて、喀血、喘息、下痢、扁桃腺肥大の治療薬として利用されてきました。近年では、果実から抗酸化成分、抗炎症成分、抗癌性成分が発見されています。

ブラジルのミナスジェライス州コンタジェン市の市章や市旗にもデザインされており、地域を象徴する植物としても親しまれています。

栽培

鉢植えで育てやすいことから、熱帯地域では盆栽としても人気があります。特に台湾やカリブ海諸国で人気が高いです。

日本では、小葉系、大葉系、中葉系（大実のなる系統はアッスーと呼ばれています）に分類されて流通しています。種子は多胚であるため、母樹と同じ遺伝特性を持ちますが、実生栽培では成長が遅いため、沖縄県などでは取り木や挿し木で増やされています。静岡県ではハウス栽培が行われ、鮮度が落ちやすいため、農園カフェで提供されています。

参考文献

農山漁村文化協会 「熱帯果樹の栽培―完熟果をつくる・楽しむ28種」 米本 仁巳

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